化工計算ツール No.21 サイクロンの設計

今回は集塵装置として頻繁に用いられる、サイクロンの設計についてご紹介します。

集塵装置といってもいろいろ有りますが、集塵関連の書籍には以下のように記載されています。横軸はダスト粒子径で、縦軸は部分集塵率です。粗い粒子と微細な粒子では装置によって集塵率に差が有り、除去しようとするダスト粒子に適した集塵装置を選定する必要が有ります。10ミクロン以上のデカい粒子は重力沈降や慣性力によって十分に分離出来ますね。また、サブミクロンの微細な粒子ですとバグフィルターや電気集塵機などを適用します。ベンチュリスクラバーは湿式集塵ですね。で、サイクロンですが下図にあるように数ミクロン以上の粒子を分離する用途に使われます。

このサイクロンですが、家庭用の掃除機などでも良く知られているようにダストを含んだエアを円筒型の装置内に導入し激しく回転させます。この時の大きな流速により強い遠心力が発生し、その遠心力によってダストが円筒の外側へと移動し壁面に接触・落下する事で分離されます。





粉が専門では無かったのでそんなに経験は有りませんが、既設設備の改造や新規設備の技術検討などで計算してみた事が有りますね。専門書にある計算式を使って分離粒子径や圧力損失などを求めた程度なんですが。でもまあこの形と言うか設備はケミカルプラントでも結構見かけますね。それくらい一般的だと思います。

サイクロン 標準寸法

サイクロンですが各部の寸法は円筒直径 D を基準として以下の図のように概略決められています。まあ、絶対この寸法比にしなければならない訳では無いですが、下記の標準寸法を適用することで集塵性能を維持する事が可能であるとされています。確かに、極端に細長いとか寸詰まりのようなバランスの悪いサイクロンだと性能も推して知るべし、というところでしょうか。




参考文献ではいくつかの標準寸法指標が記載されていました。で、外筒部 内径 500[mm] として、それぞれの設計指標を使ってサイジングをしてみると以下のようになります。Yosihda (b) では円筒部とコニカル部の合計がものすごく長くなるので除外してあります。




サイクロン 分離粒子径・圧力損失 計算式

参考文献に記載されている 100% 分離粒子径、圧力損失 計算式は以下のとおりです。入口流速 ui で流入した気流がサイクロン内で N回転する間に遠心力によって粒子が側壁に到達し捕集されるとするモデルです(式①)。気流の回転数については、Lapple が式②の関係を提唱しています。圧力損失については例えば式③の関係が有ります。

式①には Cc が含まれていますが、これは Slip Correction factor と呼ばれるものですが、通常は 1 で良いのかなと。




標準サイクロン 分離粒子径・圧力損失 計算結果


これらのサイクロンを用い、以下の条件で運転してみるとして100%分離粒子径と圧力損失は以下の結果となりました。

  • ガス流量  30      [m3/min]
  • ガス密度  1.2     [kg/m3]
  • ガス粘度  18      [μ Pa s]
  • 粒子密度  2,000 [kg/m3]

100% 分離粒子径は 4 ~ 6 [μm] となり、圧力損失は 150 [mmH2O] 程度となりました。まあ一つ圧損がデカいですけど。また、入口ガス流速に対して分離粒子径・圧力損失をプロットしてみると、傾向はありそうですがハッキリとは言えませんね。



サイクロン サイズの影響

ガス流量は一定でサイクロン径をいくつか変えて分離粒子径と圧力損失を計算してみた結果を以下に示します。結論から言うと、サイクロン径を大きくすれば分離粒子径は大きくなり、圧力損失は小さくなります。より微細な粒子を分離するにはある程度の圧力損失を見込まなければならないと言う事になります。




圧力損失と分離粒子径との関係は以下のようになります。サイクロンを小さくすると圧力損失は上がりますが、分離粒子径は小さくなります。まあ、だからと言って小さくし過ぎても分離粒子径の減少は頭打ちになるのは以下の結果から明らかですね。




サイクロン 基数の影響

で、ガス流量がそれなりに有るとして、分離粒子径もある程度小さくして、かつ圧力損失は抑えたい場合ですが、マルチサイクロンとする方法があります。マルチクロンとか言うと思いますが。上記の条件で、サイクロン基数を変えて計算してみると以下のようになります。

サイクロンを2基にすると圧力損失は大幅に低下します。もちろん、分離粒子径も大きくはなりますが、それほどでは無いですね。

  • 分離粒子径 2.6      → 3.7 [μm]
  • 圧力損失  1,007 → 252 [mmH2O]

まあ、もっと増やしても良いですが圧力損失の低下度合いは頭打ちとなりますし、基数が増えると言う事は費用がかさみますね。それと、マルチクロンとする場合は、下図にあるように基数は偶数にしたほうが良いですね。各サイクロンに均等に気流が流入し、流量が均等にならないといけませんので 奇数だと難しいですね。いちいちダンパーで流量を調節するとかもしませんし。



まとめ

今回はサイクロンの設計として、分離粒子径と圧力損失を計算してみました。粉ものを扱う量産プラントでは直径が1メートル以上もあるようなデカいものもありますね。また、空気輸送のラインの終端にもサイクロンが設置されていたりしますね。また、小学生の時の通学路には製材所が有って、その屋根には小型のサイクロンが設置されていたな~と思い出しました。まあ、当時は何なんかは全く分かっていませんでしたが、形が面白かったので覚えていました。今にして思えばあれはサイクロンだったんですね。




参考文献

  1. 「はじめての集じん技術」 日刊工業新聞社 2013年刊
  2. 「図解 粉体機器・装置の基礎」 工業調査会 2005年刊











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