スチームと言えば 次は空気ですよね。実務では局所排気用ダクトの圧力損失計算などでたまに使っていました。とは言っても、常温でほぼ大気圧であれば 密度 1.2 [kg/m3] 、粘度 18 [μPa s] です。で、これらの値を使えばダクト内流れのレイノルズ数が計算できるので次に摩擦係数を計算し、あとはファニングの式で圧損が得られますね。まあ、エアプレヒーターなどの熱交換器の設計であれば、温度変化がありますからその温度での物性値が必要となりますね。物性としては、前回同様 比熱、密度、粘度および熱伝導率とします。
空気 物性計算式
今回の物性計算式ですが、水、スチームでも使用した広島大学の文献に記載されているものを使用します。それだけだと少し寂しいので、「伝熱工学資料 第4版」 記載のデータを多項式近似してみました。
まずは、広島大学 文献ですがこれまでと同じタイプの計算式です。
次に、「伝熱工学資料 第4版」データを使った近似式ですが、普通の多項式近似です。EXCEL を使って作成しましたが、 r2 値が 0.999 以上であれば次数はあまり増やさないようにしました。また、近似式の温度範囲は 260~600 [K] としました。
空気物性 計算結果
計算結果を以下に示します。
まずは比熱ですが、比較対照用のデータとして「伝熱工学資料 第4版」に加えて、「熱交換器設計ハンドブック」巻末に記載されている空気物性値を併せてプロットしています。見てみると 比熱値は 一度 最小値をとりその後は単調に増加します。で、文献 計算式の計算結果は単調増加しているだけなので、0[℃] 付近ではズレが大きくなっています。自前で多項式近似してみた結果は、まあ良く近似されています(見にくいですが)。
ついで、Perry's Chemical Engineers' Handbook 7th edition 記載の計算式による結果を一点鎖線で示しています。ほぼ同じ結果ですね。
次に粘度ですが、こちらは単調増加するだけです。文献 計算式では400[℃] では少しズレが有りますが、低い温度領域では十分に使用できますね。もちろん、多項式近似式も十分に使用可能です。このように単調増加もしくは減少するだけのデータであれば、多項式近似式で対応可能ですね。
ついでなので、気体の分子運動論を用いて粘度を推算した結果を併せて示しています(一点鎖線)。気体の分子運動論では例えば以下の前提条件に基づいて物性の推算式を構築しています。
- 分子は希薄で2分子間の衝突のみが起こる
- 分子の衝突は力学の法則に従う
- 弾性衝突である
- 分子間の力は分子の中心間で作用する
基本的に単原子分子にのみ適用可能ですが、多原子分子であってもこの仮定が成立する場合が多く粘度値を推算可能です、とされています。
で、結果ですが単調増加という傾向は同じです。ただし、非常に温度の低い領域では同程度の粘度値ですが、温度上昇に伴いズレが大きくなります。
最後に熱伝導率ですが、こちらは単調増加します。文献 計算式の結果は、粘度の場合と同じ様に高温域で少しズレます。
で、こちらも気体の分子運動論による推算結果も併せて示していますが、粘度の場合と同様に低温域では合いますが、高温域では差異が大きいですね。
空気 物性計算式を見てきましたが、少し面倒ですが 必要とする温度域のデータを用いて自分で多項式近似すれば確実かなと思います。EXCEL があれば近似式にするのは簡単ですし、後はどのデータを使うのか、と入力の面倒さだけでしょうか。
今回、改めて空気の物性について整理してみましたが、比熱値が最小値を持つのは知りませんでした。水の比熱が最小値を持つのは知っていましたが。思えば、低温空気の物性は仕事では必要としていませんでしたし。ですが、空気の深冷分離なんかでは低温域における物性値が重要になってくるんだろうなーと思います。
参考文献
- 「水、水蒸気および空気の簡便な温度関係物性式の設定に関する研究」 久保田、羽倉 広島大学 生物生産学部 紀要 1994年
- Perry's Chemical Engineers' Handbook 7th edition
- 熱交換器設計ハンドブック 増訂版 工学図書 2001年
- 物性推算法 大江修造著 データブック出版社 2002年
- 日本機械学会 「伝熱工学資料 第4版」 空気 物性表
- 熱交換器設計ハンドブック 空気物性表
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