化工計算ツール No.53 ケミカルプラントにおける配管 Piping in Chemical Plant

 前回は Global Top 50 2022 についてご紹介しましたが、今回は通常進行に戻します。が、また少し視点を変えて プロセスよりはプラントの方に目を向けてみたいと思います。まずは、ケミカルプラントにおける配管について取り上げます。「プラント配管」と呼ばれるのが一般的でしょうか。手元にある配管関連の書籍を見てみると「配管」とは、「必要な機能を満たすように設計・製作・据え付けられた流体を輸送する管路」とあります。まあ、流体では液体と気体となりますが、加えて 粉粒体などの固体の場合もありますね。

配管設計自体は「詳細設計」に属するので、そこまでのめり込んでやった訳では無いですね。とは言っても、新設プラントではもちろんですが、既設プラントの改造や能力増強においては配管 圧力損失を計算します。ですが、配管の実長やエレベーション、また 継ぎ手・弁の種別・数量が必要となります。P&ID を調べれば継ぎ手や弁の数量は拾えますが、配管長やどれくらい上がったり下がったりするのかは分かりません。なので、アイソメトリック図を当たりますね。略して「アイソ」と言いますが分厚いハードファイルをめくったりしてましたね~。と、ケミカルプラントでは配管を避けては通れませんので、配管についての知識がどうしても必要となりますね。

そんな訳で、それほど詳しくは有りませんが、プラント配管に関する項目についていくつか取り上げてご紹介します。まあ、どうしてもポリマー絡みにはなってしまうんですけど・・・。






配管コンポーネント

参考書籍によれば、配管を構成するコンポーネント(要素) は以下のようにリストアップされています。機器周りの配管であれば下図 上段のような感じでしょうか。パイプハンガーとかで吊って支持していますね。また、機器間の配管ですと、例えばタンクヤードからプロセスヤードまでだと結構距離が有るので、パイプラックが設置されてそこにパイプが載っかりますね。まあ、パイプラック自体は建屋とか構造物の部類に入るのかなとは思いますけど。


  • 管       継ぎ目管、継ぎ目無し管
  • 継ぎ手     エルボ、ティー、フランジ等
  • 弁       仕切弁、グローブ弁、アングル弁 等
  • スペシャルティ ストレーナー、スチームトラップ 等
  • 支持装置    リジッドハンガー、バリアブルハンガー 等
  • 伸縮管継ぎ手  ベローズ、フレキシブルチューブ
  • 計装品     流量計、温度計、圧力計




管  Pipe

まずは管ですが、普通は鋼管ですね。材質では炭素鋼 Carbon Steel とステンレス鋼 Stainless Steel が一般的でしょうか。腐食性の高い流体であれば高級素材を使う場合もあるかと思います。また、酸をあつかうのであれば樹脂製(PE) を使う場合も有りますね。

で、配管サイズですが 呼び径で言いますね。A系では ミリメートルの外径を切りの良い数字に丸めて A を付けて 「25A」と言いますね。B系では 切りの良い インチに丸めて B を付けて 「2B」とか言いますね。同じ呼び径であれば外径は同じなんですが、厚みは耐圧によって違いますね。ここで使われるのが スケジュール Sch. No ですね。この Sch.No方式ですが、1938年 ASA (現 ANSI) によって制定されたとの事です。まあ、管厚みを標準化したんですね。

JIS規格のステンレス鋼配管の呼び径と内径、呼び径と管厚みとの関係をグラフにしてみると以下のようになります。スケジュール一定で呼び径を大きくすると管厚みは大きくなりますね。また、この厚みですが グラフ中に記載している式で計算してみる事も出来ます。下段グラフの破線は Sch. 80 についての厚み計算結果です。見てみると、計算結果より少し厚めにしてあるんですね。まあ、なんか有ったら困りますし、どうしても保守的な決定になるんでしょうね。と、参考書籍には書いてありますね。






継手 Joint, Fitting

配管はルートに決められているように製作して据付ますが、管と管をつなげるのに使う継手 Joint と、管を曲げたり分岐・合流したり管サイズを変えたりする為に使う管継手 Fitting があります。まあ、あまり意識せずに ざっくりと継手という事が多いかなと思いますね。

