今回は粉体供給装置の一つであるスクリューフィーダー Screw Feeder について取り上げます。粉体関連の投稿ではいつもお世話になっている粉体工学用語辞典には以下のように記載されていますね。
スクリューフィーダーは回転運動式供給機の一つで円筒またはU字状のトラフの中にら旋状につけられた羽根をもつ軸が回転することによって粉体を移動する装置である。基本底な構造はスクリューコンベアと同じである。(中略) 供給量は主として,スクリュー羽根の径と回転数,および粉体の性状による充満率とによって決まる。摩耗性粉体などでは使用する限界回転数がある。
このブログでも以前に 「No.49 ポリマー押出し」において単軸押出機の吐出量について取り上げました。円筒形のバレルがあってその中のスクリューがグルグル回転するとポリマーが移送されます。んで、スクリュー外径とかピッチ、フライト深さなどの各部サイズを変更すると吐出量が影響を受けるんですね。で、同じ構造であれば液体だけでは無くて粉粒体を移送する事も可能です。なんですが、さすがにポリマー移送とは計算式とかは違いますね。なので、その辺りを計算してみようかなと。
実務においては、スクリューフィーダーそのものの仕様を決定するような事は有りませんでした。ですが、PFD, Process Flow Diagram とかP&ID, Piping & Instrument Diagram には スクリューフィーダーを描き込んでましたね。粉を扱うプラントもいくつかやった事があったので。「この原料ホッパーの下部にスクリューフィーダーを設置して粉を移送して」とか。プラントでもいくつか見かけましたね。
スクリューフィーダー Screw Feeder
参考書籍にはスクリューフィーダーの長所や短所が書いてあるのでご紹介しておきます。構造的には下図のとおりですね。ケーシングがあってその中にスクリューが設置してあります。扱うのが粉粒体なんで入口/出口ノズルはデカいですよね、液体とかに比較すると。入口ノズルに直接ホッパーが接続されているのも普通にありますね。
【長所】
- 構造が簡単で供給量が安定している
- 運転・保守が容易で耐久性がある
- 供給量は回転数にほぼ比例する
- 水平から鉛直まで任意の勾配で設置する事が出来る
- 密閉構造にしやすいので粉塵、悪臭、ガスの飛散を防止できる
- 必要に応じてジャケットを取り付け加熱・冷却や乾燥にも使用できる
- スクリューのねじを逆向きにして前後反対向きに供給できる
【短所】
- 大容量、長距離の供給・輸送には向かない
- スクリューとケーシングとの間には隙間があるので付着性が有るものには向かない
- 摩耗性が著しい粉粒体、大きな塊を含むものには向かない
- 隙間部分で粉粒体が摺動するので消費電力が大きくなる
粉体供給量 計算式 Powder Feed Rate Calculation Equations
✔ 計算法 1. method 1.
基本は式①となりますね。スクリュー外径とシャフト外径との空隙部分に粉体が充填されて移送されます。この時、スクリューのピッチも関係しますね。で、回転数が大きければ供給量も増加します。で、問題なのが充填率 Φ となります。フィーダー内が完全に粉粒体によって充満しているのであれば Φ = 1.0 となりますが、以下の計算式では Φ = 0.8 程度を前提として計算するようです。で、計算手順と言うか留意点は以下のとおりとなります。
- 塊 lump を含む場合は Table 1.2 でスクリュー径を決定
- スクリューピッチはスクリュー径の1/2、充填率 0.8 として Table 1.1 で回転数を決定する
充填率と嵩密度は正確には実測する必要が有るとの事です - 回転数が Table 1.1 の 50[%] となる場合には スクリュー外径を大きくする
- ホッパー内フィーダー長さは粉体だけの場合はスクリュー外径の4倍、塊を含む場合は6倍とする
✔ 計算法 2. method 2.
こちらの計算式も計算法 1. とほぼ同じですね。で、肝心の粉体充填率ですが粉の種類によって使い分けます。サラサラした流動性の良い粉であれば充填率は大きくなり、塊を含んだり摩耗性のある粉の充填率は小さくなります。
また、動力については 定数値 K1 と K2 が含まれていますが、K2については粉によって使い分けます。サラサラした粉は小さく、摩耗性・付着性がある粉では大きくなります。一方、K1 については軸受部で消費される動力についての定数で、下図のグラフから読み取ります。
計算例 Examples
✔ 回転数の影響 Influence of Rotation Speed
んじゃ、早速計算してみます。流動しやすい粉体を以下の仕様のスクリューフィーダーで供給する場合の回転数と供給量との関係を計算した結果です。
- スクリュー外径 200 [mm]
- スクリューピッチ 200 [mm]
- シャフト外径 50 [mm]
- スクリュー長 5 [m]
- 粉体 嵩密度 600 [kg/m3]
計算法によって結構違いますね。と言うか、そもそも計算法 1. では充填率を 0.8 に固定しているので供給量は大きくなりますね。一方、計算法 2. については粉体特性によって 充填率を使い分けますね。この場合は、Table 2.1 の粉体種 A に該当するので 充填率 ζ = 0.45 となります。なので、供給量は 計算法 2. の方が小さくなります。で、電動機動力については 計算法 2. の方が大きくなります。計算法 2. の方が軸受部の動力とかを考慮してるんで信頼性が有るかと思うんですけど。んで、仕様を決定するのであれば 供給量は少なめで電動機動力が多めに計算される方が良いですね。スクリューフィーダーを設置はしてみたけど、思ったほど供給量も出ないな~とか 、電気代が思ったよりもかかるな~とかなりますよね。なので、計算法 2. を使うほうがより安全側の設計になるのかなと。
✔ 必要回転数 Required Rotation Speed
この結果を見ると、例えば 供給量 3 [ton/hr] を達成したいのであれば、外径 200 [mm] のスクリューを設置して 回転数 30 [rpm] とすれば良いですね。まあ、もっと小さいスクリューでも良いですが、その分 回転数を上げる必要があります。んで、臨界回転数 Nc ってのが有って際限なく回転数を上げる事は出来ません。グラフ中の数式が臨界回転数計算式で、グラフのプロットは臨界回転数までとしています。
まとめ Wrap-Up
それと、粉体だけでは無くて塊 lump を含むような場合はまた少し厄介なようです。スクリューとケーシングとの隙間に塊がゴリッと挟まって粉砕されるような塊であれば良いですけど、そうじゃないと電動機が過負荷となって停止してしまいますね。であれば、別の供給装置を考えた方が良いですね。
また、少し変わり種のスクリューフィーダーとして、スクリューのシャフトが無いってのも有りますね。商品名 「トランジー®」とかでしょうか。シャフトが無いので経路をグイーっと曲げて設置する事も出来ますね。まあ、あまり長距離とか大量供給には向きませんけど、パイロットプラントスケールであればなかなか使い勝手が良いと思いますね。何回か検討した事は有りますけど、実際に導入するまでには至りませんでしたね。
参考書籍・文献 References
- 「図解 粉機器・装置の基礎」 工業調査会 2005年刊
- 「粉体技術ポケットブック」 工業調査会 1996年刊
- 「スクリューフィーダーの粉体供給性能の相関に必要な粉体特性の検討」
粉体工学会誌 第49巻 第11号 2012年 - 「スクリューフィーダーの供給特性に及ぼす粉体のかさ密度および流動性の影響」
粉体工学会誌 第38巻 第1号 2001年
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