さて今回は 液液分散 Liquid - Liquid Dispersion について取り上げます。まあ、異相系の撹拌操作ですね。油相と水相を入れてインペラで撹拌すると、どちらかが分散相 即ち 分散液滴となります。それは当たり前なんですが、その時の分散液滴径がどの程度の大きさなのか?を知りたい訳ですね。で、この液液分散ですが 適用例としては 例えば抽出操作が挙げられますね。抽出を促進する為には界面積を増加させるのが得策ですが、微細な液滴を生成させれば良いですね。また、異相系重合様式として懸濁重合がありますが、水相にモノマー相を懸濁させますね。この場合、撹拌してモノマー液滴を生成させますが、ここでも液滴径がどれくらいになるのかを知る必要がありますね。
撹拌操作の中でも異相系撹拌はなかなか取り扱いが難しいですね。例えば、懸濁重合とかであれば まずはパイロットスケールの反応器で試作してみれば良いですね。で、良さげな製品物性となれば量産反応器に持っていきますが、スケールアップ が必要となりますね。となると、やはり良さげな実験式と言うか推算式をこしらえておく方が賢明ですね。で、その雛形ともなるような相関式が研究者によって提案されてるんですね。今回はそれらの相関式を使って、撹拌槽 回分操作での液滴径を計算してみます。
相分散 限界回転数 Critical Rotation Speed of Phase Dispersion
平均液滴径を計算する前に、まずは相分散 限界回転数を見ておく必要があります。
溶解しない密度差の有る二液をそのままにしておくと当然ですが分離しますね。水と油であれば上層が油となり、下層が水となります。で、ゆっくりと撹拌しただけでは 液流によって上層が引き込まれる事は出来ませんね。で、どんどんインペラ回転数を上げていくと ブワーッと油層が液中に引き込まれて分散されるようになります。で、未分散な油層が全く無くなった状態を完全分散状態と言い、この時の回転数を限界回転数とします。液液分散操作においては、この限界回転数以上の回転数で撹拌する必要があります。
✔ 限界回転数 計算式
以下のとおりですね。式中の定数 C と α については使用するインペラタイプによって異なります。また、液中のインペラ位置によっても変化しますね。
✔ 計算結果
- 水密度 1,000 [kg/m3]
- 水粘度 0.89 [m Pa s]
- トルエン密度 870 [kg/m3]
- トルエン粘度 0.61 [m Pa s]
- 界面張力 0.034 [N/m]
平均液滴径 Average Droplet Diameter
✔ 平均液滴径 相関式
✔ 計算例
で、前述の 水 - トルエン系で 分散相体積比率 Φ = 0.1 の条件で計算してみると以下のようになりますね。ウェーバー数に対して無次元液滴径をプロットすると 両対数グラフでは直線となりますね。ウェーバー数の マイナス 0.6乗なので、傾きはどれも同じですね。
実際の液滴径ですが、回転数 160 ~ 500 [rpm] だと数百 [μm] くらいですね。撹拌槽による液液分散ではこれくらいが限界なのかな~と思いますね。因みに、下図の一番下はΦ150 [mm] のインペラと 500、200、100 [μm] の液滴を同じ縮尺で描いたものです。これを見ると、これはこれで すご~く小さくはなってるんだなと言うのが分かりますね。
✔ スケールアップ
で、同じ水-トルエン系で、 撹拌槽の内径をスケールアップした場合の必要な回転数について計算してみました。使用した相関式は Calderbank によるものです。そして、結果ですが スケールアップすると回転数は減少しますね。インペラ径が大きくなりますので。まあ、実際にはこんなにうまくは行かないと思いますけど、この程度に下がるんだな~と言う目安にはなりますね。
このスケールアップですが、投稿 No.22 撹拌槽のスケールアップ でも取り上げてますね。そこで取り上げたスケールアップ則の一つに 単位体積当たりの動力一定 Pv=const. と言う条件があります。この条件を使ってみても全く同じ結果になりますね。と言う事は 液滴径相関式である式⑥は Pv=const. と言う条件に基づいているとなりますね。
まとめ Wrap - Up
参考文献・書籍
- 「化学工学の進歩34 ミキシング技術」 槇書店 2000年刊
- 「化学工学の進歩42 ミキシング技術の基礎と応用」 三恵社 2008年刊
- 「改訂6版 化学工学便覧」 丸善 1999年刊
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