反応器の熱収支について説明する前に、反応器 内容積のサイズ感について簡単に触れておきます。
年間生産量
今回の例での生産量 原料供給流量 3,000[kg/hr] 及び 転化率 70[%] において、反応器 内容積は 24[m3] と推定されました。生産量は 2,100 [kg/hr] であり、仮に年間生産時間を 8160 [hr] とすると、年間生産量は 17,136 [MTPY] となります。[MTPY] は Metric Ton per Year の略で年間生産量を示します。年間生産時間 8,160 [hr] は日数にすると 340日となります。生産を実施しない日数は年間で25日間となり、定期的なクリーニングやメンテンスに充てられます。それ以外は、1日24時間 盆も正月も関係無く生産が継続される事になります。
さて、この生産量ですが今の時代ではだいぶ小さめでよほど特別な事情があるプラント以外では運転されていないと思います。例えば、小ロット品や特殊品などの生産に特化したプラントでしょうか。 2000年代に入ってからは、1ライン当たりの生産量は 10万トン 即ち 100 [k MTPY] 以上と言うのが一般的かと思います。と言うことで、年間生産量を 5万トン 及び 10万トンとして、反応器 内容積を推定した結果を以下に示します。
反応器 内容積比較
3つの例を比較していますが、だいぶ違いますね。10万トン 反応器では内容積は 100[m3]を超過しています。現実的にこの様な大きさの反応器も有るには有りますが、スケールメリットを要求されるPVC(塩化ビニル) 懸濁重合反応器など ごく限られた用途だけかと思います。重合の進行に伴い内容液の粘度が急激に増加する、今回のような塊状重合や溶液重合反応器では、機械的な制約などがありだいぶ厳しいと考えます。例えば、液粘度が高いと必要な撹拌動力も大きくなり結果として撹拌機 電動機・減速機が非常に大きなものとなります。付け加えて言えば、デカい撹拌機では撹拌軸も非常に太いものとなり、軸封装置(メカニカルシール)と言った付帯装置に関するコストも非常にお高くつく事となります。撹拌動力の見積もりについては、また別途ご紹介します。
と言う事で、次回では熱収支の詳細についてです。
参考文献
"What are the opportunities for polystyrene operators?" G.Correa, A.Monro Hydrocarbon Processing March 2000
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