化工計算ツール No.56 横型ドラムの液量と液面 Liquid Hold-Up vs Level Height in Horizontal Vessel

 今回は普通の化工計算、と言っても まあ良くある横型ドラムの液容量について取り上げます。縦型ドラムも横型ドラムもケミカルプラントでは良く見かけますね。極めて一般的な機器です。例えば、蒸留塔頂の凝縮液 還流槽とかは大抵 横型ですね。まあ、縦型にするとレイアウトしにくいのかなと。還流液は重力で流下させるのであれば尚更ですね。

ちょっと変わったところでは、横型ドラムの中心にシャフトを通して、そこにブレードを設置して回転させて撹拌します。まあ、ピストンフロー型反応器ですね。んじゃ縦型でも良いのでは?と思えますが、潜熱除去方式で除熱するのであれば上部は気相部にする必要が有りますね。まあ、横型でも敢えて満タン状態にして内部に伝熱管をグルグル巻きにしたものを設置するとかも有りますね(顕熱除去方式)。 スチレン系樹脂の反応器ではどっちの方式も有りますね。潜熱除去方式だと気相部が有りますし、それなりの内圧がかかりますんで 円筒シェルの前後は鏡板とし、例えば ED (2:1 半楕円) としますね。

そんな場合、液量から液面高さを求める必要が出てきますね。 若しくは 液面高さから液量を求めるとか。まあ、No.54 電気計装の投稿で取り上げた様に、ロードセルで重さを量ってしまえば解決するんですが・・・。と言っても、ある滞留液量のときに液面がどれくらいになるのかを知っておくのは重要ですね。シャフト貫通部のシール性能とかに影響してくると思うので。

と言う訳で、円筒シェル前後に鏡板を設置した場合の液量と液面高さの関係について計算してみます。下図のような感じですね。






計算式   calculation equations

「化学装置 Process Engineering Memo」に記載されている計算式は以下のとおりです。円筒形状のシェルと両端のヘッドを分けて計算します。シェル全容積は式①でヘッド全容積は式③で計算されます。満タンにすれば全容積に等しくなりますね。で、空っぽであれば当然ゼロです。その中間状態において、液面高さと液容積がどんな関係にあるのかが分かればいいですね。因みに、ヘッド全容積はヘッドタイプで変わりますね。式④の k を式③で使いますが、これが変わります。2:1半楕円 EDであれば k= 0.25、10%皿型 SD であれば k=0.189 となります。半球だと k = 0.5 となりますが、あまり使われないですね。

で、液面高さと液容積との関係ですが、円筒状シェルについては式⑤がその関係となります。式中の t = H/D はシェル内径に対する液面高さの比率ですね。また、α はシェル容積比率です。α は 0 から 1 までの値となりますが、 1 であれば満タン状態であり、0 であれば空っぽの状態です。液面高さ比率も容積比率もどちらも無次元なので、シェル内径とかシェル長さの大小に関係無く、式⑤で計算出来ると言う事ですね。一方、ヘッドについても式⑥によって容積比率が計算されます。

ドラム全容積は式⑦で計算され、液面高さが 0 と ドラム内径との間に有る場合の液容積は式⑧で計算されます。式⑨は 全容積に対する液容積の比率を計算する式です。最後に式⑩ですが、これは簡便式であって円筒状シェルのみを考慮した計算式です。




計算例 example


✔ ドラム内径・長さ比率 固定 & 液高さ比率を変えた場合  L/D = const. & H/D = change

以下の条件で計算してみます。ドラム内径 0.5[m] とドラム長さ 1.5[m] は固定して、液面高さ比率 H/D を変化させてみます。式①から⑨まで使って計算してみると、下図のような結果になりますよね。グラフ中のオレンジ色の実線は簡便式⑩で計算した結果ですが、まあ そこそこ合ってますね。まあ、それはさもありなんで、下段のグラフを見ると分かりますね。この計算例では L/D = 3 で細長いと言えば細長いですね。なので、全容積に対するヘッド容積の比率が小さいんですね。




この計算例のドラムと液量を図に描いてみるとこんな感じですね。L/D =3 だと結構細長いですね、やはり。






✔ 液面高さ比率固定で ドラム内径・長さ比率を変化させた場合  H/D=const. & L/D=change

次に液面高さ比率は固定して、ドラム内径と長さとの比率 L/D を変化させてみます。内径 D は同じです。同じ様に簡便式との結果とも比較してみます。

結果を見てみると、簡便式との差異はそれほど大きくは無いですね。数パーセント程度であればざっくりとして計算には使用出来るのかなと。それと式⑩の良いところは簡単なところですね。液面高さ比率 t から容積比率 Vratio を得る事は勿論 可能ですし、式を変形すれば 容積比率 Vratio から液面高さ比率 t を得ることも出来ますね。いろいろとケーススタディしたい場合には簡単な式の方がお手軽ですね。



こちらも図にしてみました。さすがに L/D=0.5 であれば寸詰まりな感じは受けますね。L/D = 10 になると相当に細長い感じですね。





まとめ  Wrap-Up


まあ、この手のドラム容量 計算について紹介しているサイトはそれこそ鬼のように有りますが、どんな感じだったかな~と言うのを思い出す意味合いでも今回取り上げました。手元には無いですが、韓国に居た際にはこの辺りの計算ファイルをいろいろと作って使ってましたね。ファイルは基本 エクセルなので、一度作っておけばコピペして活用出来るので便利ですね。

勿論、横型ドラム容量と液面高さをチャチャッと計算する場合も有りましたけど、冒頭でも触れたように反応器などの横型装置の液面位置を知りたい場合なんかにも使ってましたね。まあ、そんなに機会は無かったと思いますけど。粉とかであっても使えますよね。横型の乾燥装置とかに粉体を投入して撹拌しつつ乾燥する場合、これくらいの量だと粉体はここまで来るかな~、とかですね。なんですが、インペラで撹拌したりするので実際どうなっているかを把握するのは難しいですね。あくまでも、インペラが止まっている時の静止粉体面の高さが得られる感じでしょうか。







参考文献

  1. 「化学装置 2020年 4月号 プラントエンジニアリングメモ 第147回」 工業通信 







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