反応器 熱収支

 今回は反応器 熱収支について簡単に説明します。

熱収支式

まずは、以下に熱収支計算式を示します。要は入ってくる熱量と発生する熱量を左辺とし、出ていく熱量と除去する熱量を右辺において、イコールで結びます。定常状態では反応器 温度はずっと変わらないので、この関係が成立していなければなりません。ここで、流入熱量や流出熱量及び重合による発生熱量は物質収支から求める事が出来ますが、一つだけ冷却負荷 Qc が未知であり、この項について解けば値が得られます。



流入熱量や流出熱量は上記のように質量流量と比熱から計算され、重合熱量は生産量と重合熱の積として得られます。また、上記 熱収支式には Qagitation の項が有り、これは撹拌熱です。反応液を撹拌する為に投入される動力は最終的に粘性散逸により熱となるので、動力値[kW] を [kJ/hr] に変換して用いますが、今回はプロセス設計に着目したいと考えているので考慮はしていません。

冷却負荷

今回の例では、冷却負荷は約 79万 [kJ/hr] となり これは 220 [kW] に相当します。この冷却負荷を何らかの方法で除去しないと、熱量が蓄積して反応器温度は上昇します。一方、必要以上に熱量を除去してしまうと、熱量が減少し反応器温度は逆に降下してしまいます。この辺りをうまくコントロールして反応器温度を所定値に維持する事になります。冷却負荷と生産量との関係を計算してみた結果を以下に示します。


今回は反応器 転化率は変えていないので、生産量が増加するのに伴い冷却負荷もリニアに増加します。この冷却負荷を反応液 滞留容積 [m3] で割り算した結果も併せて示しています。生産量の増加に伴って反応器をデカくしているので、この値は一定となり今回の例では 13.6 [kW/m3] となりました。単位体積当たりの冷却負荷と言う呼称になりますが、スチレンの熱開始重合を無溶媒で実施し、転化率70[%]で運転するのであれば、この程度の値になると言う事になります。で、この値はどうなのか?、デカいのか小さいのか?と言う点については次回 触れたいと思います。



 



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