化工計算ツール No.79 コイル アレコレ Coil a la carte

 今回はコイル Coil について取り上げます。まあ、コイルって言っても、ある曲率を有している配管ですよね。で、1周と言うか1巻だけではあまり用をなさないのでグルグル巻きにしますが、まあ螺旋状にする訳ですよね。で、そこに高温の熱媒体油を流せばプロセス流体を加熱できますし、冷却水を流せば冷却出来ますよね。ケミカルプラントにおいても、例えば 撹拌槽とか貯蔵タンクの内部に伝熱コイルとかを設置しますね。

実務においてもコイル仕様を決めたりしましたが、大抵が伝熱用途でしたね。んで、伝熱面積がどの程度なのかを計算するのが重要ですよね。その為には、コイル仕様から全長を求める必要がありますね。とまあ、そんな訳でコイルについていくつか計算してみます。


※ 2024年4月から「身のまわりの化学工学」は別ラベルで投稿する事にしました。なんで、「化工計算ツール」の投稿 No. が変わっています。まあ、見ている人もほとんど居ないので影響は無いと思いますけど・・・。



コイル長 計算式  Coil Length Calculation Equations 


✔ コイル仕様 Coil Specifications


コイルの仕様ですが、以下の項目でしょうか。大きく分けると管そのものの仕様と巻きの仕様ですね。まあ、図を見れば分かりますね。重要なのは、管外径 d0 と巻径 D そして 巻ピッチ p でしょうか。巻ピッチはコイル 1巻きの高さですね。それと、巻高さ H ですが、ピッチ p と巻数 N を掛け算すると得られますね。逆に 巻高さが決まっているのであれば ピッチで割り算すれば、巻数が得られます。 また、螺旋角ですが コイルの傾斜角度ですね。管は螺旋状ですんで、平面的な角度とは異なりますね。例えば、下図で 螺旋角 θ は得られますが 実際の螺旋角は もっと浅いですね。で、これがコイル全長 L を求める際に重要となります。


  • 管外径  Pipe OD ,do
  • 管肉厚  thickness ,th.
  • 管内径  Pipe ID    ,di

  • 巻径   Coil Diameter  ,D
  • 巻ピッチ Pitch  ,p
  • 巻高さ  Coil Height ,H
  • 巻数   Coil Turns , N
  • 螺旋角  Coil Angle , θ





まあ、管仕様については規格で決まっているので適切なものを選択すれば良いですね。細い管としては、例えば銅管とかステンレスチューブとかでしょうか。太い管であれば普通の配管用鋼管を使いますが螺旋状にするには曲げ加工とかするのかと思いますけど、その辺りは良く分かりませんね。


✔ 計算式  Calculation Equations 

で、コイル全長の計算式ですが以下のとおりです。なんでそうなるのかってのは 下図を見ると分かります。イメージとしては長方形の紙にまず対角線を引きます。そして、その紙をグルっと巻きますね。そうすると、紙に描いた線は螺旋状になります。紙筒の高さがコイルのピッチに相当し、紙筒の径はコイルの巻径に相当します。と言う事は、長方形の対角線の長さが1ピッチ分のコイル長となりますね。

螺旋角は どの三角関数でも表わせますが、式③" であればピッチと径だけで出せますね。まあ、斜辺長について 三平方の定理で求めるって事も出来ますね。で、ピッチ当たりのコイル長が分かれば、その値に巻数を掛け算すればコイル全長 L が得られます。式⑥でも良いんですが、式⑦のほうが見てくれが良いですね。




計算例  Examples

んじゃま、早速計算してみます。最終的にはコイルの全長とか外表面積を求めるのが目的となりますね。


✔ ステンレス チューブ  Stainless Tube

外径 Φ1/4 inch 即ち 6.35 [mm] のステンレスチューブを巻径 100[mm] 、巻高さ 1000 [mm] で巻いてみます。ピッチを変えると全長と外表面積は下図のように変化しますね。下図下段はピッチ 14[mm] の場合ですが、チューブ間の隙間は外径よりも大きいで少しスカスカの感じですね。コイル全長は 22.8[m] も有りますが、外表面積は 0.455 [m2] とそれほどでも無いですね。まあ、機器としては小規模なトラップとかでしょうか。コイル内部にはブラインとかを通水して、真空系 排気中のベーパーを叩き落とす用途とか。





