今回は「身のまわりの化学工学」シリーズです。何回か洗濯について取り上げて来ましたが、前回は 「乾燥」に関する内容を取り上げました。乾燥過程において「空気風速」、「温湿度」そして 「日射」がどのように影響するかを計算してみました。まあ、乾きが遅いよりは早い方が好都合ですし、そうであれば 良く晴れた風の有る日に外干しするのがベストですね。ですが、そうそういつも晴れている訳でも無いですし、冬場であれば空気は乾燥していますが気温は低いですし、日射も弱いですよね。また、花粉症の季節であれば 外干しするのは出来るだけ避けたいですよね。そんな場合は、「部屋干しにしましょうか」とか「乾燥機で乾かしましょうか」となる訳で、乾燥機による乾燥について取り上げようかなと。拙宅は集合住宅ですが、浴室乾燥機が設置されてますね。雨の日などはフル稼働していますね。
熱乾燥 事例 1. Heat Drying Examples 1.
今回も中西 茂子先生の「洗剤と洗浄の科学」を参考にさせて頂きます。それによれば、熱乾燥のメリットとして、天候に左右されない、乾燥時間が短い事が挙げられています。まあ、そうですね。デメリットとしては、まず何と言っても電気代とかガス代などのコストが必要になる点が挙げられますね。それと、参考書籍では 織編物の損傷とか縫目のほつれ、伸び・縮み、型崩れを起こす事が懸念されると記載されています。
✔ 乾燥機による乾燥速度 Drying Rate of Dryer
参考書籍に記載されている乾燥機による乾燥事例を見てみましょう。コインランドリー用乾燥機における乾燥曲線ですね。上段グラフは種類の異なる布を個別に乾燥した場合の乾燥曲線です。カナキンとニットの違いですが、カナキンは織り物でニットは編み物のようです。織り物は真っ直ぐな縦糸と横糸を交差させて生地にします。糸が密に組み合わされているのが特徴でしょうか。一方、編み物は糸をループ状にして、ループにループをくぐらせる様にして生地にします。なので、ニットは伸縮性が有るんですね。ニットと聞くとウールのセーターを思い出しますが、確かに糸はループ状になってますね。そして、結構 伸び縮みしますね。ですが、ウールだけがニットでは無くて、同じ方法で生地になっていればニットですね。なので、アクリルニットとかポリエステルニットも有る訳ですね。
で、乾燥曲線ですが 恒率乾燥期間であれば どの布でも同じ様に含水率は低下しています。まあ、表面の水分が蒸発しているだけなので当然ですね。ですが、減率乾燥曲線を見ると 綿と化学繊維では違いが有りますね。これは、親水性繊維と疎水性繊維との違いであり、疎水性繊維の方がより早く乾燥すると言う事です。
下段グラフですが、綿ニットとアクリルニットを同じ乾燥機で一緒に乾燥させた場合の乾燥曲線です。こちらは明らかに違いが有りますね。この理由ですが、参考書籍には疎水性繊維の水分が親水性繊維に吸い取られその結果 疎水性繊維の方が早く乾く、と有ります。おお~っ、そうなんですね。こっちの布からそっちの布へ水分が移動しちゃうんですね。ドラム式乾燥機であれば、布地は一旦はドラムの回転によって持ち上げられ、その後 ドサッと落下します。なので、それなりの時間 布地同士が密着するんで、その間に水分が移行するんでしょうか。何かどっちも乾くような気もしますけど。
