今回は多孔管の流速斑を取り上げます。多孔管自体は機器・装置のヘッダー配管やスパージャーなどで一般的に使われますね。多孔管はその名のとおり、複数の孔を開けた管であり その孔から液体を流出させます。
まあ、普通は各孔から同じ流速即ち同じ流量で流出させたい訳ですが、そうするには孔径をどれくらいにすれば良いかを求める事になります。多孔管の構造は下図に示すとおりで、管内径は D 、孔径は D0 とします。
流速斑 計算式
流速斑ですが、まあ流速の「ムラ」ですね。適当に孔径を決めてしまうと、入口に近い方では流出量が多めとなり、一方 端っこでは流出量が少なめとなります。この差が流速斑です。で、この流速斑が例えば 5[%] 以内となるように 孔径はいくらにすれば良いか? を計算する事になります。
で、計算式は以下のとおりです。式①から④までが基本式で、これらから残りの式が導き出せます。結論から言えば、所定の流速斑を満たすのに必要な孔径は式⑧で求められます。式⑧中の BN は吐出の際には -1 と近似され、吸引の際には +1 と近似されます。定数 C は文献によれば 0.62 程度を使用します。式⑧で得られた孔径を参考にして採用する孔径を設定し、孔の圧力損失等を計算します。まあ、孔径は中途半端な値が出てくる訳ですが、穿孔する為のドリル径はキリの良い値なので、小さめの値を選択する事になるかと。
計算結果
多孔管の仕様は以下のとおりです。管径は SGP 3B のものです。流出孔の径が既に描いてありますけど、この径の大小で流速斑がどのように変化するかを計算しています。
- SGP 3B/80A 内径 80.7 [mm]
- 流体 水
- 流量 0.01 [m3/sec]
- 孔数 10 [EA]
- 孔両端長 700 [mm]
管・孔 平均流速
まずは管内と孔内の平均流速がどの程度なのかを見てみます。以下に計算結果を示しますが、流量自体が与えられているので管径、孔数・孔径を決めれば平均流速はすぐに得られますね。管内流速ですが、当然 入口では大きく末端に行くに従って遅くなります。各孔から流出するので流量が減少していく為です。なので、全流量の1/2を使って平均流速を計算しています。一方、孔の平均流速ですが、まずは全流量を孔数で割り算して各孔の流量を求め、更に孔断面積で割り算して求めています。
まあ、だいたいこの程度の流速になっているという事ですが、この流速と液物性ですと流れは乱流となっています。これが層流流れになっていたりすると、また違う取り扱いになるので注意が必要です。
流速斑
で、流速斑ですが孔径を変えて計算してみると以下のようになります。流速比 XN が得られるので、これをパーセンテージにしています。
流速斑 5[%] となる為の孔径を式⑧を用いて計算すると、18.11[mm]となります。ですが、18.11[mm] と言う中途半端なドリルは売ってないので、キリの良い 18[mm] としますよね。で、この孔径 18[mm] で流速比を計算し直してみると 1.0434 となり、これは流速斑 -4.34 [%] となります。両端の孔で比較すると 4.34[%] の流速差が有ると言う事になります。
ここで、孔径を小さくしてみると流速斑は小さくなる事が分かります。一方、孔径を大きくすると流速斑は大幅に増加しています。図を描いてみると、確かに 27[mm] ともなると孔が大きすぎて入口に近い方からジャジャ漏れしそうです。
流速斑を 10[%] とするには圧損比を 100 程度に、5[%] をするには 圧損比を 200 程度にする必要があることになります。まあ、あくまでもこの例ではそうなったと言う事なので、目安程度なのかなと思います。圧損比が数倍とかでは全然ダメだと思います。
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