今回の投稿では、粉粒体を充填した固定層に気体・液体を流す時の圧力損失を計算してみます。粉体工学会の Web 版 粉体工学用語辞典には固定層について以下のように記載されています。
上記のような反応装置や分離装置に使う以外にも、ろ過操作においても同様の状況が見られますし、また 粉体 充填層に空気を通過させて比表面積相当径を求める事も出来ますね。
固定層 圧力損失 計算式
固定層 圧力損失計算式は以下のとおりです。化学工学関連や粉体工学 関連書籍に記載されている、Kozeny - Carman 式 (K-C式)、Ergun 式ですね。導出の過程も面白いんですが、ここでは割愛します。一応、Hagen - Poiseuille 式も記載しておきますがこの式が基本ですね。
これらの式を使う上での注意事項は、式② K-C 式は層流域でのみ使用可能です。一方、式③は 層流域でも乱流域でも どちらでも仕様可能です。
計算例 1. 充填層の圧力損失
- 円筒 内径 500 [mm]
- 円筒 充填高さ 1000 [mm]
- 球形充填物 外径 5 [mm]
- 充填層空隙率 0.37 [ - ]
- 流体 空気 25[℃]
計算例 2. 充填層通過 必要圧力
- 粉体重量 20 [g]
- 比表面積相当径 1 [μm]
- 粒子 真密度 2500 [kg/m3]
- 充填層 内径 70 [mm]
- 充填層 高さ 10 [mm]
- 流体 水 20 [℃]
- 通過流量 500 [mL]
必要な圧力を計算しその圧力を静水圧で与えるものとすると、充填層の上に水層をおけば良いとなります。静水圧は ρgh で得られるので、液高さ h が求められます。計算には K-C式を変形し、流速 u について解いた式④を使用します。また、比表面積相当径が与えられているので式⑤で比表面積 Sv を求めます。更に、空隙率 ε は式⑥ で求めます。
例えば、60 [min] で通水させるとすると、必要圧力は 5.71 [kPa] となり 液高さは 584 [mm] となります。まあ、この程度の圧力で OK と言う事ですね。水層の液高さを一定にしたいのであれば、水供給管とは別にオーバーフロー管と言うか逆U字管を設置して 上端部高さを調節してあげれば良いですね。
まとめ
今回は 粉体層の圧力損失についてご紹介しました。この手の技術検討は正直 あまりやった事は無いですが、確か バグフィルター ろ布表面の粉体層 圧力損失の計算をやった事があるような気がします。あまり突っ込んでやった訳では無いので詳細は忘れました・・・。また、CFD (数値流体解析) を実施した際に多孔質層の透過を取り扱う事があって、その際に見たマニュアルに Kozeny - Carman 式が記載されていましたね。パラメータを設定して云々だったような。まあ、実務では 乱流域も取り扱える Ergun式を適用すれば良いのかなと思いますね。層流項と乱流項とに分かれているので理解しやすいですしね。それと、高濃度空気輸送における圧力損失計算にも適用可能と有りました。空気輸送も粉体分野では良く出てくる事例ですね。製品ペレットの空気輸送についても、低濃度空気輸送では何回か検討した事があるので、また別の機会で取り上げたいと思います。
補足
冒頭の粉体工学用語事典の固定層の説明には、「最適な粒子径が存在する」との記述が有りました。粒子径が変わったら固定層の圧力損失はどうなるのかな?と思い計算してみました。ただし、実際に有る粉粒体で計算しようと考え、粉体技術ポケットブック巻末のデータを使用しました。具体的には、平均粒子径、粒子真密度 及び かさ密度が記載されているものを使用しました。で、以下のような結果です。空塔速度は 0.001 [m/sec] なので、まあ層流域ですね。
うーん、まあ当然と言えば当然なんでしょうが 粒子径が小さいと (=比表面積が大きい) と単位長さ当たりの圧力損失は増加します。だいぶバラついていますけどね。
粉体はかさ密度をとってみても緩めとか固めとか有りますし、加えて粒子径分布の影響もあるでしょうし なかなか一筋縄では行きませんね。
参考文献
- 「入門 粒子・粉体工学」 日刊工業新聞社 2002年刊
- 「粉体工学叢書 第7巻 粉体層の操作とシミュレーション」 日刊工業新聞社 2009年刊
- 「粉体技術ポケットブック」 工業調査会 1996年刊
Web Site
粉体工学用語辞典 「固定層, 固定床」http://www.sptj.jp/powderpedia/words/10714/
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