だいぶ寒くなってきて窓や窓枠に結露が発生するようになりました。まあ、この時期どうしても起きてしまいますね。で、この結露ですが湿度とか露点温度などが関係しており、結露量についても計算で求める事も可能です。
ケミカルプラントにおいても、例えば乾燥機から排出された出口空気ですが、入口空気に比較すると湿度は増加しています。で、この出口空気ですがダクトとか配管を通過していくうちに放熱で温度低下します。すると、相対湿度が増加していき 最悪 ダクト・配管壁面に結露してしまいます。流路内が水分でビショビショになるのはあまりよろしくは無いですね。また、ミスト混じりの気流となるとブロワとかにはダメージですね。なので、そうはならないようにダクト・配管はきちんと保温しようとか短めにしようとかの対策も打てますね。
湿度 関係諸量 及び計算式
まず湿度ですが、絶対湿度の定義は式①であるとおり水蒸気圧により計算されます。単位を見て分かるように乾き空気 1[kg] 当たりの水分量 [kg] となります。式②は飽和絶対湿度と絶対湿度との比率で比較湿度[%]と呼ばれます。また、式③は水蒸気圧と飽和水蒸気圧との比率で相対湿度[%]と呼ばれます。普通 湿度と言われるのは この相対湿度です。
絶対湿度や相対湿度を求めるには水蒸気圧の値が必要となりますが、例えば式④で計算されます。もちろん、この式でなくても別の式でも適用可能です。式④は 3定数のAntoine式タイプですね。Antoine式であれば変形する事が容易なので、式①と式④を組合せれば 式⑤が得られ、湿度から温度を求める事が可能です。
また、結露が発生する温度ですが 「露点温度」です。湿り空気の温度を下げていくと、相対湿度は増加していき最終的に 100[%] に到達して水蒸気の凝縮が起こります。その時の温度が露点温度となります。温度を下げる前の湿り空気の絶対湿度を式⑤に代入すれば露点温度が得られます。
湿度図表
上記式①と③を使って横軸を温度、縦軸を絶対湿度として 相対湿度ごとにプロットすると以下のようになります。湿度図表 Psychrometric chart と呼ばれるものですね。
図中の点①は、温度 30[℃]、相対湿度 60[%] における絶対湿度 0.016 [kg/kg-DA] です。乾き空気 1[kg] につき 水分は 16 [g] が含まれている事になります。夏場のちょっと蒸し暑い環境ですが、水分はこの程度なんですね。一方、点②は冬場のちょっと寒い室内ですが 絶対湿度は 0.0043 [kg/kg-DA] となります。冬場は夏場の 1/3 の絶対湿度しか無いので、そりゃ乾燥しますねとなります。
露点温度 計算結果
温度と相対湿度を変えて露点温度を計算した結果は以下のようになります。
相対湿度 100[%] の状態では、温度は露点温度と同じです。相対湿度が下がれば下がるほど露点温度も下がります。上記の湿度図表上の二点については露点温度は、それぞれ以下のようになります。夏場 冷たい飲み物をガラスコップに注ぐとすぐに結露しますが、この結果を見ると納得ですね。また、冬場ですがこれくらいの相対湿度であれば 外気温度が零度ちかくまで下がらないと結露はしないだろうと予想されます。ですが、湿度 30[%]だとさすがに喉が痛くなったり静電気が発生しやすくなりますので、加湿器で加湿しますよね。 となると、露点温度も上がるので窓に結露が発生しやすくなります。
- 温度 30 [℃] 相対湿度 60[%] 露点温度 21.38[℃]
- 温度 20 [℃] 相対湿度 30[%] 露点温度 1.93 [℃]
結露水量 計算結果
結露水量ですが、最初の湿り空気の絶対湿度から冷却後の湿り空気の絶対湿度を差し引く事によって求められます。温度 30[℃]、相対湿度 60[%] の湿り空気の露点温度は 既に求めたとおり 21.38 [℃] なのでこの温度よりも下げると結露します。仮に 10[℃] まで冷やすとします。温度 10[℃] で飽和状態にありますから下図では必ず 相対湿度 100[%] の線上に有ります。なので、絶対湿度は 0.00761 [kg/kg-DA] と求められます。結果として 最初の絶対湿度から冷却後の絶対湿度の差が結露水量となり、この場合は 0.00839 [kg/kg-DA] となります。乾き空気 1[kg]当たり 結露水量は 8.39 [g] となります。
冬場の結露を想定すると例えば以下の様になります。冷却後の温度が零度であれば乾き空気 1[kg]当たり6.1[g] の結露が発生します。まあ想定となりますが、1メートル四方の窓が有ったとして表面温度が零度とします。窓にはカーテンが設置してあって窓とカーテンとの距離は50[mm] 程度とします。となると窓近傍の空間体積は 0.05 [m3] となり 空気密度を 1.2 [kg/m3] とすれば 空気重量は 0.06 [kg] となります。これに結露水量を掛け算すると 結露水量は 0.366 [g] となります。零度となると結構な冷え込みですし、実際の結露の様子を見ていると更に多いように感じます。まあ、実際には窓近傍の空気と室内空気との入れ替えもあると思いますし、そうなると結露水量は増加すると考えられますが その辺りは良く分かりませんね。
- 温度 25 [℃]
- 相対湿度 50 [%]
- 絶対湿度 0.00986 [kg/kg-DA]
- 露点温度 13.86 [℃]
- 冷却後温度 0 [℃]
- 絶対湿度 0.00376 [kg/kg-DA]
- 結露水量 6.1 [g/ka-DA]
もちろん、例えば乾燥機からの排気であれば 配管・ダクト通過中の温度降下は十分推定可能ですし、ダクト出口の温度が分かれば凝縮水量はきちんと推定可能だと思います。ただ、ここでも少し問題があって ミストとなって空気と一緒に排気されるのか、それとも配管・ダクトの壁面に付着してしまうのかは良く分かりませんね。ミストの大きさによるのかなと。であれば、途中にミストエリミネータでも設置して積極的にミストを捕集すると言った方が良いのかも知れません。最善策は、露点温度は分かっている訳なんで その温度以下にならないようにガチガチに保温するとか、更にはスチームトレースなどで配管・ダクトを加熱してしまうと言った事も有りだと思います。まあ、どっちもお金が必要にはなってしまうんですけどね・・・。
まとめ
今回は湿度諸量と露点温度の計算例をご紹介しました。空調関係のエンジニアリングであれば 更に詳細に詰めていくのだと思います。まあ、ケミカルプラントであれば 冒頭で触れたように乾燥機出口空気が途中で結露してビショビショにならないように検証するとかでしょうか。製品の乾燥についても少しやった事がありますが、外気を取り込んでヒーターで加熱して熱風とし、その熱風と含水している被乾燥物を接触させて水分を蒸発させた後、熱風を排気し 固形物を排出する、と言った感じでしょうか。この過程を湿度図表上に描いてみたりしました。乾燥も奥が深くて結構難しかったですね。結局は実際の品物を乾燥機メーカーに持ち込んでパイロットスケールの乾燥機でテストして乾燥曲線を採取してとか。勤めていた韓国企業には日本のメーカーさんの乾燥機がいくつか有って、その縁でメーカーでのテストに立ち会った事もあります。まあ海外出張な訳ですが、帰国する訳でもあって少し不思議な感じでした。
参考文献
- 「化学装置 2018年11月号 プラントエンジニアリングメモ 第132回」工業通信
- 「空気線図の読み方・使い方」オーム社 1998年刊
- 「湿度と蒸発」 コロナ社 2000年刊
コメント
コメントを投稿