今回の投稿では 貯槽 通気量について取り上げます。ケミカルプラントではタンクやベッセルなどの液体貯槽設備が多数ありますね。タンクでもベッセルでも液の入りと出が有るわけですが、特に大気圧下での貯蔵タンクでは 液の入出によって外気との間に通気量が発生します。まあ、例えば貯水タンクでは内容液は水なので基本無害な訳ですから、無弁通気管 (ベント管) を設置しておけば良いですね。ですが、受入水量や払出水量に比較してベント管のサイズが小さすぎたりするとタンク内圧が上がりすぎたり、逆に下がり過ぎたります。タンクにも当然 設計圧力が有る訳で、それと比較して内圧が大きすぎたり小さすぎたりすると壊れます。なので、これくらいの容量のタンクでこれくらいの液量が出入りすれば、どの程度の通気量となるのかを予め計算しておく必要が有ります。と言っても、計算式も決まっているので それを使って通気量を求めます (JIS B8501-2013)。
貯槽 通気量 計算式
✔ 吐出 通気量
吐出通気量は、液受入による通気量 + 温度変化による通気量の和となります。更に、大気圧変化による通気量を加える事も出来ます。ただし、タンク内容液の引火点温度と内容積によって使用する式が下図のように異なります。
引火点温度 40 [℃] が境界になります。また、タンク内容積 3,200 [kL] が境界となります。また、通気量は 標準状態(0℃、1気圧) における流量 [Nm3/hr] となります。
引火点温度ですが、ガソリンだと -43[℃]、アセトンで -20[℃」、トルエンでは 4[℃] ですね。揮発性の高い溶剤だと引火点温度も低いですね。まあ蒸気圧が高いのでそうなりますけど。んでも、3,200 [kL] は 3,200 [m3] ですが だいぶデカいですね。原油タンクくらいでしょうか。内径 20[m] とすると 側壁高さは 10[m] ちょいとなりますね。
✔ 吸入 通気量
内容液を払出す場合の吸入通気量は以下のようになります。やはり引火点温度とタンク内容積によって使用する式が異なります。
通気量 計算例
以下の条件で通気量を計算してみます。この程度のタンク容量だと L/D は 1.5 くらいでも良いかと思いますけど、とりあえず 1.0 としています。また、内容液は 引火点温度の低い トルエンとしています。液 受入・払出 流量は タンク容量を 2時間で満タン・空っぽにする流量とします。
- タンク容量 5,10,50,100,500 [m3]
- L/D 比率 1.0
- タンク気相部 タンク容量の50%
- 内容液 トルエン 引火点温度 4[℃]
- 液 受入流量 タンク容量を2時間で満タンにする流量
- 液 払出流量 タンク容量を2時間で空っぽにする流量
通気量はこのように計算できるんですが、タンクの天板に通気管のノズルを設置します。その際、どの程度のノズルサイズになるのかをざっくりと計算してみました。ノズルの平均流速を与えると 必要通気面積が出るので ノズル内径が得られますね。今回は 平均流速 5 [m/sec] としています。平均流速を小さくするとノズルサイズが大きくなり過ぎますんで、この程度としています。
例えばタンク容量 100[m3] ではタンク内径 5[m] となりますが、ここに ノズルサイズ 100[mm] の通気管を設置しても まあ全く問題は無いですね。
ブリーザーバルブ
まあ、内容液がただの水とか排水とかの無害なものであれば 無弁通気管を設置するだけでOKですが。トルエンのような有機液体であれば ブリーザーバルブを設置して 所謂 ツーツーにはならないようにしますね。
うまく考えてあって、タンク内圧が設定圧以上になると 吐出通気をしますし、設定圧以下になると吸引通気が行なわれます。アトモス弁と呼ばれる事がありますが、Atmosphere から来てるのかなと。メーカーでは例えば 金子産業さんとかが有りますね。動作の様子は下図のようになります。このタイプでは、大気へ吐出して大気を吸引します。
一方、トルエンのような有機蒸気を大気に吐出する訳にはいかないので ベント配管を接続して最終的に除害装置に送ります。また、大気を吸引すると酸素による品質劣化が懸念されるので 窒素ガスを吸引するように 窒素配管を接続しておきます。と言うのが下図です。良く考えられてますね。
PRTR 排出量 算出
- タンク容量 500 [m3]
- タンク寸法 内径 10 [m]、側壁高 6.4 [m]
- 内容液 トルエン
- 年間平均外気温度差 5 [℃]
- 年間受入量 500, 1000, 1500, 2000 [m3]
まとめ
参考文献
- 「金子産業 通気装置総合カタログ」
- 「PRTR 排出量等算出マニュアル 第4.2 版 第Ⅲ部 資料編」 経産省・環境省
web site
- 金子産業 通気装置 https://kaneko.co.jp/product/ventilating/
- 失敗学会 https://www.shippai.org/shippai/html/index.php
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