今回は、多管式熱交換器 Shell & Tube Heat Exchanger のシェル径についてご紹介します。多管式熱交換は円筒型の胴 Shell に多数の伝熱管 Tube を設置し、この伝熱管を介して プロセス流体とユーティリティ流体との間で熱交換を行います。プロセス流体を加熱するのあれば 加熱器 Heater となりますし、冷却するのであれば冷却器 Cooler となりますね。もちろん、相変化を伴う場合もありますし、そうなると 蒸発器 Evaporator と凝縮器 Condenser となります。蒸留塔に設置される蒸発器は 特に再沸器 Reboiler と呼ばれます。
この多管式熱交換器ですが、ケミカルプラントではごく一般的に使用されています。ある程度以上の伝熱面積を有する熱交換器であれば、ほぼ多管式になるかと思います。特殊な用途であれば、例えば プレート式やスパイラル式も有るにはありますけど。
で、多管式熱交換器で大事なのは、この本数の伝熱管であればシェル径はどれくらいになるのか? でしょうか。 まあ、大きな多管式熱交換器(伝熱面積 数百m2以上) であればエンジニアリング会社や熱交換器製作メーカーに発注します。であれば、データシートや図面などがきちんと作成されるので それらを見れば 詳細な仕様や各部寸法なども明記されています。ですが、パイロットプラントに設置するような比較的小規模の熱交換器であれば、自分で設計する事が大半だと思います。そのような場合、どれくらいのシェル径になるのかを計算する事が出来れば便利です。
多孔管式熱交換器
計算式を説明する前に、多管式熱交換器について復習しておきます。この熱交換器ですが、胴と伝熱管、そして前後のヘッドから構成されます。
多管式熱交換器 構造 Heat Exchanger Types
で、TEMA, Tubular Exchanger Manufacturer Association の分類を以下に転載しておきます。もう、これはケミカルエンジニアであればおなじみですね。組み合わせによっていろいろな型式がありますが、個人的には BEMとかBEUくらいしか見たことは無いですね。石油精製とか石油化学の分野ではいろいろとあるのかも知れませんが。
胴径 Shell Diameter
また、胴径ですが 以下に示すように比較的小さいものであれば鋼管を使いますが、大きくなれば 鋼板を巻いて胴とします。16B までは鋼管を使えますね。図には 内径 1,500[mm] まで描いてますが、まあ相当大きいですね。
伝熱管 Heat Transfer Tube
で、次は伝熱管ですが こちらも使うサイズが決まっています。以下の2種類が使われますが、これまでに見たデータシートや図面では 25.4 [mm] と 19.0[mm] がほとんどでした。 また、伝熱管の間隔 Pitch は管外径の1.25倍程度とします。なので、25.4[mm] では 32[mm] 、19.0[mm] では 25[mm] とします。管配列は下図に示すように三角配列若しくは四角配列とします。管束を機械的に洗浄するのであれば 四角配列としますが、まあ普通は三角配列でしょうか。
シェル径 計算式
計算例 伝熱管本数からシェル径を求める
以下の条件でシェル径を計算した結果を以下に示します。
- Tube OD 19.0, 25.4 [mm]
- Pass No. 1
- Tube Layout Square, Triangular
伝熱管 1200 [ - ] では、以下のシェル径となりました。シェル径の差異はそこそこ有りますね。
- 19.0 [mm] & Square Tube 1,200 [ - ] Shell ID 1,018 [mm]
- 19.0 [mm] & Triangular Tube 1,200 [ - ] Shell ID 951 [mm]
- 25.4 [mm] & Square Tube 1,200 [ - ] Shell ID 1,299 [mm]
- 25.4 [mm] & Triangular Tube 1,200 [ - ] Shell ID 1,212 [mm]
ですが、伝熱管は同じですが伝熱面積は異なります。19.0 [mm] の伝熱面積は 71.6 [m2] で、25.4 [mm] の伝熱面積は 95.8 [m2] となります。まあ、伝熱管 外径が異なるので当たり前ですが、これだと少し面白く無いので伝熱面積を 80 [m2] となるように伝熱管の本数を調節してみたのが、下段のグラフです。
- 19.0 [mm] & Square Tube 1,340 [ - ] Shell ID 1,074 [mm]
- 19.0 [mm] & Triangular Tube 1,340 [ - ] Shell ID 1,002 [mm]
- 25.4 [mm] & Square Tube 1,003 [ - ] Shell ID 1,192 [mm]
- 25.4 [mm] & Triangular Tube 1,003 [ - ] Shell ID 1,112 [mm]
計算例 シェル径から伝熱管 本数を求める
- 19.0 [mm] & Square Shell ID 1,018 [mm] Tube 1,155 [ - ]
- 19.0 [mm] & Triangular Shell ID 951 [mm] Tube 1,334 [ - ]
- 25.4 [mm] & Square Shell ID 1,299 [mm] Tube 695 [ - ]
- 25.4 [mm] & Triangular Shell ID 1,212 [mm] Tube 802 [ - ]
Tube Layout 例
まとめ
参考文献
- 「化学装置 プラントエンジニアリングメモ 第123回」 2018年1月号
- 「熱交換器設計ハンドブック」工学図書 1974年刊
- 「プロセス機器構造設計シリーズ1 熱交換器」丸善 1969年刊
- 「入門 化学プラント設計」培風館 1998年刊
Web site
- TEMA Frequently Asked Questions.pdf https://tema.org/
コメント
コメントを投稿