今回は金網 Wire Mesh の圧力損失についてご紹介します。まあ、ネットを探すと結構出てくるんですけどね。で、この金網ですが針金を編み込んで平織とか綾織にしたもので、ケミカルプラントであればストレーナーとかによく使われますね。まあ、ポンプ 吸入側のストレーナーとかであればエイヤっと圧力損失を決めたりしますが、竪型デミスターに設置した Wire Mesh の圧力損失はどれくらいになるのかなどを計算する場合なども有りますね。
例えば以下のようなデミスターを考えます。ミスト混じりのガスがベッセルの側壁ノズルから流入します。ガスはググッと方向を変えますが、ミストは慣性によってバッフルにぶち当たります。ぶち当たったミストは合一し粗大化してバッフル上を流下して滴下します。また、バッフル部を通過したガスにはいまだ小さめのミストが含まれますが、ベッセル上部の金網 Wire Mesh 通過時に針金に衝突して捕集されます。そんなミストが近くの針金には沢山あるので、表面張力でスーッと合体・粗大化します。このようにミストが粗大化する事によって重力によって金網から離脱・落下します。落下した液滴は上昇してくるガスと対向する訳ですが、液滴の落下速度がガス上昇速度よりも大きければ、そのまま落下し続けてベッセル下部の液溜まりに到達します。そんなこんなで、ミストが除去されたガスがベッセル上部のノズルから流出する事となります。
金網 Wire Mesh
金網に関してはネットにもいろいろと情報がありますね。メーカーさんのホームページなどは丁寧に説明されているので非常に参考になります。で、その金網ですが下図のような感じです。1インチ当たりの針金の数が Mesh 数で、その他に 針金の外径 d、隣接する針金中心線間の距離 であるピッチ P が仕様となります。普通は縦横同じですが、特別な場合は縦ピッチと横ピッチも違う場合も有るとか。
金網 圧力損失 計算式 Press. Drop equations
いろんな計算式があるようですが、ここでは日本機械学会編の 「管路・ダクトの圧力損失」を参考にします。
まずは、金網の各仕様についてですが、メッシュ数とWire 線径で規定するようです。メッシュ #30 線径 Φ0.5mm みたいな感じでしょうか。で、これらを決めることで他の仕様は自動的に決まります。メッシュは 1インチ当たりのWire数なので、式①からピッチが決まります。で、このピッチは隣接するWire中心線間距離ですが、目開き Aperture と Wire 外径との和となります。目開きは Wire と Wire で囲まれた、流が通過する正方形の辺長となります。で、重要な開口率(流体が流れる面積の比率) は式③で計算されます。
また、圧力損失は式④で計算されますが、抵抗係数 K の値がどれくらいなのか? が必要となります。式⑤は 抵抗係数 K と開口率β との関係を表わしており、参考文献によれば 定数C の値は 0.85 とされています。因みに、金網 Wire Mesh を通過する流れにおける レイノルズ数は式⑥で定義され、代表長 としては針金外径 d を使用します。
元ネタである参考文献には、関連するデータが記載されているのでご紹介しておきます。
上段グラフはレイノルズ数と抵抗係数との関係を 実験に用いた金網ごとに示しています。同じ金網仕様であれば、レイノルズ数の増加に伴い抵抗係数は低下し、その後 ほぼ一定となります。下段グラフは開口率βと抵抗係数の関係であり、両者には強い相関関係があると判断されます。これを式化したのが上記式⑤であり、その際の定数C の値が 0.85 となります。
圧力損失 計算結果 examples
今回 用いた金網 Wire Mesh 仕様は以下のとおりです。メッシュ #10 だとだいぶ粗いですね。目開きが 2.04[mm] なので小石くらいは除去出来ますが、細かい砂粒は通過します。一方、#60 ともなると 目開き 0.273[mm] なので そこそこ細かい粒も捕捉できますね。因みに 住宅などの網戸は メッシュ #18とかだそうです。線径 0.15[mm] ですと 目開きは1.26 [mm] なので この大きさよりも大きな虫は室内に入ってこれない事になりますね、一応は。
で、計算結果です。今回は常温の空気を流した場合と、同じく常温の水を流した場合を考えます。
✔ 空気 Air
まずは、空気を流した場合ですが、メッシュ #60 線径 0.15[mm] に固定して平均流速を 変えています。当然ですが、流速が上がると圧力損失も増加します。前述のデミスターに設置されている金網がこの仕様であれば、ガス流速 1[m/sec] において 0.17[mmH2O] の圧力損失となります。もちろん、金網も1枚だけ設置するのでは無く、複数枚設置するのが普通です。と言っても、この程度の圧力損失であればまあ問題は無いかと。ガス流速が遅いのでこの程度の圧力損失なのですがそうするのには理由が有って、落下する液滴がガスに押し戻される事の無いガス流速とします。そうなるようにデミスター内径を決定します。
※ ワイヤーデミスターですが、数ミクロンの細かいミストまで捕集するのであれば、細い線径のワイヤーを層状に積み重ねて 150[mm] 程度の厚さとして使うのが一般的なようです。スチールタワシみたいな感じでしょうか。上記のような普通の金網 #60 線径 0.15[mm] であれば目開き 273[μm] なので、まあデカいミストが除去出来れば良いよと言う場合になるかと思います。
✔ 水 Water
で、水の場合ですが さすがにガスよりは圧力損失は大きくなります。平均流速を 2 [m/sec] 一定として、金網の仕様を変えています。目開きの大きさで圧力損失値を整理すると両対数グラフでほぼ直線となりました。メッシュ #60 線径 0.15[mm] ですと 圧力損失 5.7[kPa] なので過大では無いですけど。
金網 Wire Mesh は補機類でよく使うものであり、ちょいと圧力損失を計算する場合も結構有ったように記憶しています。また、メインの機器として 溶融ポリマー液中に含まれる異物についても基本的に金網を使って除去します。が、非常に液粘度が高く金網だけでは強度がもたないので、多孔板のようなものでサンドイッチして使用していました。ポリマーメルトスクリーンなどと呼ばれる機器ですが、これはこれでまた別の取り扱いが必要でした。と言うのも、溶融ポリマー流体は非ニュートン流体なので剪断速度により粘度自体が変化します。なので、予め 剪断速度 vs 粘度の関係を把握しておかないと正しい結果が得られません。また、非常に粘度が高いので 異物がギューっと押し付けられると、金網の目開きを押し広げて通過してしまう、と言った事も有ったように記憶しています。まあ、こればっかりはしょうが無いので、製品中の異物個数が増えてきたら スクリーン(金網)を交換して対応していたようです。
と言う事で、今回はこの辺で。
補足 supplement
いろいろとネット上にも金網の圧力損失についての情報が有りますが、メーカーさん(関西金網) が開示している圧損計算式を使って、今回の結果と比較してみました。
結果は以下のとおりです。メーカーさんの計算結果の方が大きくなります。特に流量(流速) の小さいところではズレが大きくなります。一方、流量の大きなところでは同じような値です。まあ、圧損の小さいところで結構の差が有っても実際には大きな問題にはならないかと。
参考文献 References
- 「管路・ダクトの流体抵抗」 日本機械学会編 1979年刊
web site
- 関西金網株式会社 ホームページ
https://www.kwn.co.jp/engineering/filter/plan
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