化工計算ツール No.55 プラントレイアウトと建造物・構造物 Plant Layout & Buildings, Structures

 前回は電気計装について取り上げました。で、懲りずにプラント関係の話題として レイアウトとかエレベーション、建造物や構造物について投稿します。まあ、この分野は詳細設計のなかの土木建築とかの範疇だと思いますが、何でも屋だったのでプラントレイアウトやプロットプランなどを作ってましたね。素人考えでは有りますけど、いろいろと考えるのは面白かったですね。反応器はここに置くよりも、そっちの方が良いかなとか。とは言っても、体系的にやってた訳でも無いので、実務で経験した内容を トピックス的にご紹介しようかと。


韓国に居た頃は、全くの更地から徐々にプラントが出来上がっていく様子が見られたので すごく興味深かったですね。まずは、地面をならしてパイルを打ち込みますね。その後は基礎工事が行なわれて、更にその上にストラクチャー(鉄骨)が組み上がっていきますね。この時がすごーくウルサイですね。鉄骨同士はボルト締結ですが、電動かなんかのレンチでナットを締め付けるのにダダダダダダッとものすごい騒音がします。プラント規模にもよりますが、複数箇所で同時にこの作業をするので、まあ当然かなと。その次に、機器・装置類が据え付けられますね。そうこうしていると配管工事が始まります。プレファブした配管スプールを現地で組み立てますが、この時も 壮観ですね。開先加工のグラインダーがガーガー言ってますし、溶接のスパークが光ってますんで ウルサイ上に直視は出来ませんね。と、それを追っかけるように電計工事も始まりますね。これまたアチコチでケーブルを引っ張ったり、取り回したりしてる光景が見られます。ここまで行けば大体プラントの体裁は整った感じでしょうかね~。






プラントレイアウトとプロットプラン  Plant Layout , Plot Plan 

レイアウトとプロットとの違いは何か?と聞かれても、良く分かりませんね。まあ、アレですけど ヨソの化工関連ブログを拝察すると、レイアウトは広義の配置図であり、より詳細で厳密な 客先に提出するようなものはプロットプランと言うのだとか。そうなんですね~。まあ、どちらも配置図とかになるんでしょうけど。

で、参考書籍を見てみると以下のようになってますね。


✔ 化学プラント建設便覧

第8章 プラントレイアウト となってますね。以下の2つが挙げられています。

  • 工場全体配置 Overall Layout 各製造系統と付帯設備を含めた配置
  • 系統内機器配置 Unit Layout 一区画内の機器配置

前者は原料受入・製品出荷設備やユーティリティー設備、製造設備、計器室や事務所など、とにかくそのプラントの一切合切を含むものになりますね。また、後者は各製造系統の反応器とか熱交換器とかベッセルなどの配置ですね。まあ、小規模のプラントであれば 1系統で1プラントなんでしょうけど、大規模プラントともなると 5系統 1プラントとかになるんでしょうね。


✔ 入門化学プラント設計

こちらは 3.2 プロットプランになってますね。

で、「プロットプランとはプラント全体を構成する各プロセスユニットのレイアウト、あるいは各プロセスユニットの中の装置個々のレイアウトを意味しており、いわゆる設備や装置の配置図である」と有りますね。で、一応 2種類に分けてありますが ここではレイアウトになってます。あまり、厳密では無いのかな~と。

  • 設備群のレイアウト 
  • 各装置のレイアウト Unit Plot Plan

で、両方の書籍を参考にして 更に図にしてみるとこんな感じかなと。上の図はプラント全体の配置図ですね。タンクヤードがあってプロセスエリア、ユーティリティーエリアが有り、増設用の空き地も確保してあります。また、大抵は端っこと言うか正門に近い場所にオフィスが有りますね。保全部門の建屋とか試験用実験室なども必要ですね。大きなプラントだと自衛消防隊の建屋も必要かと。

また、下の図はプロセスエリア内の配置ですね。小規模だとまあズラッと並べる感じですね(a)。規模が大きくなってくるとメンテナンス時のエリアを考慮して、その分 空けておきます (b),(c) 。んで、ポンプをフロア下側に設置して、立体的な配置にすると 同じ敷地面積でもより多くの機器を詰め込めますね (d)。ただし、複数フロアとすると その分高くなるので費用が増えますね。と、参考書籍には書いてました。まあ、そうなりますね。図中のバツ部分は空地ですね。例えば、デカい熱交換器のバンドルを引き抜くのに必要なエリアとかですね。そういうのを予め織り込んで置かないと、いざと言う時にエッこれじゃ出来ないじゃんとなる訳ですね。

でも、普通 プロセスエリアは複数フロアになりますね。ズラーッと平たく配置するのも良いですが、距離が長くなり過ぎますよね。そうすると敷地面積が増えるので、あまり支障の無い範囲で積み上げる感じでしょうか。4階くらいまでは 一般的かなと。んでも、プラントの階高は普通の家とかよりは 高いので、行ったり来たりすると正直シンドいですね。





