もう少しポリマー関連の内容について取り上げますが、今回は ポリマーの押出 Polymer Extrusion です。単軸押出機によって射出成形 Injection Molding に用いたり、二軸などの多軸押出機によって混練 Compounding を行ったりしますね。まあ、ポリマー関連ではありますが 成形加工などの分野に近いですね。とは言っても、ポリマープロセスの一番最後に 押出機が有って、そこで添加剤を混練したりとかはまあ普通に有りますね。また、脱揮装置として二軸押出機を用いたりする場合も有りますね。
ここでは、単軸押出機 Single Screw Extruder における吐出流量を計算してみます。こんな仕様でこれくらいの回転数だと、ダイからの吐出量はこれくらいだよって事ですね。
で、スクリューの各部名称とサイズは下図のような感じですね。
まずは、バレルがあってこれが最も外側にあります。その内側にあるのがスクリューですが、円筒の外側にフライトがらせん状に設置されています。バレルとフライトとスクリューシャフトによってフライトチャネル(溝部) が構成されています。このフライトチャネルにポリマーが充填されている訳ですが、スクリューがグルグル回転すると その動きによってフライトチャネル部に溜まっているポリマーが動くわけですね。
単軸押出機 吐出流量 計算式
スクリュー吐出量の計算式ですが、まずは スクリューによる引きずり流れによる流量が有ります。また、通常は スクリュー吐出方向の終端にダイス部(絞り) が有って、そこで圧力が上がって逆流が起こります。この逆流によって 流量が減殺されます。フライトチャネル部の逆流量とバレルとフライトとのクリアランス部の逆流量の2つがあり、両方を考慮します。まあ、ダイス部が無いと 圧が立たず逆流も無いので引きずり流れ流量のみとなります。んでも、ダイス部が無いスクリューってのは普通は無いですよね。
以下は「化学工学便覧 第6版」に記載されている計算式です。 右辺第1項が引きずり流れ、第2項が圧力によるフライトチャネル部の逆流、そして第3項がクリアランス部の逆流を表わしています。第2・3項は流量を減らす方向に働くので 符号はマイナスですね。そして、各項は 圧力勾配 (dp/dz) を含んでいます。Z は、らせん状になっているフライトチャネル部の長さです。フライト部のらせん角から計算されますね。んで、らせん角自体は フライト部のピッチとスクリュー外径から計算されます。ピッチは、フライトが一周する際の軸方向の距離ですね。スクリュー外径が同じで、ピッチが小さいと フライトの間隔が狭くなります。ネジで言えばネジ山のギザギザがすごーく密に並んでいる感じですね。
んで、ダイ(ダイス) ですが ここでは簡単にする為、円管1本のみとします。高粘度ですから流れは層流ですので、流量と圧力損失との関係は式⑥となりますね。
吐出量 計算例
✔ 計算条件
スクリューの仕様は以下のとおりとします。まあ、だいぶ小さめですね。ラボスケールと言うか、パイロットスケールでしょうか。
- バレル内径 30 [mm]
- チャネル深さ 5 [mm]
- チャネル幅 28.2 [mm]
- クリアランス 2 [mm]
- スクリュー外径 26 [mm]
- スクリュー長 300 [mm]
- フライトピッチ 30 [mm]
- フライト厚み 3 [mm]
- フライトらせん角 19.75[° ]
ダイの仕様は以下のとおりです。
- ダイ 孔径 5~30 [mm]
- ダイ 孔長 100 [mm]
ポリマー物性と運転条件は以下のとおりです。
- ポリマー密度 800 [kg/m3]
- ポリマー粘度 1,000 [Pa s]
- スクリュー回転数 300 [rpm]
✔ 性能曲線
で、計算結果は以下のようになりました。まずは、性能曲線ですね。参考文献には、スクリュー特性線とダイ特性線との交点が運転ポイントになると記載されてあります。
上段のグラフで、青の実線がスクリュー特性であり、オレンジの実線がダイ特性です。スクリュー特性は右下がりの線となりますね。スクリュー終端で圧力が無い場合、最大流量となります。そして、圧力が高くなるのに伴い 逆流が増えてくるので 流量は減少しますね。一方、ダイ特性はと言うと流量が増えると圧力は増加します。まあ、圧力損失が増えるのでこうなりますね。で、両者の交点が運転ポイントとなります。ダイ孔径 15[mm] では、圧力 1.486 [MPa] 、流量 53.16 [kg/hr] となりました。
で、下段のグラフですが ダイ孔径を変えて 流量と圧力をプロットした結果です。孔径が大きくなると圧力損失は減少しますから、流量は増加します。一方、孔径が小さくなると圧力損失が増加しますし、流量は低下します。値の大きさはアレですが、傾向としてはこんな感じなのかなと。さて、この性能曲線ですが、スクリューをポンプとして捉えてみれば、まあ当然このような取り扱いが可能なんですね。
✔ スクリュー仕様の影響
せっかくなんで、スクリューのフライトチャネル部を深くして計算した結果を以下に示します。ポリマーが充填される溝部分が深くなる訳なんで吐出量は増えますね。と同時に圧も高くなりますね。まあ、流量が増えるんで圧力損失も増加する為ですね。
まとめ
今回はポリマー押出として、単軸押出機の吐出量を計算してみました。まあ、押出機仕様を検討するって事は実務では、まず無かったですね。さすがに餅は餅屋ですね、特殊機器ですし。とは言え、この単軸押出機と言うかスクリュー吐出量 計算式を別の用途で使ってました。これまた ポリマー反応器なんですが、満液状態で使用するタイプが有りまして、そのインペラがスクリューなんですね。ドラフトチューブ付きスクリュー Screw with Draft Tube となります。スクリューだけだと流れが周りに逃げてしまうので、ドラフトチューブ(円筒形) の中にスクリューを設置してグルグル回転させます。そうすると、強力な吐出量が発生して槽内を循環するってな感じですね。
押出機だと相当な高粘度液を扱いますが、このタイプのインペラは比較的に低粘度液に適用します。さすがに高粘度液では回せないです・・・。まあ、低粘度といっても 数 [Pa s] なんで有機液体の数千倍の粘度では有るんですが。インペラ仕様は下図のような感じなんですが、押出機と比べるとシャフトが細いと言うかフライトチャネル部が相当深いですね。流量を稼ぐためにこのような仕様としています。
模擬液を使ったモデル実験もやりましたし、CFDで解析したりもしましたね~。ただ、まあ用途が限定的ですし どんな反応器にも使えるって訳では無いですね。個人的には結構好きでは有るんですけど。仕様の検討もアレコレしましたしね。
余談ですが、粉モノを扱う機器としてスクリューフィーダーが有りますね。形はそのままスクリューですね。粉モノでは逆流とか無いので計算式もすごく単純です。ただ、粉によって充満率が異なるので、その辺りは注意が必要ですね。
参考文献
- 「化学工学便覧 第6版」 丸善 1999年刊
- 「化学工学便覧 第4版」 丸善 1978年刊
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