今回は金網の圧力損失について取り上げます。ずっと以前にも取り上げていますが、その時は空気とか水などの低粘度流体を通過させた場合の圧力損失を計算しました。因みに、当ブログで最も多く閲覧されている投稿ですね。 化工計算ツール No.6 金網の圧力損失
で、今回は金網をポリマーフィルターとして使った場合の圧力損失を計算してみます。さて、流体としてのポリマーですが、空気や水とは違う点は 「非ニュートン流体」Non-Newtonian Fluid である事ですね。要は、せん断速度によって粘度値が変化するんですね。なので、その辺りを考慮する必要があります。
流体の流動特性ですが、参考書籍では下図のように分類されていますね。まず、理想流体 Ideal Fluid ですが、下図では横軸に一致します。せん断速度に対してせん断応力がゼロ、即ち 粘度がゼロなんですね。あくまでも仮想的な流体ですね。で、実際の流体では粘度がありますが ニュートン流体 Newton Fluid ではせん断応力は直線状に増加します。つまり、粘度はせん断速度に依らず一定です。そして、ポリマーなどの 非ニュートン流体 Non - Newton Fluid では、下図に示すようにせん断応力は頭打ちとなります。と言う事は、せん断速度の増加に伴って 粘度は低下するって事ですね。それ以外には、塑性体 Plastic Body はせん断速度を加えても変形はしますが流動はせず、あるせん断応力以上で流動するというものです。また、弾性体については全く変形しない理想弾性体 Ideal Elastic Solid が考えられ、これは下図の縦軸に相当します。実在弾性体は多少は変形するので垂直に近い直線で表わされます。
圧力損失 計算式 Pressure Drop Calculation Equations
参考文献・書籍に記載されている圧力損失計算式は以下のとおりです。平織りの金網が有って、そこに高粘度のポリマーを流します。金網の仕様は下図のとおりですね。この金網がフィルター断面に設置されています。
式①から⑤は理論式ですが、圧力損失自体は式⑤で計算されます。で、見てみると n が含まれていますが、これは 指数法則 粘度式 ⑪ のインデックス値 n ですね。更に、式⑤には金網 目開き部 通過速度 u が含まれていますが、これは別途 式⑦で得られますね。と、諸々の式を整理すると最終的に式⑨と⑩が得られるので、この両式で圧力損失値が計算出来ますね。
金網仕様としては、メッシュ数とワイヤ径が必要となります。運転条件としては質量流量が必要です。ポリマー物性としては密度が必要となります。そして肝心の基準粘度値とその時の基準せん断速度値 及び インデックス値が必要ですね。まあ、これだけで計算出来るので 面倒では無いですね。
計算例 Examples
✔ 計算条件 Conditions
- ポリマー質量流量 57 [kg/hr]
- ポリマー密度 960 [kg/m3]
- 標準粘度 936.5 [Pa s]
- 標準せん断速度 100 [1/sec]
- インデックス 0.469 [ - ]
- フィルター径 20 [mm]
✔ 圧力損失 計算結果 Pressure Drop Results
計算結果は下図のようになりました。これらの金網が全部重なって設置されていると全圧力損失は 36 [MPa] にもなりますね。まあ、有り得ない数値では無いですけども。ギヤポンプとかは高圧仕様になりますね、多分。
で、今回の計算式では ドカンと一発で圧力損失値が得られますが、途中の経過が今ひとつ不明ですね。金網 目開き1個当たりの流量とか流速は式⑥と⑦で計算出来ますが。目開きにおけるせん断速度とか粘度は出てこないですね。ですが、目開きにおける流速が分かるのであればせん断速度も計算出来ますし、せん断速度が分かれば見かけ粘度も計算出来ますね。そのようにして計算したのが、下図の method 2 の結果です。んで、method 1 が前述の式⑨と⑩による結果です。
まあ、ほぼ同じ値ですね。method 2 の方が1割ほど小さくなりますけど。んで、method 2 であれば 目開きにおけるせん断速度と粘度も計算出来ますんで、その結果が下図の下段グラフです。せん断速度は結構デカイんですね。そして、見かけ粘度は標準粘度よりもこれまた大幅に低下していますね。この結果を見ると、せん断速度の影響を全く考慮しないと ものすご~く大きな圧力損失値になり、非現実的ですね。
まとめ Wrap-Up
実務においても溶融ポリマーのフィルターとかスクリーンといった装置の圧力損失を計算しましたね。で、当然ですが せん断速度 vs 粘度のデータが無いと計算出来ませんね。そして、今回取り上げた計算式では無く いちいち計算する手法 (method 2) を使ってましたけど。と言うのも粘度式が指数法則では無くて別のタイプだったからですね。良く使っていたのが Klein's equation でしたね。せん断速度と温度の両方が含まれていますけど、実測データを持ってきて EXCEL のソルバー機能を使って定数値の値を決定してました。下図にあるように 6定数式となりますが、せん断速度についての定数項、温度についての定数項 そして 両者についての定数項となっています。下図のグラフに例を載せましたけど、まあ結構うまい具合に実測値を近似出来るので重宝してましたね。
参考書籍・文献 References
- 「パソコンでできる高分子加工のシミュレーション解析(7)」
プラスチックス 第50巻 第5号 1999年 - "Design and Operation of Screen Pack"
Polymer Engineering and Science Vol.18 No.5 1978 - 「演習 水力学」 森北出版 1981年刊
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