プロットプラン 例

プロットプランについて実例を見てみます。まあ、体系的にアレコレと言うする事も出来ませんので。この プロットプランですが 平面図と側面図が有りますね。両方描いてみて 機器の建て込み具合と言うか 空間的な配置をチェックしますね。



✔ Unit Plot Plan  Process Area 

まずは、プロセスエリアのみのプロットプランを描きますね。描き方もいろいろ有るんでしょうけど、下図のような感じでしょうか。この時点で 例えば反応器と言った主要な機器のサイズは概略であっても把握しておく必要がありますね。さすがにそうじゃないとレイアウト云々は出来ませんので。んでもって、こんな配置にしようかなと並べていきますね。下図の例では機器数も少ないし こんな感じですね。ただ、上下の階でうまく取り合いを考えないといけない場合もありますね。このプラントの場合だと2Fにあるメインの機器に3Fの機器から重力で落とします。なんで、そんなに離して設置する事は出来ませんね。これが粉ものであれば尚更 近場に設置する必要が有りますね (配管傾斜角が安息角よりも大とする)。そんなところがレイアウトの難しいと言うか厄介なところです。PFDとか P&ID ではエイッと配管が繋げてありますが、実際はそう簡単じゃないって事ですよね。なので、いろいろとエンジニアとしてやってる上で 図面を引けるようにならないと、この辺りを検討出来ませんよね。必要に迫られてってのが正直なところですが、まあ性に合ってあると言うのか結構 楽しんでやってましたね。







✔ Overall Plot Plan

で、プロセスエリアのプロットプランが大体出来上がれば、次にプラント全体のプロットプランを描いてみますね。と言うのが下図ですね。プロセスエリアとは違って、例えばタンクヤードでは複数階にはならないので 平たく設置してきますね。ユーティリティーエリアなどもそうですね。なので、プロセスエリアとは違って比較的楽ちんですね。とは言っても、下図を見て分かるようにタンクヤードとかユーティリティーエリアの方がよっぽど敷地面積が大きいですよね。まあ、使う原料の種類とかにもよりますけど、どうしてもこんな感じになるのかなと。これは、もっと上流側の事情に左右される部分もありますよね。

例えば、このプラントがより上位の製造所の一部であれば、原料やユーティリティーを製造所から融通してもらう事が、場合によっては可能ですね。であれば、原料タンクの容量もその日に使う分だけ貯蔵出来る デイリータンクとすれば コンパクトになるでしょうし、敷地面積も多少は削減出来ますね。と言ったところを色々と検討するのが実はものすごく面倒くさいですね。

ケミカルエンジニアの究極の夢は、何の束縛も無く 自分の好きなように設計してレイアウト出来るプロジェクトに参加したいって事ですよね~。





建屋 例

ケミカルプラントの機器・装置類は多くは 露天で設置しますね。機器とか計装品とかは少々の雨風では何ともないですね、防爆構造になってますし。まあ、さすがに水没してはマズいとは思いますけど。んでも、架台・ストラクチャーを建屋の中に建て込むと言うか、建屋で囲んでしまう場合ってのも無い訳では無いですね。

パイロットプラントとかは小規模なんで、建屋内に設置される場合が多いように思いますね。小さいので建屋自体もそこまで大きくはなりませんね。また、パイロットならではの理由としては、放熱の影響が大きいので少しでも外気や風の影響を除外したい場合ですね。機器類も小さいですし、配管も細いので 体積当たりの表面積比率 (A/V) が大きいです。となると、風がビュービュー吹き付ける様な状態だと、思わぬ箇所の温度が下がって固化・閉塞すると言ったトラブルが発生します。溶融状態で添加する添加剤とかはヤバいですね。
また、ヨソから見えないようにするってのも有りますね。パイロット設置場所が工場敷地の端っことかであれば、敷地外から見ようと思えば見えますよね。パイロットは研究開発用設備でしょうから、あまりヨソから丸見えってのはよろしくは無いですよね。

量産プラントで敢えて建屋で囲うってのは、コンタミを嫌う場合でしょうか。ファインケミカルとか粉体製品では外気中の粉塵などが混入するとそれだけでアウトでしょうから、建屋で全部囲ったりしますね。ポリマープラントでも最後のペレタイザーだけは建屋内にありますね。さすがにホコリが混入した状態で出荷してしまえば クレームとなりますね。で、ここでまた問題が有って、例えば粉体製造プラントでは作業者を粉体に暴露させないように、局所排気設備を設置します。フードとかで室内空気を排気しますね。となると、室内は減圧になるので当然 どっかの開口部から外気がそのまま流入します。
で、これはあまり良くは無いですね。なので、吸気用開口部を作っておいて 簡単なフィルターを設置するような事をしますね。で、この開口部ですがタダの四角形の穴だと雨水が侵入しますね。なので、「ガラリ」と言う構造になってますね。斜めの板がズラリと並んでるもので、ここに雨が降っても雨水は上から下へ滴り落ちるので室内には侵入しませんね。

