今回は温度測定時の誤差について取り上げます。ケミカルプラントではものすご~い数の温度計が有りますね。圧力計とかレベル計とかもありますが、何と言っても 肝の計装品ですよね。で、種類としては 熱電対 Thermocouple とか測温抵抗体 Resistance Temperature Detector とか、少し特殊であれば放射温度計 Radiation Thermometerとか。さらに高温の炉内温度であれば光高温計 Optical Pyrometer とかになるのかなと。現場指示 Local でそこまで測定精度が必要でなければ、バイメタル式 Bimetal type とかブルドン管式 Bourdon Tube Thermometer とかになりますね。とは言え、まあ普通はシースタイプ Sheath Type の熱電対や RTD とかになりますよね。さすが熱電対の素線をむき出しのままでは使いませんね。
で、その温度計ですが これまで使ったと言うか取り扱ったのは そこそこ太い棒状でそれなりの長さがあるタイプです(上図)。温度計の鞘管 Sheath の途中にフランジが付いてて、それを例えばタンク側壁に設置されているフランジ付きノズルにエイッと差し込んでボルト止めします。となると、温度計はタンク液中にグイっと突き出した格好になります。で、こんな温度計ですが いつも絶対に正しい温度を指示する訳でも無くて、誤差を含んでいたりします。まあ、そんな辺りを計算してみようかなと。
実務においては計装品の専門的な部分については所謂 電気計装の専門家にお任せしてましたね。やはり餅は餅屋なんで。とは言え、知りませんでは済まない部分もあるので、電計屋さんとある程度は話せるようにはしておかないとアレですよね。
温度測定誤差 Temperature Measurement Error
そもそも何で測定誤差が発生するのか? については参考書籍である伝熱工学 第4版 に以下のように記載されています。
「一般に、測温場に挿入された熱電対素線は その接点(感温部)温度 と異なる温度環境中を通って引き出される。この場合、熱電対素線は接点に対し一種のフィンの役割を果たし、そのため素線を伝う熱伝導により接点へ熱の出入が生じ、温度測定に誤差が生ずることがある」
つまりは「熱伝導誤差」なんですね。熱電対 感温部はあくまでも「点」っぽい箇所であって、それは素線の先っぽにあるだけなんですね。で、素線はずーっと長くて外部から差し込まれています。となると、どうしても周囲の温度を拾ってしまうので どうしても誤差が生じるって事になります。熱電対が感温部だけで構成されていれば問題は無いですけども・・・。
固体表面温度の測定誤差 Measurement Error of Solid Surface Temperature
✔ 計算式 Error Calculation Equations
✔ 計算例 Examples
鉄皮の表面に割と細めのK型 シース熱電対 先端をグイッと押し付けて表面温度を測るものとします。で、熱電対感温部に流入した熱量は シース部分を介して周囲流体に放熱します。となると、感温部の温度は低下しますね。下図のグラフは、放熱時の熱伝達係数値を変えて計算した結果です。
結果を見ると、熱伝達係数が大きくなると 感温部温度は低下しますね。まあ、流体が空気であれば 放熱時の熱伝達係数は 10 [W/m2 K] ですが、鉄皮表面温度 300 [℃] に対して 感温部温度は 297.6 [℃] なので測定誤差は 2.4 [℃] 程度となります。まあ、この程度の誤差であれば 許容範囲内かなと。
流体温度の測定誤差 Measurement Error of Fluid Temperature
✔ 計算式 Calculation Equations
✔ 計算例 Examples
また、下図 下段グラフは シース熱電対表面における対流熱伝達係数値のみを変化させた場合の結果です。この結果を見ると、対流伝熱の寄与が大きくなればなるほど測定誤差は小さくなる事が分かります。と言う事は、放射伝熱の影響が無視できなくて対流伝熱の寄与が小さい場合、即ち 流路内の流体速度が比較的小さい場合などは 温度測定誤差が大きくなると考えられますね。そんな場合には 放射伝熱の影響を考慮した方が良いのかも? となります。まあ、実際にはきちんと流路を保温するとかしておけば 流路温度が大幅に低くなる事も無いとは思いますけど。温度差が無ければ放射伝熱は起こらないので。
まとめ Wrap-Up
熱電対による温度測定時の誤差について計算してみました。う~ん、そこまで神経質になる必要は無いかと思いますけど きちんと設置するのに越したことは無いですね。実務では、ポリマープラントでも移送配管や反応器などにはそれなりに太~いシース熱電対とかをぶっ挿してましたね。細いと曲がりますね・・・。
なかなか手ごわい事例だったのが、重合反応器 内液温度を測定する熱電対ですね。で、その反応器には当然 撹拌用のインペラが設置してありましたが、それは このブログでも何回か取り上げている ダブルヘリカルリボンだったんですね。で、インペラと槽壁とのクリアランスは 40 [mm] くらいですが、熱電対の挿し込み長にするには少々不安ですね。もっと、100 [mm] 以上は突っ込みたいです。なので、熱電対を設置する位置のリボンブレードをグイッと切り欠いて 設置したんですね。シース熱電対とは言いながら そこそこの太さは有りましたね。ブレードの切り欠き部と熱電対との隙間は 20 [mm] くらいだったんで、十分な強度を持たせたって感じですね。勿論、事前に検証はしてましたけど 試運転の際には少し怖かったですね~。今でも熱電対と聞くと その時の事を思い出しますね。
また、パイロットプラントでもそれなりの苦労が有りますね。やはり、機器や配管も量産プラントに比較するとだいぶ小さめなので もちろん細いシース熱電対などを使いますが、なかなか十分な挿し込み長を確保するのが難しいですね。配管であれば、例えばエルボの箇所をうまく使って挿し込むとか。機器とかであれば、壁面から垂直に挿し込むのでは無くて、少し角度をつけて挿し込むとか。その点、圧力計とかは 挿し込み長とかはあまり関係無いので楽ちんですね。まあ、また違った面倒臭さがあったりはしますけども。
参考書籍・文献 References
- 「伝熱工学資料 第4版」 丸善 1986年刊
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