反応器 撹拌その8

 前回は広い撹拌レイノルズ数範囲に適用可能なアンカーインペラの動力数推算式、動力推算結果 および 動力曲線の計算結果をご紹介しました。撹拌についてもだいぶ長くなったきたので、そろそろ締めたいと思いつつ、その前に ダブルヘリカルリボンインペラにおける最重要な仕様、クリアランスの影響についてご紹介します。



DHR 撹拌動力 クリアランスの影響

槽・インペラの仕様は 24 [m3] 反応器のままとし、インペラ径/槽径 比率である d/D のみを変化させて計算した結果です。結果、上図のようにクリアランス値が異なり、その影響が動力数として現われます。なお、計算には名工大グループの「層流域」用の推算式を使用しています。



結果としては、まあ当然と言えば当然ですが d/D 値が 1 に近づいていくと NpRe、動力数が増加します。ただ、d/D値が 0.95 程度まではそれほど大幅には増加しません。0.95 を過ぎたあたりから急激に増加する感じです。
撹拌動力値と 単位体積当たりの動力値 Pv を見ても、やはり d/D が 0.95 を過ぎた辺りから急激に大きくなっています。

  • d/D = 0.90  C 128 [mm]    P 46 [kW]   Pv  2.8 [kW/m3]
  • d/D = 0.95      C   64 [mm]    P 64 [kW]   Pv  3.9 [kW/m3]
  • d/D = 0.99      C   13 [mm]    P 99 [kW]   Pv  6.1 [kW/m3] 

このように計算してみると、やはり d/D は 0.95 ~ 0.97 程度が妥当なのかなと思いますね。クリアランスをギチギチに狭くしても、製作が難しくなって初期費用もかかるし、動力も大きくなるので電気代 即ち 運転費用もかさみます。

どーしても狭いクリアランスにしないと、製品のスペックがクリアできない等の理由があれば話は別ですけど。もし、そうであればラボやパイロットプラントでレシピを様々に検討して、あまりハードウェアに負担がかからないようにすべきだと考えます。ハードウェアの力量に頼りすぎるのは考えものですね。ケミカルプロセスでは、ソフトウェアとハードウェアは車の両輪なので (重要度は 7:3 くらいかなと) 、レシピの方でクリア出来るのであればそちらの方がベターだと思います。

と言う事で、次回は動力以外の性能について触れたいと思います。

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