✔ 配管コイル  Piping Coil


次は、ステンレス配管をコイルにしてみます。貯蔵タンクにおいて、内液を一定温度に維持する為に加熱/冷却コイルを設置したりしますね。1インチ配管 外径 33.4[mm] を 巻径 3000 [mm] 、巻高 1000 [mm] で巻いてみます。まあ、さすがにこのスケールで巻くと全長もそれなりになりますね。外表面積も 12.4 [m2] となります。

仮にタンク内径が 5000 [mm] で液面高も 5000 [mm] だと液容積は 98.17 [m3] となりますが、外表面積 = 伝熱面積とすると 単位体積当たりの伝熱面積 A/V は 0.126 [m2/m3] となりますね。液温維持用途であればこの程度でも良いのかな~と。例えば加熱用途として用いるのであれば、タンク内液から外気への時間あたり放熱量をきちんと見積もって、その上でコイル伝熱面積を決定しますね。その場合、主な熱抵抗はコイル外表面における液相熱伝達なので、ジワーッと自然対流させるのでは無くて ポンプでタンク循環を実施してコイル外表面の温度境界層を薄くするような事が必要なのかなと思います。と、そんな事も実務でやってました。それと、コイル配管の間隔はそれなりに確保するようにしてましたね。あまりに間隔が狭いと液の流れが悪くなるのかな~と思って。まあ、配管外径と同じくらいの間隔があればOKかなと。





まとめ Wrap-Up

今回はコイルについて全長と外表面積について計算してみました。コイルの傾きについてもきちんと考慮していますが、よほど螺旋角がきつく無いのであれば、1ピッチの長さを単なる円周としても問題は無いですね。となると、単純に 全長 = コイル円周 × 巻数 となります。 上記の場合だと、全長 117,809 [mm] となるので 前述の結果 117,814 [mm] とほとんど同じですね。螺旋角も 0.486 [°  ] と小さいので当然ですけど。 「な~んだ」って感じですが、実際のコイルは螺旋状になっている訳ですんで、まあ一応は見ておいたほうが良いですよね。と言うか、きちんと見ておきたいです!

なんで、こんな事をするようになったかと言うと 撹拌で用いるダブルヘリカルリボン インペラは 巻径とピッチが同じくらいなんですね。となると、螺旋角も結構 きつくなります。で、動力計算にはインペラ外周の長さが必要になったりするんですね、場合によっては。それで、前述の式⑦を文献で見つけて、「おっ、これは螺旋状 コイル全長の計算にも使えるな~」と思ったんですね。

で、このコイルですが 何かとお目にかかる事も多かったですね。例えば、真空系のコールドトラップとかには ステンコイルが何重にも巻かれて設置して有ったりとか。で、運転条件が高真空だったりするとコイル内部にブラインとかを通液するのでは無く、フレオンなどの冷媒の直噴きとなりますね。また、タンクコイルなどもいくつか見ましたね。ただ、タンクコイルは螺旋状コイルよりもジグザク式にする場合の方が多いのかなと(下図 参照)。もちろん、螺旋状にしても良いんですが、配管の曲げ加工をする必要が有りますよね。その点、ジグザク式だと直管と継ぎ手 (エルボ) を溶接でどんどん接続していけば良いので多少は楽チンかなと。そして、同じ螺旋状でも蚊取り線香みたいにはほぼ確実にしないですね。曲率が全部違うので製作するのがすごく大変ですよね。 で、どうしてもガンガン加熱したいとか冷却したいのであれば、タンク循環ラインに外部熱交換器を設置しますけどね・・・。そっちの方が確実ですし、後で取り替えるとかも出来ますしね。




参考書籍  References

  1. 「2次元数値解析に基づく層流域の撹拌所要動力相関式の誘導」
    化学工学論文集 第20巻 第5号 1994年







コメント