反応器 撹拌その7

 前回はダブルヘリカルリボンインペラの撹拌動力 推算式と計算結果をご紹介しました。今回はその続きとして、高粘度用インペラの動力曲線についてもう少し触れておきます。

前回のDHR動力推算式ですと、適用範囲は「層流域」のみであり、撹拌レイノルズ数が100を超えるような「遷移域」や「乱流域」には適用出来ません。無理やり計算しても動力数が非常に小さくなるので妥当な値を求められません。ですが、ざっくりとでも良いので乱流域の動力数が知りたい!と言う場合も有るかと思います。ダブルヘリカルリボンインペラについては、広範囲の撹拌レイノルズ数に対応した動力推算式は見つけられませんでした。ですが、アンカーインペラについては名工大グループが推算式を提示しており、それによればパドルインペラ式を適用出来るとの事です。




動力計算結果 アンカーインペラ

DHR の場合と同じ反応器・インペラ仕様値を適用します。また、回転数も DHR と同じく最大 30[rpm] とし、常用 18 [rpm] とします。最大回転数では動力 200 [kW] 程度で、Pv値は 13 [kW/m3] となります。


この動力値ですが、DHR よりは多少高めです。その理由ですが、アンカーインペラの水平部分による動力消費分なのかなと思います。因みに文献には、この水平部分と槽底部とのクリアランスの大小は動力数には影響しなかった、と有りました。となると、この部分が液中を動く際の流体抵抗に起因しているのかなと。一方、DHRにはこのような水平部分は無いので、その分 動力数が小さくなるのかなと。DHR にもこのような水平部分をくっつけると同程度の動力数になるのかも知れません。これまた、因みにですがリボンブレードを支持する為にシャフトからサポート(大抵は丸棒状)を延ばしますが、ここにも流体抵抗が働きます。なので、その影響を加味した動力推算式も有りますね。

動力曲線 アンカーインペラ 広範囲レイノルズ数

上記の動力推算式を用いると、以下のように広範囲の撹拌レイノルズ数において動力数を計算する事が出来ます。んでもって、撹拌レイノルズ数が100万を超えるとほぼ一定となっている事が分かります。また、DHR 計算結果と比較すると差は歴然ですね。
このアンカーインペラで常温の水を 回転数 30 [rpm] で撹拌すると、動力は 2.5 [kW] となり Pv は 0.15 [kW/m3] となります。この程度の動力を投入出来るのであれば、低粘度用インペラと同じくらいの動力ですね。反応器内部を低粘度の溶媒で洗浄する場合などは、この程度の動力なんだな~と言うのが分かります。




と言う事で、今回はこのへんで。


参考文献

「広いレイノルズ数領域におけるアンカー翼の撹拌所要動力」 加藤、亀井、多田ら 化学工学論文集 第37巻 第1号 pp.19-21 2011年

"An Extended Power Correlation for Anchor and Helical Ribbon Impellers" Koji Takahashi, Kunio Arai, Shozaburo Saito  J. Chem. Eng. Japan Vol.15 No.1 pp.77-79 1982




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