で、熱乾燥における乾燥時間ですが この事例では まあ 30~40分でしょうか。前回の自然乾燥であれば、2時間以上は必要なので明らかに短いです。まあ、熱風でガンガン加熱するので この程度の時間で乾燥出来るんですね。
- 綿カナキン Cotton Shirting
- 綿ニット Cotton Knit
- アクリルニット Acryl Knit
- ポリエステルニット Polyester Knit
で、乾燥曲線ですが 恒率乾燥期間であれば どの布でも同じ様に含水率は低下しています。まあ、表面の水分が蒸発しているだけなので当然ですね。ですが、減率乾燥曲線を見ると 綿と化学繊維では違いが有りますね。これは、親水性繊維と疎水性繊維との違いであり、疎水性繊維の方がより早く乾燥すると言う事です。
下段グラフですが、綿ニットとアクリルニットを同じ乾燥機で一緒に乾燥させた場合の乾燥曲線です。こちらは明らかに違いが有りますね。この理由ですが、参考書籍には疎水性繊維の水分が親水性繊維に吸い取られその結果 疎水性繊維の方が早く乾く、と有ります。おお~っ、そうなんですね。こっちの布からそっちの布へ水分が移動しちゃうんですね。ドラム式乾燥機であれば、布地は一旦はドラムの回転によって持ち上げられ、その後 ドサッと落下します。なので、それなりの時間 布地同士が密着するんで、その間に水分が移行するんでしょうか。何かどっちも乾くような気もしますけど。
で、熱乾燥における乾燥時間ですが この事例では まあ 30~40分でしょうか。前回の自然乾燥であれば、2時間以上は必要なので明らかに短いです。まあ、熱風でガンガン加熱するので この程度の時間で乾燥出来るんですね。
✔ 乾燥時の注意点 Points to note when drying
上記の結果などを踏まえて、衣類乾燥時の注意点が以下のように挙げられています。- 毛織物や絹製品は乾燥機を使用せず自然乾燥する
乾燥機では乾燥すると自然乾燥と違い高温に暴露されますし、ドラムの回転による機械力を受け衣類が損傷を受けるとの事です。まあ、セーターとか着物を乾燥機に入れる人は居ないですよね。 - なるべく別々に、そうでなければ 乾いたものから取り出す
薄手の衣類と厚手の衣類では乾燥時間は異なりますし、綿などの親水性繊維とポリエステルのような疎水性繊維では乾燥時間は異なります。乾燥時間が同程度の衣類だけを乾燥機に入れる方が良いですね。もし、それが難しいのであれば 乾燥が済んだものから順次乾燥機から取り出す方が良いとの事です。 - 化学繊維では温度上昇に注意する
減率乾燥期間では衣類温度が上昇するので特に化学繊維では注意が必要です。 - シワや型崩れを防ぐには完全に乾く前に取り出す
多少を水分が残った状態で取り出し形を整えたうえで自然乾燥すると、シワが出来にくいそうです。まあ、面倒くさいですけど。 - 入れ過ぎはダメ
まあ、当たり前ですけど 乾燥機に大量の衣類を入れてもなかなか乾燥しにくいですよね。なので、少なめに入れるべきと有りますね。と言っても、やはり面倒なのでドカんと入れちゃいますよね。
熱乾燥 事例 2. Heat Drying Examples 2.
別の事例を見てみます。参考文献には、家庭用乾燥機とコインランドリー用乾燥機における乾燥実験結果が記載されています。
✔ 乾燥機仕様 Dryer Spec.
