今回は円管内 強制対流熱伝達について取り上げます。もちろん熱交換器の設計などで使います。また、配管内を流れる高温流体が移送中にどの程度 温度降下するのかを推定したい場合にも必要となります。まあ、ざっくりとした計算であれば、液相 熱伝達係数は 1,000 [W/m2 K] としたりします。ですが、厳密に計算したい場合や、円管内側の熱抵抗の割合が多い場合は きちんと推定しますね。
ポリマープラントを取り扱う事が多かったのですけど、きちんと計算していました。粘度がすごく大きいのでプラントル数がものすごく大きい領域ですね。で、熱抵抗の大半はポリマー側にあるのでこの部分の見積もり如何で出口温度が変わったりします。当然 レイノルズ数はすごく小さくなり、層流流れ領域となります。となると、発達した流れであれば ヌッセルト数は 3.66 と決まっているので、後は熱伝達係数値を求めて終わりとなります。と、簡単にはいかなくて発達流れとなる前の助走区間の割合が大きいので、この助走区間を考慮してヌッセルト数を出してました。簡単に言うと、円管の長さが影響を与えます。
乱流であれば助走区間も短めなので、まあ円管内全体で発達流れとして計算しても良いかと思います。で、この乱流流れにおける熱伝達係数ですが、いろいろと推算式が有るんですね。以前 いくつかの推算式で計算した事がありますが、結構違ったりしました。まあ、設計する立場からすると小さめの値を使うほうが安全側の設計になるとは思いますが、あまり差があるのもな~と。その辺りも計算してみて結果をご紹介しようかなと。
強制対流 熱伝達係数 推算式
使用する推算式を以下に示します。出処はいつもの「伝熱工学資料」です。最新の推算式とかは無いのかな~と思って J-Stage で文献検索してみましたが、ここ数年の文献で使っているのは大抵 ここに有る推算式でした。まあ、和文の文献だけですけど。
層流
円管内径と平均流速基準のレイノルズ数で 2000 以下でしょうか。 同じ層流でも「発達した流れ」と「発達中の流れ」で違います。式①は発達流れであり、速度分布・温度分布はそれ以上変わりません。温度分布が変わらないと言う事は、壁面近傍の温度勾配が一定である事なので、結果 ヌッセルト数も一定値になります。
一方、式②・③では速度分布・温度分布が流れ方向に変化していくので、それを考慮しています。で、式③を見ると 3.66 が出てきてますが、発達中の流れがずーっと下流に行くと発達流れになり、式①になる事を表わしています。式③の右辺第二項は 分母に x+ が入っていますが、これは無次元距離です。で、下流に行けば行くほど 実距離 x は大きくなるので、x+ も大きくなります。となると、この第二項は ゼロに漸近していきます。つまり、最終的には 式① = 式③ となります。んじゃあ、管入口にすごく近いとどうなるかというと 式②で計算しますが、ヌッセルト数は大きくなります。高温壁面に低温流体が流入すれば、管入口では温度勾配が大きくなるので(温度境界層が薄い)、ヌッセルト数は大きくなります。
なので、どうしても層流で熱交換したいのであれば 無次元距離 x+ の小さい領域で行なうと言う手があります。短い円管を使うとか、細い円管を使うとかでしょうか。実際には難しいですが。
乱流
次は乱流の場合です。レイノルズ数は 3000 以上となります。乱流だとすぐに流れが発達するので、以下の推算式は発達流れの場合です。式⑥ Colburn の式などは化学工学の書籍などで一般的ですね。ただし、適用範囲が限られており なんでもかんでも使って言い訳ではありません。オススメは式⑨ Gnielinski の式あたりでしょうか。式⑩ Sleicher - Rouse の式も同じような結果となるので、まあオススメでしょうか。 式⑨は 摩擦係数 f の値が必要となりますが、式⑧とかを使えば良いと思います。が、レイノルズ数が小さいとズレてくるので 、例えば平滑管に適用可能な板谷の式などを使えば良いと思います。
Nusselt 数 計算結果
では、上記 推算式を使って Nusselt 数を計算した結果を以下に示します。結果を比較してみたいので、グラフ横軸は レイノルズ数とし、縦軸は スタントン数としています。スタントン数は ヌッセルト数を レイノルズ数とプラントル数との積で割り算した無次元数です。また、プラントル数は 10 一定としていますが、これは常温の水の値ですね。
層流は Nu=3.66 なので一本しか線が無いですが、乱流域では 4本あります。これだけを見ると 「大体同じなのか?」と思えなくも無いですが、まあ対数目盛なのでこんな感じだと思います。
熱伝達係数 計算結果
流体 : 水
流体 : 空気
空気の場合の計算結果です。水の場合と比較して ヌッセルト数も熱伝達係数も小さいですね。推算式の比較ですが、やはり Colburn 式は外れてますね。空気の場合は他2式よりも大きな熱伝達係数値となっています。 気体の場合でも Colburn式は使用しないほうが良いと思います。
流体 : ポリマー
ついでに、高粘度液であるポリマーの計算結果を以下に示します。用いた液物性は以下のとおりです。
- 円管内径 19.0 [mm]
- 円管長 3000 [mm]
- 液密度 900 [kg/m3]
- 液粘度 50 [Pa s]
- 液比熱 2000 [J/kg K]
- 液熱伝導率 0.16 [W/m K]
まとめ
補足
- レイノルズ数 1,000 [ - ] 平均流速 0.053 [m/s] 助走区間 1,093 [mm]
- レイノルズ数 10,000 [ - ] 平均流速 0.53 [m/s] 助走区間 132 [mm]
参考文献
- 「伝熱工学資料 第4版」 日本機械学会編 丸善 1986年刊
- 「大学講義 伝熱工学」武山、大谷、相原 丸善 1983年刊
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