建屋ですが、例えば下図のような感じでしょうか。
このような建屋ですが一応鉄骨を組んであって、屋根はトラス構造とかでしょうか。また、屋根とか外壁はスレート葺きですね。年季の入った建屋だとところどころ割れたりしてましたね。今だったら外壁はサンドイッチパネルとかにするんでしょうか。また、危険物とかを扱うので、漏れた油とかが建屋外に流出しないように、出入口にはバンプ(土手)みたいにコンクリを盛り上げたりしてましたね。若しくは、外壁のちょい内側にグルリと側溝を巡らせるとかでしょうか。





普段人が出入りするドアを複数箇所に設置しますね。また、デカい機器類とか搬入・搬出出来るように 鉄扉を複数箇所に設置しますね。更に、裏の方とかにはこれまたデカいスライド扉を設置したりしますね。サイズは電動フォークリフトが出入り出来るくらいにするのが大事ですね。パイロットプラントとは言え、ドラム缶とかを何本も運んだり、パレットに原材料とか製品ペレットの紙袋を積み上げて運んだりしますしね。ハンドリフターでも良いですけど、シンドいですね。後、内部に照明設備は有りますが 採光用窓を付けたり、屋上換気扇(自然式) とか避雷針とかを設置するんでしょうかね。

このような建屋の中に架台(ストラクチャー) が有って、そこに機器類が設置されてますね。パイロットプラントなんで あまり階数は無いですね、と言いながら 4階ってのも有りましたね。結構天井に近いんで、熱気が集まってきて夏はクソ暑いです。まあ、こんなところで作業してましたね~。ポリマーのパイロットプラントだったので高温の熱媒体油がアチコチの配管を循環しているんで、夏はものすごく暑かったですね。普通に40度 とかありますね。ボイラーの近くや熱媒配管が混み合っている場所だったりすると、50度くらいになってたんでしょうか。まあ、そんな暑熱環境で反応器のバラシとか組み立て作業をやってましたが、昔なので熱中症と言う言葉も無く 当然対策も何も無いですね。今にして思えば、誰もぶっ倒れなかったのが不思議です。


まとめ

とまあ、雑駁な内容となりましたが 専門家では無いのでご勘弁下さい。専門家では無いと言いながら 技術検討をしてましたね。この手のレイアウトとかプロットプランは 目で見てパッと分かるんで、アレコレ 外野がウルサイですね。「ここはもっと下げたほうが作業しやすいんじゃないか?」とか。まあ、なるほどね~と言う意見も有るんですが、そうじゃ無い意見も有って、その度に描き直したりするんで大変ですね。まあ、もちろん手書きでは無いので修正自体はすぐ出来るんですけど。言われる度に修正していると終わらないと言うか・・・。

とは言え、プラントは一回作ってしまうとまず変える事は無いのでレイアウトは重要ですね。反応器とか熱交換器といった単体機器であれば更新する事も可能ですが、ストラクチャーとか建屋自体を変えるとなると結構大変です。と言うか、まずしませんね。多少の模様替えはするでしょうけど。なので、アレコレ 事前に検討する事が重要となる訳ですね。

余談ですが、韓国に居た際はプラント建設工事も結構有りまして、工事の途中経過とかを見る機会も滅多に無いので、お昼休みとかにちょこちょこと見に行ってましたね。例えば、蒸留塔下部は下図のようにスカート構造になってますが、そこでおじさんが昼寝してる時が有りますね、割と。ちょうど日陰になるんですね。マンウェイが有るので 割と風通しも良いのかなと。なので、あちこち歩き回るときは なるべく足音を立てないように気をつけてましたね。それで、「あっ、寝てる」と思ったらそこは避けて通ってましたね。

また、昼飯時になると出入りの業者さんごとに集まって飯食ってましたね~。ケータリングみたいのを頼んだりしてたんかなと。日本だったら各自持参とかコンビニ弁当とかになるんでしょうけど。ワイワイ言いながらガツガツと食ってました。もちろん、キムチは必須で食い放題です!! で、食ったらお昼寝タイムなんですね。どっか日陰に行って自分の好きな場所でごろ寝する感じなんですね。日本だったら勝手にそこら辺で寝るな!とか言われそうですが、そんな事は無いんですね。ここら辺が大らかで良いですよね。 で、昼寝場所の一つが、上記の蒸留塔スカートなんですよね~。ちょうどスペースが一人分くらいなんですよ。カプセルホテルみたいな感じなんですかね。あるおっちゃんは、ポンプ周りの低めの防液堤のコンクリを利用して、何か上着みたいのを被せて うまい感じに枕代わりにして昼寝してました。最初のうちは、 パッと見ると「えっ、行き倒れなのか?」と思いましたけど、慣れると 「ああ、 またか」ぐらいに感じてましたね。







参考文献

  1. 「入門化学プラント設計」 培風館 1998年刊
  2. 「化学プラント設計便覧」 丸善 1992年刊




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