家庭用乾燥機とコインランドリー用乾燥機の仕様は以下のとおりです。型式としては、どちらも同じ回転式(ドラム式) 乾燥です。まあ、コインランドリー用乾燥機は業務用なのでデカいですね。一回に乾燥できる容量も大きいですが、消費電力も大きいですね。となると、熱源として電気だけでは不十分なので、ガス焚きになりますね。
- 家庭用乾燥機
熱源 電気
乾燥容量 1000 [g]
消費電力 650 [W]
機内容積 25 [Liter] - コインランドリー用乾燥機
熱源 ガス
乾燥容量 7000 [g]
消費電力 250 [W]
22866 [W] 消費ガス量を電力に換算
機内容積 211 [Liter]
✔ 試験布仕様 Test fabric specifications
試験に供された布の仕様は以下のとおりです。綿カナキンと 綿とアクリルのタオルですね。絶乾重量で比較するとタオルの方がだいぶ重いですね。まあ、デカいですし。で、含水率はどちらも 100 [%DB] です。これを乾燥機に放り込んで熱風で乾燥します。
- カナキン
素材 綿 100[%]
厚さ 0.34 [mm]
重量 1.13 [g/100cm2]
糸密度 29.0 × 31.5 [本/cm]
大きさ 84 × 84 [cm]
絶乾重量 80 [g] - タオル
素材 綿 70 + アクリル 30 [%]
厚さ 3.32 [mm]
重量 5.42 [g/100cm2]
糸密度 28.7 × 20.0 [本/cm]
大きさ 65 × 125 [cm]
絶乾重量 440 [g]
✔ 乾燥曲線 Drying Curve
さて、得られた乾燥曲線は以下のとおりですね。さすがにコインランドリー用乾燥機は能力が大きいので早く乾きます。一度に乾かせる洗濯物の量も多いですね。綿カナキン 6[kg] を放り込んでも 1[hr] もしないで乾いてますね。まあ、考えてみればコインランドリーに3時間も居ませんよね。近所であれば入れっぱなしにして、終わった頃に取りに行っても良いかも知れませんけど。とそんな感じで、乾燥機能力を決定しているのかなと。
一方、家庭用乾燥機であれば 乾燥しっぱなしにも出来るので、ある程度時間がかかってもそこは問題無いですね。家庭用乾燥機でもガスと電気と両方ありますけど、電気だとそこまで大容量には出来ませんね。ネットで調べてみると、例えば 容量 5[kg] の電気式乾燥機に洗濯物 1[kg] を入れて 「ヒーター強」で乾燥すると 1時間、「ヒーター弱」だと 2時間くらいかかります。ヒーター消費電力は 強 1240 [W]、弱 750 [W] です (室温20度)。
一方、家庭用乾燥機であれば 乾燥しっぱなしにも出来るので、ある程度時間がかかってもそこは問題無いですね。家庭用乾燥機でもガスと電気と両方ありますけど、電気だとそこまで大容量には出来ませんね。ネットで調べてみると、例えば 容量 5[kg] の電気式乾燥機に洗濯物 1[kg] を入れて 「ヒーター強」で乾燥すると 1時間、「ヒーター弱」だと 2時間くらいかかります。ヒーター消費電力は 強 1240 [W]、弱 750 [W] です (室温20度)。
✔ 乾燥能力 Drying Performance
参考文献にはコインランドリー用乾燥機 (ドラム式、ガス) と家庭用乾燥機 (ドラム式、電気) の乾燥能力が比較されています。下図がその結果ですが、布重量に対して単位重量当たりの乾燥速度をプロットしています。因みに、どっちも同じ布種類 (綿カナキン) です。被乾燥物である洗濯物の重量が増えると、乾燥速度は低下します。また、コインランドリー用と家庭用では 乾燥速度には 10倍程度の差が有る事が分かります。それと、参考文献にも記載されていますが コインランドリー用乾燥機では 減率乾燥期間において 布の最高温度は 110 [℃] に到達しています。なので、綿とか麻であれば問題はありませんが 、ポリエステルなどの化繊は少し湿った状態で取り出す方が良いとなっています。
それと、下図には 静置型 Stationary type と 吊り下げ型 Hanging type の乾燥機能力についてもプロットしてあります。静置型は小型乾燥機でハンカチなどの小物類などを乾燥する用途で使います。ネットで調べるとネットオークションに出品されてますね。また、吊り下げ型は衣類を吊り下げて下部から熱風を通過させるタイプです。これまたネットで見てみると、いろいろと種類が有りますね。
