前回の投稿では 撹拌槽伝熱を取り上げましたけど、乱流域 における内装伝熱面 外面での熱伝達係数を計算してみました。で、乱流を取り上げておいて層流を取り上げない訳には行きませんよね。なので、今回は 層流域 における槽壁面における熱伝達係数を計算してみます。層流なので相当程度に液粘度は高いですね。
まあ、層流域なので適用するインペラは アンカー Anchor 若しくは ダブルヘリカルリボン Double Helical Ribbon , DHR となりますね。そこまで粘度が高くなければ ワイドパドルタイプである 住友重機械工業 マックスブレンド Maxblend、神鋼環境ソリューション フルゾーン Fullzone なども適用可能かなと。ですが、今回は アンカーと DHR に絞って計算してみます。設計実務でもこれらについてはやりましたしね。
両者の特徴ですが、図で分かるようにデカい事ですね。パドルインペラのようにブレードがこじんまりしてる訳では無くて、槽内に大きく広がっています。なので、大型翼とか言いますね。大きく広がってるので、当然 ブレードと槽壁との距離は狭いです。なので、 Close - Clearance タイプと呼ばれたりもしますね。まあ、このような配置と言うか作りにしないと高粘度液はなかなか流動してくれない為ですね。
熱伝達係数 計算式 HTC Estimation Equations
✔ アンカー Anchor
化学工学便覧 第6版や撹拌関連書籍には 以下の アンカーインペラ 熱伝達係数 計算式が記載されています。見た感じは一般的な伝熱の計算式ですね。ただし、レイノルズ数は撹拌レイノルズ数なのでインペラ径と回転数を用いますね。一方、プラントル数は物性のみから決まりますね。このタイプのインペラだとクリアランス (槽壁とインペラとの隙間) が重要ですが、この計算式には含まれていませんね。で、引用されている文献を辿ってみると 村上 康弘先生の書籍でした。たまたま手元にあったので見てみると、d/D = 0.95 としていますね。まあ、量産スケールでは もう少しクリアランスが小さめになるように d/D ~ 0.97 くらいにはするかなと。d/D は インペラ径 d と槽径 D との比率で、0.95 であれば 槽径の 95% がインペラ径となります。 1.00 だとインペラが槽壁に接触しますね。まあ、掻き取りタイプの撹拌機も有るには有りますが、結構特殊ですね。
✔ ダブルヘリカルリボン DHR
DHR 計算式は2種類 取り上げておきます。式④は 栗山先生の文献に記載されているもので、槽径やインペラ径、リボンピッチやクリアランスが含まれていますね。また、FH は非ニュートン流体に関する項目で、指数則モデルにおけるべき数 n が含まれていますね。n=1 であれば 普通のニュートン流体となりますが、FH = 1 となりますね。
式⑦は Shamlou らの式ですが撹拌レイノルズ数によって定数値が変わりますね。
計算例 example
✔ 撹拌槽・インペラ仕様 Vessel & Impeller spec.
撹拌槽の仕様ですが、前回と同じにしてみます。前回に作成した図が転用出来ますし・・・。また、インペラはアンカーとDHR とします。
まずはアンカーですが、こんな感じです。正面から見ると確かに大型ですが、真横から見ると薄っぺらいブレードがあるだけですね。薄いと言ってもそれなりの厚みはありますけど。
次はダブルヘリカルリボン DHR ですがこんな感じですね。ピッチは少し小さくしています。なので、リボンを詰め込んだ感じが有りますね。
✔ 計算条件 Conditions
- 液密度 936 [kg/m3]
- 液粘度 326 [Pa s]
- 液比熱 2.073 [kJ/kg K]
- 液熱伝導率 0.136 [W/m K]
✔ アンカー 熱伝達係数 Anchor HTC
✔ DHR 熱伝達係数 DHR HTC
✔ アンカーとDHR Compare Anchor & DHR
まとめ Wrap-Up
参考文献 Literature
- 「化学工学便覧 第6版」 丸善 1999年刊
- 「化学工学の進歩 42 最新 ミキシング技術の基礎と応用」 三恵社 2008年刊
- 「重合反応装置の基礎と応用」 培風館 1976年刊
- "Mechanism of Heat Transfer to Pseudoplastic Fluids in An Agitated Tank with Helical Ribbon Impeller "
Kuriyama et al, Journal of Chemical Engineering of Japan Vol.16 No.6 1983
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