今回は球の抗力係数について取り上げます。例えば、粒子・液滴の沈降速度などの計算に使います。ですが、球直径基準のレイノルズ数によって領域分けした近似式などを使います。ストークス・アレン・ニュートンの抵抗則です。んでもって、流体力学のテキストなどにはレイノルズ数に対して抗力係数をプロットしたグラフってのは、確実に載っていて こんな感じなんだな~ってのは分かりますが、実際の数値が載っている書籍は少ないです。で、化学工学便覧 第4版には載ってました。なので、その辺りに触れつつ 終末沈降速度の計算法についても取り上げてみようかなと。
それぞれの抵抗則は 式③~⑥ で表わされます。式自体はそれほどには複雑では無いです。で、そもそもの抗力係数値と比較してみると、Stokes 域 と Newton 域の一部では まあ一致しています。ですが、Stokes 域と Allen 域の境界では だいぶ差異が有りますね。また、Odor 式だと レイノルズ数 1000 までは結構良好に合致しています。1000以上だとアレですけど。で、Morrison 式ですが こちらは広い領域でバッチリ一致してますね。式は複雑ですけど。とまあこんな感じなんですが、抵抗則の式を用いて終末沈降速度の式を導出するにおいては、抵抗則自体は出来るだけシンプルな方が良いですね。
そして 基本中の基本である球形粒子の終末沈降速度 (略して終末速度) ですが、次のようになりますね。式⑦は静止流体中にある粒子が重力によって沈降する場合の運動方程式です。粒子に作用する重力、浮力 及び 沈降時の抵抗力により粒子の速度変化が決まりますね。で、この式で定常状態を仮定すると左辺=0 となりますので整理すると 定常状態時の沈降速度として 式⑧が得られます。で、この式には抗力係数 C が含まれているので前述の各領域における抵抗則の式を代入すると、目出度く終末沈降速度式が得られます。
実際には諸条件を与えて沈降速度を計算しますが、式が3つ有るので面倒ですね。粒子レイノルズ数によって使い分ける必要が有ります。なので、まずは Stokes 領域の式⑨を用いて 沈降速度 u を求めてみます。次にその得られた沈降速度を使って 粒子レイノルズ数を計算してみます。その粒子レイノルズ数が Stokes領域であれば OK ですが、そうでは無い場合には Allen 領域の式⑩を使って同じ様に計算してみます。それで 粒子レイノルズ数が Allen領域であれば OK となりますが、それでも駄目な場合には Newton領域の式⑪を使う事になります。まあ、試行錯誤が必要になるという事ですね。実際の計算は EXCELでやるにしても ちょいとばかし面倒くさいです。特にズラーッと何回も計算したい場合にはアレですね・・・。
次に同じ 水滴 - 空気の組み合わせで 終末速度を与えてその時の粒子径を求めてみると下図の様になりますね。例えば、終末速度を 2 [m/sec] にするには水滴は 0.604 [mm] とする必要が有ります、って事がサクッと計算出来るんですね。う~ん、これは便利ですね。
それと、ミシガン工科大学の Morrison さん、有用な近似式を作成して頂いてありがとうございます!
Also, thank you to Mr. Morrison of Michigan Technological University for creating useful approximation equation!
球の抗力係数 Drag Coefficient of Sphere
✔ レイノルズ数 対 抗力係数 Reynolds Number vs Drag Coefficient
さて、その抗力係数ですがレイノルズ数に対してプロットすると下図となります。化学工学便覧 第4版に記載されている数値をプロットしています(◯)。そして、併せて描いているのが Stokes、Allen 及び Newton の抵抗則による計算結果です。ついでに、Odor 式の結果も併せて描いています。そして更についでに ミシガン工科大学の Faith A. Morrison さんが公表している近似式による計算結果も併せて描いています。
それぞれの抵抗則は 式③~⑥ で表わされます。式自体はそれほどには複雑では無いです。で、そもそもの抗力係数値と比較してみると、Stokes 域 と Newton 域の一部では まあ一致しています。ですが、Stokes 域と Allen 域の境界では だいぶ差異が有りますね。また、Odor 式だと レイノルズ数 1000 までは結構良好に合致しています。1000以上だとアレですけど。で、Morrison 式ですが こちらは広い領域でバッチリ一致してますね。式は複雑ですけど。とまあこんな感じなんですが、抵抗則の式を用いて終末沈降速度の式を導出するにおいては、抵抗則自体は出来るだけシンプルな方が良いですね。
球形粒子の終末沈降速度 Terminal Velocity of Spherical Particle
✔ 終末沈降速度式 Terminal Velocity Equations
そして 基本中の基本である球形粒子の終末沈降速度 (略して終末速度) ですが、次のようになりますね。式⑦は静止流体中にある粒子が重力によって沈降する場合の運動方程式です。粒子に作用する重力、浮力 及び 沈降時の抵抗力により粒子の速度変化が決まりますね。で、この式で定常状態を仮定すると左辺=0 となりますので整理すると 定常状態時の沈降速度として 式⑧が得られます。で、この式には抗力係数 C が含まれているので前述の各領域における抵抗則の式を代入すると、目出度く終末沈降速度式が得られます。