それと、下図には 静置型 Stationary type と 吊り下げ型 Hanging type の乾燥機能力についてもプロットしてあります。静置型は小型乾燥機でハンカチなどの小物類などを乾燥する用途で使います。ネットで調べるとネットオークションに出品されてますね。また、吊り下げ型は衣類を吊り下げて下部から熱風を通過させるタイプです。これまたネットで見てみると、いろいろと種類が有りますね。
で、この乾燥速度の大小ですが 要はヒーター能力、即ち消費電力の大小で決定されると参考文献には有りますね。で、下図にプロットしてみました。まあ、そのとおりなんですね。と言う事は、乾燥機を使って出来るだけ早く乾かしたいのであれば、ドカ~んと大容量の乾燥機を使うべきですね。なんですが、初期投資もそれなりになりますよね。因みに、コインランドリー用乾燥機は 一番小さいサイズでも 60万円以上しますね・・・。
まとめ Wrap-Up
今回は洗濯における乾燥機を用いた乾燥について取り上げてみました。衣類の乾燥は、つまるところ 布とか繊維の乾燥過程なので、化学工学の知見が適用出来ますね。まあ、と言っても今回は乾燥曲線を比較しているだけですけど・・・。まあ、もう少し言えば 乾燥機の設計とか能力解析に化学工学的な知見が使えますよね。例えば、乾燥機内の風速がどのように乾燥速度に影響するのか?とか、ドラム回転数が乾燥速度にどのように影響するのか?とかでしょうか。この辺りは乾燥機メーカーとか家電品メーカーが技術開発しているんだと思いますが、そうであれば なかなか文献とか書籍としては出てこないですよね。
冒頭でも少し触れたように、衣類の乾燥用途としての浴室乾燥機が有りますね。拙宅の場合は、都市ガス焚きで温水を作って循環させ 浴室天井の熱交換ユニットで熱風を吹き出してますね。 稼働中の浴室内温度は そこまで高くは無いですね、40~50度くらいってところでしょうか。実測した訳では無いですが、風速もまあそこまで大きくは無いかなと。あくまでも、補助的な用途なのかなと。脱水直後の含水率の高い衣類をきちんと乾燥するのであれば、乾燥機内の限定された空間の温度を上げて処理したほうが良いのかなと思います。浴室は乾燥機よりはスペース的に余裕があるので、入れたり出したりが簡単ってのは有りますけど。
韓国に住んでいた時分には、洗濯乾燥機も使いましたね。まあ、それはそれで便利でした。特に梅雨時には。もちろん、韓国にも梅雨 장마 が有ります。住んでいたのが韓半島の南なので まあそこそこ降りますね。そうすると湿度も結構高めになるので、なかなか乾きません。一方、冬場はすごく乾燥するので 適当にベランダに干しておけば乾きますね。と言っても、ベランダの外側にもサッシ窓がありますんで、ベランダって言っても屋内ですよね。晴れていると日射があるのでベランダの温度もそれなりに上がりますんで、よく乾きます。まあ、そのままだと湿度が上がってムワーっとしてくるんで、時々換気したりしてましたけど。
韓国に住んでいた時分には、洗濯乾燥機も使いましたね。まあ、それはそれで便利でした。特に梅雨時には。もちろん、韓国にも梅雨 장마 が有ります。住んでいたのが韓半島の南なので まあそこそこ降りますね。そうすると湿度も結構高めになるので、なかなか乾きません。一方、冬場はすごく乾燥するので 適当にベランダに干しておけば乾きますね。と言っても、ベランダの外側にもサッシ窓がありますんで、ベランダって言っても屋内ですよね。晴れていると日射があるのでベランダの温度もそれなりに上がりますんで、よく乾きます。まあ、そのままだと湿度が上がってムワーっとしてくるんで、時々換気したりしてましたけど。
参考書籍・文献 References
- 「洗剤と洗浄の科学」 中西 茂子著 コロナ社 1995年刊
- 「衣類用乾燥機による布の乾燥状態」
繊維製品消費科学会誌 第31巻 第8号 1990年
web site
- AQUA コインランドリー・施設向け機器
https://aqua-has.com/biz/ - Panasonic 衣類乾燥機
https://panasonic.jp/wash/D3.html
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