前回は潜熱除去方式における蒸発蒸気量を計算してみました。反応器 気相部については、まあスチレンの蒸気がスーッと上昇するだけなので、所謂 空塔速度でも出してみて過大で無ければOKなのかと。ですが、液相部については良く分からないと言う事でした。とは言うもののブラックボックスなのも気持ち悪いので少しは技術的に見ていこうかなと思います。
気泡上昇速度
液中で発生したスチレン蒸気は気泡となっています。サイトグラス(覗き窓)から覗いてみると液が白濁しているので気泡を含まれているんだなとは分かります。液中に泡が有ると言う事はそこには気液の界面が有るので、そこで光が乱反射して濁ると言う事ですね。因みに、反応器のサイトグラスは必ず対面に2つ設置して、1つは採光用というか光を入れる方で、もう1つ反対側のサイトグラスから中を覗き見ます。視野はそんなに大きくなくて、せいぜい直径100[mm]ぐらいでしょうか。なので、うまく場所を選定しないと肝心の場所が見えないよと言うか、大体見たいところはなかなか見えないと言うのが反応器あるあるですね。
気泡の大きさは正直良く分からないですが、大きさを仮定すればその気泡がどれくらいの速度で上昇するのかは計算出来ます。ある大きさの気泡が有って、その気泡が静止している液中を上昇する速度は以下の計算式を使って計算出来ます。
空気 - 水
せっかくなので、水中に空気の泡をおいた場合の上昇速度を計算した例をご紹介します。気泡直径を変えて上昇速度を計算しています。計算条件は以下のとおりです。
- 空気 密度 1.2 [kg/m3]
- 水 密度 1000 [kg/m3]
- 水 粘度 0.001 [Pa s]
スチレン - ポリマー溶液
で、次はネバネバのポリマー溶液とスチレン蒸気泡との組み合わせで、同じ様に計算した結果を以下にご紹介します。
- スチレン蒸気 密度 2.68 [kg/m3]
- ポリマー溶液 密度 967 [kg/m3]
- ポリマー溶液 粘度 138 [Pa s]
で、何を言いたいのかというと、今回の例のようなポリスチレン重合反応器では発生した気泡が液中に留まり、結果 見掛けの液面位置が上がるものと考えられます。気泡が大量に含まれる事で嵩が増える訳ですね。まあ、多少見掛けの嵩が増えても液面位置は少し上ったかな~ですみますが、その程度が激しければ液面位置が極端に高くなり、反応器 上鏡板に到達してしまうとそこでアウトとなります。ノズルやら蒸気上昇管が、ベチョベチョのポリマー溶液で閉塞してしまいますので・・・。泡立ったポリマー溶液が反応器のサイトグラスまで到達し、中が全く見えなくなるとかは最悪過ぎて考えたく有りません。
という事で、次回はじゃあ実際はどうなのかについてご紹介します。
参考文献
「基礎化学工学」増補版 培風館 2021年刊
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