水とくれば、次はスチームですよね。ケミカルプラントでは水、スチーム、エアーが代表的なユーティリティーで、非常に頻繁に使われます。もちろん、設計実務においても物性値が必要となります。で、計算式の出処は前回と同じです。ただ、同じ H2O ですが気体(Vapor) では少し注意が必要となります。
物性としては、比熱、密度、粘度および熱伝導率とします。これがあれば、レイノルズ数とプラントル数が計算できますね。また、計算式は前回と同じような多項式タイプです。
スチーム物性 計算式
前回も 2種類の文献を参考にしましたが、今回も同じです。まずは、「化学装置」プラントエンジニアリングメモ 第133回 に記載されていた物性計算式を用います。今回は多項式タイプ①のみを使用します。
で、多項式の定数値ですが2種類有ります。下図の上段表は飽和水蒸気の物性計算に用いる定数値です。一方、下段表の定数値は、圧力を 0.1 [M Pa Abs.] に固定して温度を変化させた場合の物性値計算に用います。大気圧下での沸点は100[℃] ですが、100[℃]ちょうどあれば飽和水蒸気です。ここから温度を上げると過熱蒸気となりますが、その過熱蒸気の物性値を計算するのに使用する定数値となります。
スチーム物性 計算結果
以下にスチーム物性計算結果を示します。
まずは、文献1. (化学装置) の飽和蒸気は実線で、過熱蒸気は破線です。文献 2. (広島大学) は過熱蒸気だけですが、これは一点鎖線で示しています。で、比較対照データとして 日本機械学会 「伝熱工学資料 第4版」 の飽和・過熱蒸気のデータを○で示しています。また、IAPWS The International Association for the Properties of Water and Steam (国際 水・蒸気性質協会) のデータは△で示しています。飽和蒸気について見てみると、そこそこ ズレているような・・・。一方、過熱蒸気について見てみると、計算式の結果は 伝熱工学資料 データと同じです。文献2. の方は少しズレていますね。
うーん、こんな感じであれば 使用する温度範囲のデータを 伝熱工学資料とか IAPWS サイトから引っ張って来て EXCEL でグラフ化し、多項式近似した方が良いのかなと思います。と思って、やってみましたが、0[℃] から臨界温度 374.14 [℃] までを一気に近似するのはなかなか難しいですね。300[℃] を過ぎた辺りから急激に増加するので。なので、温度範囲を区切ってやった方が良いと思います。
で、密度ですが そこまで温度が高くなければ 理想気体の状態方程式を使って計算できますね。図中の 二点鎖線が「理想気体の状態方程式」 を用いて計算した結果です。さすがに温度が高くなってくるとズレて来ますが、200[℃] くらいまでであれば使えるかと。気体の状態方程式を見ると気体の重量と体積が含まれているので、式を変形して左辺を 重量/体積とします。一方、右辺にその以外の変数をまとめると (圧力✕分子量)/(気体定数✕温度) となります。スチームは水なので分子量は 18.05 [kg/kmol] ですね。気体定数は 8314 [J/kmol K] で、圧力単位は [Pa] とし温度単位は [K] を使用します。
この方法は他の気体であっても使える便利な方法なので、覚えておいて損はないですね。
次は粘度です。まあ、気体なのでこの程度の粘度値ですね。 文献 1. の結果は 参照データ (JSME、IAPWS) とも合ってますね。また、文献 2. ですが、かけ離れた計算結果となってしまったので除外しています。
最後に熱伝導率です。飽和蒸気については、使用する温度範囲のデータを使用して多項式近似した方が良いかと思います。
臨界温度に近づくと物性値が急激に変化するので、全領域を多項式近似するのは無理が有りますね。実際、IAPWS の文献を見てみると、領域を分けて かつ複雑な数式で物性値の温度依存性を表現していますので、まあ当然といえば当然かなと。
スチームといえば代表的な加熱媒体な訳ですが、設計実務ではあまり使った事は無いですね。扱っていたプラントがポリマープロセスだったので、スチームよりは Hot Oil などと呼ばれる熱媒体油 を多用していました。ヘッダー温度が 280[℃] とか有りましたから、スチームだとなかなか難しいです。飽和圧力が 6.42 [MPa] もありますので・・・。一方、熱媒体油では そこまで蒸気圧は高くないので フツーの配管で移送できますね。まあ、きちんと保温しておかないと放熱しまくりになったり(暑いし燃料の無駄)、使用するポンプは高耐熱仕様のキャンドポンプとなるのですごく高価になったりと、それなりに気を使いますが。
と、今回はこの辺りで。
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