今回の投稿では、円管内流動における摩擦係数 friction factor について紹介します。流体輸送での配管圧力損失計算においては ファニングの式 Fanning eq. が使用されますが、式中には 摩擦係数 f が含まれています。この 摩擦係数ですが レイノルズ数と粗度の影響を受けて変化します。粗度については使用する配管材料によって大体決まっています。と言うか、自分で測るのも難しいので書籍等に記載されている値を使用するのが一般的です。一方、レイノルズ数ですが 平均流速、円管内径 に加えて、流体物性である 密度と粘度から決定されます。レイノルズ数さえ分かれば、様々な経験式を使って 摩擦係数値を算出可能です。ファニングの式中の摩擦係数 f を 4倍したのが 管摩擦係数 λ ですが、レイノルズ数とλとの関係を線図にしたのが有名な ムーディー線図 Moody Diagram ですね。1944年 L.F. Moody さんが Transaction ASME 66-8 に発表したとされています。
管摩擦係数 λ の方ですが、これは ダルシー・ワイズバッハの式 Darcy - Wisbech eq. に含まれています。式の出処が違うんですね。と言っても、言ってる事は同じなんで、基本 どっちを使っても同じ結果となります。ですが、ムーディー線図から λ を読み取って、ファニングの式の f に入れると おかしな結果になるので注意が必要です。まあ、はっきりとは分かりませんが 機械工学とかでは ダルシー・ワイズバッハの式を使うんでしょうか。化学工学では ファニングの式が多いようには感じますね。
摩擦係数とは?
摩擦係数 計算式
層流域では 式④ が使用され、乱流域では 平滑管であれば 簡単なブラジウス式などが使われ、粗面管であれば コールブルック式 式⑤が使われますね。式⑤にはレイノルズ数 Re と 粗度ε 、円管内径 d が含まれています。粗度を内径で割り算しているので、所謂 相対粗度となっていますね。
計算例
✔ 層流域、乱流域 平滑管
✔ 乱流域、粗面管
ムーディー線図
- 平滑管 0.0241
- 相対粗度 0.002 0.0288
まとめ
円管の摩擦係数について紹介しました。冷却水や気体輸送では摩擦係数の値が必要なんで毎回計算していましたね。ですが、高粘度のポリマー溶液だと完全に層流域なんで 摩擦係数このみの圧力損失計算式を使ってました。また、ごくまれにレイノルズ数が遷移域になることが有ったりして、どの値を使うか結構迷いましたね。まあ、大きめの値を使っておけば安全側の設計になるんで 良いんですけどね。
それにしても、摩擦係数は f で行きたいですね。λ でも良いんですが、ずっと f で使ってきたんで λ だとピンと来ないんですね オーダー感と言うか何と言うか。やはり "4" は残していたいですね、ちゃんと意味が有るので。
後、これまた余談ですが 大学の研究室では 粗面の摩擦係数を実測していました。テストセクションに水を流して テストピース前後の静圧差を取り出して 微差圧計で読み取ってました。で、水はドラム缶を半切りにした3メートルほど上のヘッドタンクから自然流下させてました。その時は、たまたま休憩していて何となくヘッドタンクを見てたんですが、グワッと表面張力で水面が盛り上がり、次に滝のように水が降ってきました。摩擦係数と聞くと いつもそのジャバーっと水が溢れ出すのを思い出しますね~。その後は研究室 総出で水を拭き取りましたよ。担当の学生は先生にすごく怒られてました・・・。後から聞くと 勢いよくヘッドタンクに水を供給していたらしいですが、液面位置が良く分からないんで バルブ開度を調節するのが遅れて溢れ出したとか。もちろん オーバーフロー配管は有ったんですが、あくまでもチョロチョロっと流すものなんで、そんなにデカい配管にはしていませんしね。その後は、空き缶か何かを使ったなんちゃってフロート式液面計を設置して、それを見ながら水を供給していたように記憶しています。まあ、でもちゃんと見てないと駄目ですよね。
参考文献
- 「配管技術ノート」 工業調査会 2004年
- 「技術資料 管路とダクトの流体抵抗 DVD-ROM版」 日本機械学会 2017年
web site
- 「化学工学資料のページ 伊東 章先生」 https://chemeng.web.fc2.com/
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