継手と言うか接合の方式としては、溶接式、フランジ式、ねじ込み式、ユニオンなどがありますが、塩ビ配管であれば接着式となりますね。また、管継手としてはエルボ、ティー、レジューサー (同心・偏心)、キャップなどが有りますね。温度計や圧力計などの座として使われるボスもありますね。

まあ、継手に関する情報は書籍で調べる事も出来ますし、ネットから詳細情報を入手可能なんですよね。とは言え、実務でも図面作成などで使う場面も多かったんで、ひな形を作っておいて それを転記して使ってました。ネットでもフランジとかエルボとかの図面を DWG フォーマットでアップされているサイトなども有り、たまにお世話になってましたね。
あと、取り扱ったなかで一つ特殊な継手が有って、それは Tongue & Groove 式です。絶対漏れてほしくない場合に使われるのかなと。図にあるように、Tongue 凸部と Groove 凹部があって ガスケットを挟んで六角ボルトでグイーっと締結します。しかしまあ 良く考えられていますよね。下図の場合は更に熱媒用のフルジャケットを施工しています。




弁  Valve


一般的に使われるのは仕切弁、玉形弁、ボール弁、バタフライ弁、逆止弁とかでしょうか。少し特殊になると安全弁とか。これまた書籍とかネットに情報が沢山ありますので、取り扱ったなかでも特殊なポリマーバルブについてご紹介します。

反応器のボトムとかに設置するポリマーバルブですが、型式としてはピストンバルブ Piston Valve とかラムバルブ Ram Valve になるかなと。バルブを開くとピストン部が流路から外れてフルボア Full Bore となります。フルボアですが、ボールバルブのように配管内径とバルブ流路 内径がほぼ同じになるタイプですね。少しでもデッドスペースとかが無いように工夫してあるんですね。

例えばタンクとか反応器のボトムに直結するポリマーバルブであれば、イメージとして以下のようになりますね。ボトムには パッドフランジ Pad Flange を設置してそこにバルブのフランジを組み付けます。で、組み付けた際にピストンの面(つら)がタンクボトムの面にピッタリと合うようにすればツライチとなりバッチリですね。んで、ハンドルを回してピストンを下げると流路が出来ますので内液が出てきます。下図の場合は構造上 排出口は斜めになりますね。このタイプだとバルブを閉めている時はバルブ内にデッドスペースが出来ないので良いですね。




「下流にある機器フランジとの取り合いがあるんでやっぱり真っ直ぐ下に出したい!」 のであれば例えば下図のようになりますね。ピストンの方を斜めにして流路は出来るだけ真っ直ぐにします。とは言え、まーっすぐって訳には行かず、多少屈曲した流路になりますね。それと、前述のタイプとは違ってバルブを閉めている時にもバルブ内に液が溜まってます。なので、劣化したりとかが懸念されますね。構造上 避けられないんですけどね。このタイプは、実務でも何回か検討した事が有って、圧力損失がどれくらいか?とか、屈曲している事によってどれくらいデッドスペースが出来るかなどを計算しましたね。まあ、圧力損失については直管として考えれば問題は無いですね。また、デッドスペースについてはピストンの面の形状を少し斜めにしたりして溜まりが少なくなるようにしましたね。どれくらい効果が有ったのかは正直不明ですが、この手の特殊バルブだと一旦設置すると10年以上も更新しないので、出来るだけの事はしますよね。この図だとスケールが分かりませんけど、量産プラントだとポリマーバルブが人間ぐらいの大きさくらいになりますね・・・。そこに更に保温材を施工してカバーを被せるので、パッと見何じゃこりゃって感じですよ。液粘度がものすごく高ければその分流速を下げる必要が有りますので、結果的に断面積 即ち内径が大きくなってしまうんですね。





まとめ

うーん、やっぱり配管技術については あまり計算して云々ってのが無いのでパッとしないですね。知識としては必要ですが、規格として決まっているものなので、それを引っ張ってきて使うって感じでしょうか。ゴリゴリの配管技術者であれば強度計算とか熱応力計算とのウンチクが沢山有るんでしょうけど、基本設計とかプロセスよりの計算がメインだったので・・・。まあ、言い訳なんですが。んでも、だからこそ 配管関連の書籍とかは結構購入しましたね。管や継手の規格がズラリと載っているポケットブック的なものとか。ネット全盛の時代では有るんですが、何でもかんでも有るわけでも無いですし、玉石混淆なんでしょうし。となると、きちんと発行された書籍を頼る事になるのかなと。ANSI/ASME の規格もネットで購入出来ますが、それなりのお値段がしますので 個人でおいそれとは買えませんよね。

