金網の圧力損失とくれば次は多孔板の圧力損失でしょうか、やはり。多孔板は蒸留塔のトレイ(Sieve Tray) として使用されたり、整流板としても使われたりします。まあ、多孔板の圧損計算自体もネットには沢山紹介されていますが。
下図は蒸留塔の模式図ですが、水平の板の部分に多孔板を使います。蒸留塔頂から流れてきた液はこの多孔板の上を水平に流れます。もちろん、それだけであれば液は孔から流れ落ちてしまいます。ですが、塔底から上がってきた蒸気が孔を通過しますので、液がこぼれ落ちる事は有りません。多孔板上を流れる液体層中を蒸気泡が通過する事によって気液が接触し、気液平衡関係に基づいて軽い成分は蒸気側に移動し、重い成分は液側に移動します。
多孔板 仕様 Perforated Metal specification
多孔板ですが、Perforated Metal Sheet とか Punching Metal とか言われます。主要な仕様は、孔配置パターン、孔形状、孔径 d 及び ピッチ p となります。一般的なのは 丸孔を 60° 千鳥格子状に配置したものでしょうか。まあ、あとは材質と板厚もありますね。
余談ですが、多管式熱交換器の管配置にも 千鳥配置(三角配置) と四角配置が有ります。シェル側の流体が汚れやすく、管束 (Tube Bundle) を抜き出して機械的洗浄を実施する必要があるのであれば、四角配置としますね。三角配置ですとブラシとかの洗浄道具が中まで突っ込めないので。
孔径を固定して ピッチを変えると 開口面積比率 (開口率) が変化します。孔径 10[mm] ですと以下のようになります。ピッチが小さくなると孔同士が近づく事になるので、単位面積で見ると孔の占める面積が増加し、結果 開口率が増加します。もちろんですが、ピッチが孔径と同じになると、孔同士が接する事になるので有りえませんね。
多孔板 圧力損失 計算式 Pressure Drop calculation equations
計算式は以下のとおりです。今回はいくつかの計算式を用いて同じ条件で計算し、結果を比較しています。と、その前に 多孔板 孔径とピッチから開口率を計算する必要が有りますが、下記 式①を用います。
因みに文献の著者に平田光穂 先生のお名前が有りますが、蒸留分野ではものすごく有名ですね。
多孔板 圧力損失 計算例 examples
では、さっそく計算結果を見ていきましょう。今回も常温の空気と水を流した場合の圧力損失を計算していますが、流速は一定で かつ 孔径も 10[mm] に固定しています。そして、孔ピッチ 即ち 開口率を変化させています。
空気流の場合、流速もそんなに速くはないのでこの程度の圧力損失となります。また、開口率が増加すると圧力損失は単調に減少します。3つの計算式で計算していますが、だいたい同じような値となっているのが分かります。まあ、大きく異なってしまうとそれはそれで困りますけど・・・。当初は多孔板塔の式での結果が小さかったので、少し悩みました。で、良く読むと 流速として 管路の平均流速では無く、孔を通過する際の流速を使います。なので、管路平均流速を開口率で割り算しないとダメなんですね。で、孔通過流速を使用すると同程度の値となりました。化学工学でも分野が違うと、ビミョーに違う部分が有ったりしますね。
空気よりは密度が大きいので圧力損失は大きくなりますね。こちらの結果も計算式による差異はあまり大きくは無いので、どの式を使っても良いのかなと。
そして、下段のグラフは開口率の影響ですが、開口率が大きいと 抵抗係数 K は小さく、開口率が小さいと K は大きくなります。グラフ中に 定数C の値を追記していますが、レイノルズ数 7000 であれば C=2.0、レイノルズ数 500~1500 であれば C=1.42 であると、文献には記載されています。まあ、実際の計算では C=2.0 にしておけば良いと思います。
多孔板の圧力損失ですが孔形状が三角孔とか四角孔はどうなるのか?とかなど今一つ不明です。孔形状が異なる場合には その孔面積と同じ面積を持つ円形孔の直径を使ってとか、まあ対処は出来るかと。極端に細長い孔などであれば、うーん CFD で解析すれば良いですかね、実験するのは面倒なので。
と言う事で今回はこの辺で。
参考文献 References
「管路・ダクトの流体抵抗」 日本機械学会編 1979年刊
「多孔板塔の圧力損失」 正野、鈴木、平田
化学工学 第31巻 第9号 pp.886-891 1967
Idelchik's Handbook for Hydraulic Resistance (ネット検索で出てきます)
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