今回の投稿では、湿式集塵装置の一つである ベンチュリスクラバ Venturi Scrubber について取り上げます。これまた粉体工学会の粉体工学用語辞典には以下のように記載されています。このブログでも集塵装置としてサイクロンとかを取り上げましたけど、サイクロンは乾式集塵装置ですね。まあ、水を噴霧するタイプも有ったりしますが。湿式集塵装置では、ガス中に液滴(ミスト)を含む場合や、高温ガスについても適用可能ですね。ついでに、有害ガスを吸収させる事も出来るんで エグいガスの処理には向いているのかなと。一方で、大量の排水が発生するので この排水の処理が必要となりますね。
【ベンチュリスクラバ Venturi Scrubber】
洗浄集塵装置の一形式である。管の一部を絞り気流を 40 ~ 100 m s-1 の高速に加速後,10˚ 前後の広がり角で元の管径に戻すことによって,圧力損失を回復させる構造は,ベンチュリー管と呼ばれ,流量測定などに使用されている。 ベンチュリースクラバーとはこの絞られた喉部に洗浄液をガス 1 m3 当たり 0.5 ~ 2 リットル注入する構造の集塵装置である。(以下続く)
粉体工学用語辞典
http://www.sptj.jp/powderpedia/words/12193/
ベンチュリスクラバ自体は、スロート部(縮小管)、ノズル部、拡大管部によって構成されます。まずスロート部によってダストを含むガスは加速されます。で、次のノズル部で洗浄水を注水します。洗浄水は高速ガスによって微細化された後、ダストと接触して捕集します。更にその後の拡大管でガス流速が減速され 後段の分離部によって洗浄水が分離されます。
構造が簡単なわりには性能が高く 1[μm] のダストも除去可能とされています。
下図 右側では転流型ミストセパレータの例を図示しています。ベンチュリスクラバ出口の気流は方向が変えられますが、ダストを含む水滴はそのまま下降して溜まり水に捕捉されます。こうして水滴が除去されたガスは 装置外に流出します。微細な水滴は念の為 ミストセパレータによって除去されます。ミストセパレータとしては 気液分離器でも紹介したワイヤメッシュタイプのものなどが適用可能ですね。ワイヤメッシュによって粗大化した水滴は重力によってポタポタと落下します。
ベンチュリスクラバ 計算式
参考文献に記載されている設計計算式は以下のとおりです。
式①は液ガス比 L でガス流量に対して どれくらいの液量が必要になるかを表しています。ダストが粗大粒子であれば L は小さくてすみますが、微細粒子とか難溶性ガスであれば L は大きくなります。つまり、必要水量は増加しますね。
式②はスロート部内径 計算式で、スロート部平均流速が 50~80 [m/sec] となるように決定します。
式③と④はノズル部に関する計算式です。ノズル部に液噴出孔を複数個 設置しますが、孔径は 1~6[mm] とし、かつ噴出流速は 小型では 5[m/sec]、大型では 10[m/sec] となるようにします。孔1個の断面積と流速がどちらも決まっていて液量も既に決まっているので、孔数が決定出来ます。孔から所定の流速で噴出させる為の背圧は 式③から計算します。
式⑤は 液滴径 計算式で、式⑥はベンチュラスクラバの圧力損失 計算式です。
計算例
以下に計算例を示します。処理するガス流量を変えていますが、以下の条件は固定しています。
- 液ガス比 1.2 [L/m3]
- スロート部流速 70 [m/sec]
- 液噴出孔 流速 5 [m/sec]
✔ 必要 液流量
液ガス比が一定なんでガス流量が増えると必要液量も増えますね。例えば、時間あたりガス量が 5,000 [m3] だと 必要液量は 6 [m3/hr] となります。まあ、これくらいの水量であればそんなに大した事は無いですね。と言っても、同じ量の排水がジャバジャバ 発生する訳なんで、後々の処理の事を考えると やはり大変ですよね。
✔ 各部寸法
ガス流量 1,000 ~ 10,000 [m3/hr] における ベンチュリスクラバ 各部寸法は下図のようになります。こうしてみると処理量の割にはそんなに大きくないんだな~と言う印象です。以前サイクロンのサイジングについてもご紹介しましたが、処理量は 30 [m3/min] で胴部内径は 500 [mm] くらいでした。時間当たり処理量で言えば 1800 [m3/hr] なんでサイクロンの方が大きいんだなと。まあ、ベンチュリスクラバの方は捕集媒体として液を使っているので その効果で小さめになるのかなと。サイクロンは大きめとなりますが、乾式なんで本体が有れば、他には必要なものは無いので その点はメリットですね。
✔ 分散液滴径、圧力損失、液噴出孔
ガス中に分散される液滴径ですが、今回条件では100 [μm] くらいですね。また、圧力損失ですが 3.6 [kPa] となります。どちらも、液ガス比が一定でスロート部流速も一定なんで 計算上は変化しません。まあ、圧力損失値が同じであっても 流量が増加していれば その分 動力は増加します。となると ブロワはそれなりに大きなものを設置する必要が有りますね。また、液噴出孔ですが 径は 2.9 [mm] で 個数は 液流量によりますが 10~100 [ - ] となります。
- 分散液滴径 97.1 [μm]
- 圧力損失 3.60 [kPa]
- 孔径✕個数 2.9 [mm] ✕ 10~100 [ - ]
まとめ
まあ、ベンチュリスクラバの計算自体は実務ではやった事は無いです・・・。ですが、集塵装置を検討する際には いろいろと調べたことが有りますね。性能はそれなりに良いんですが、湿式なんで液供給系とか排水処理系とかが必要になるんで、「やっぱ 大変だね~」って感じで見送りましたね。ダストだけで無く有害成分を含む汚れたガスの処理には、ベンチュリスクラバ一択になるのかな~とは思いますけど。
参考文献
- 「化学装置 プラントエンジニアリングメモ 第158回」 2022年 8月号
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