冒頭で述べたアイソ図についても理屈じゃないんですよね。とにかく、P&IDの配管番号を拾って、それに合致するスプール図をハードファイルから探し出して、その記載内容に基づいてCADで自分用アイソ図を作り直してって作業を延々と繰り返してました。まあ、詳細設計をやったエンジ会社には 配管CAD図面が有って、それを見ればすぐには分かるんでしょうけど。そういうのはなかなか出してくれないのかなと、今はどうなのか知りませんけど。んじゃ、現場に行って実物を見ればって話も無い訳では無いですが、それは最後の手段ですね。現場に行ってもポリマープラントだと大抵は保温材を施工してあるんで、どの配管がどのラインなのか分かりません。ユーティリティーとかであればむき出しですが、それでも複雑に入り組んでいるんで追っかけるのは至難の業ですね。古いプラントでドキュメントとか資料が全く無いのであれば、しょうがなくやりますけどね。

エンジニアリングとか詳細設計とかも 昨今の DX化の波でだいぶデジタル化はされているんでしょうけど、どうなんですかね~。AI とかが導入されて、「このポンプからこのタンクまでのアイソ図を出して!」とか指示すれば、パッと出てくるようになるのかなと。つか、圧力損失計算して 能力増強後の最適配管サイズを決定する、なんて事もやってくれるようになるのかなと。となると、ケミカルエンジニアは要らなくなるのかなと・・・。


こっからは余談ですが、配管との関わりは大学の研究室からでしょうか。伝熱工学の研究室だったので、自分で配管を繋いでました。最初は先生から教えて貰ったりしてですが。その配管ですが、継手類はねじ込み式なんですね。例えば、こっちのタンクからそっちのポンプまで配管で繋ぐ場合、良さげなサイズの配管を選んで、レイアウトを考えて適切な長さに切り出します。ねじ込みなんで配管端部にはネジを切ります。んで、曲がりであればエルボをねじ込みます。この時、漏れ防止の為にテフロンのシールテープを巻きますね。で、どんどん繋げていきますけど、最後に回せなくなりますね。なので、どっか適当な箇所にユニオンを使います。そうすると、こっちの配管部分とそっちの配管部分をパカッとねじ込みでは無くて繋げる事が出来ます。このユニオンですが、パッキンを忘れないようにします。ずっと使っているとヘタってくるんで、その時は黒ゴムのシートから切り出して使ってましたね。

で、配管の切り出しとかネジ部の加工には、パイプ旋盤とかパイプマシンと呼ばれる機械を使います。水道屋さんが使うやつですよね。このパイプマシンも研究室に自前のが有ったんですね (因みにパイプバイスやパイプレンチも普通に有り)。慣れるとまあ割りかしチャチャッと出来ますね。パイプマシンですが昔の記憶を頼りにネットで調べてみると、東海鉄工所のパイセット パンダ でした! マシンの形がパンダっぽいからかなと。 んで、「この部分の配管はパンダで作りますか?」とか言ってましたね。また、ねじ部にはシールテープを巻きますが、巻き方向が有って「締まり勝手」にしないとねじ込む際にグジャーっと緩んで来ます。最初は何回も失敗してゴミ箱に捨ててたんですが、「誰だーこんなにシールテープ 食ったやつは~!」と先生にどやされていました・・・。まあ何と言っても素人なんで水漏れは 結構頻繁に有りましたけど、まあ研究室あるあるですね。



参考文献

  1. 「はじめての配管技術」 工業調査会 2006年刊
  2. 「絵とき 配管技術基礎のきそ」 日刊工業新聞社 2012年刊
  3. 「プラント配管ポケットブック 第6版」 日刊工業新聞社 2002年刊
  4. 「配管材料ポケットブック 第6版」 工業調査会 2006年刊


ウェブサイト

  1. アスカ工業株式会社 
    https://www.bb-aska.co.jp/indexJ.html






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