実際には諸条件を与えて沈降速度を計算しますが、式が3つ有るので面倒ですね。粒子レイノルズ数によって使い分ける必要が有ります。なので、まずは Stokes 領域の式⑨を用いて 沈降速度 u を求めてみます。次にその得られた沈降速度を使って 粒子レイノルズ数を計算してみます。その粒子レイノルズ数が Stokes領域であれば OK ですが、そうでは無い場合には Allen 領域の式⑩を使って同じ様に計算してみます。それで 粒子レイノルズ数が Allen領域であれば OK となりますが、それでも駄目な場合には Newton領域の式⑪を使う事になります。まあ、試行錯誤が必要になるという事ですね。実際の計算は EXCELでやるにしても ちょいとばかし面倒くさいです。特にズラーッと何回も計算したい場合にはアレですね・・・。
✔ 試行錯誤を伴わない終末沈降速度式 Terminal Velocity Equations without Trial & Error
で、参考書籍には試行錯誤を伴わない計算方法が載っていますんで、ご紹介しておきます。まあ このご時世 計算は EXCEL でしますんでアレですけど。一般的に実施するのは粒子径から沈降速度を求める場合でしょうか。式⑫を使います。この式の右辺に諸条件を入力すると CRe^2 が得られます。で、予め C Re^2 と Re との近似式を作っておけば、Re が得られます。Re = d u ρ / μ ですので 沈降速度 u がドンピシャ 得られます。ですが、単純に C Re^2 に対して Re をプロットして近似式にしようとしても うまくいきませんでした。なので、どちらも 自然対数をとって ln (C Re^2) に対して ln Re をプロットしています。
計算例 Examples
✔ 計算例1) 粒子径から終末速度を求める Particle Dia. → Terminal Velocity
で、上記の方法で計算してみます。水滴が空気中を沈降するものとし、条件は以下のとおりです。
- 水滴密度 1000 [kg/m3]
- 空気密度 1.2 [kg/m3]
- 空気粘度 0.000020 [Pa s]
普通に Stokes, Allen 及び Newton の3つの式で計算した結果も併せて描いています。勿論、両者は同じ結果になるんですけども、今回の方法だと レイノルズ数による式の使い分けとかを一切気にせずにドカンと計算出来るんで便利ですね。それと、3式を使うとどうしても境界において折れ曲がりが目立つと言うか。その点、今回の方法だと滑らかに終末速度が描けるので良いですね。下段のグラフは、レイノルズ数に対して 抗力係数をプロットしたものですが、前述の Morrison式とほぼほぼ同じなんで、近似式もまあおかしくは無いのかなと。
✔ 計算例 2) 終末速度から粒子径を求める Terminal Velocity → Particle Dia.
次に同じ 水滴 - 空気の組み合わせで 終末速度を与えてその時の粒子径を求めてみると下図の様になりますね。例えば、終末速度を 2 [m/sec] にするには水滴は 0.604 [mm] とする必要が有ります、って事がサクッと計算出来るんですね。う~ん、これは便利ですね。
まとめ Wrap-Up
今回は球の抗力係数から始まって、終末沈降速度 計算についても触れてみました。これまでの終末速度の計算では Stokes, Allen 及び Newton 式を使って EXCEL で計算してました。んでも、今回の方法だとそんなのを気にせずに計算出来るんで 今後はこの方法を使って行こうかなと。まず終末速度を計算して、そっから更に計算をしたい場合などには有用かなと思いますね。また、「特定の終末速度になる粒子径を求めたいっ!」って場合にも、ドンピシャで値が決まるので便利だな~と。
参考書籍は 化学工学便覧 第4版ですが、古い書籍とかであっても 結構使える方法は有るな~と 今回も思いましたね。まだまだ知らない事が多いなと。んでも、参考書籍では C/Re から Re を求めるには 図表を使うんですね。となると、どうしても読み取り時の誤差とか間違いが有るので 近似式にしておいた方が良いですね。まあ、EXCEL があるから簡単に出来る事なんですけど。
それと、ミシガン工科大学の Morrison さん、有用な近似式を作成して頂いてありがとうございます!
Also, thank you to Mr. Morrison of Michigan Technological University for creating useful approximation equation!
参考書籍・文献 References
- 「化学工学便覧 第4版」 丸善 1978年刊
- ”Data Correlation for Drag Coefficient for Sphere"
Faith A. Morrison
Department of Chemical Engineering
Michigan Technological University, Houghton, MI 49931
10 November 2016
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