今回はバグフィルター Bag Filter の集塵性能について取り上げてみます。集塵装置については、このブログでもサイクロン、湿式洗浄塔、ベンチュリスクラバーを取り上げました。ベンチュリスクラバーはそれなりに小さな粒子径の粉塵も捕集可能ですが、ガス中の粉塵はとにかく全部 捕集したい! のであれば、バグフィルター一択でしょうか。なんですが、粉体関連に書籍や文献を見ても 設計に関する計算式、特に集塵性能についての記載はあまりと言うかほとんど見当たりませんね。まあ、餅は餅屋で専門メーカーに設計・製作してもらえば良いですけど。
実務でも何回か技術検討しましたけど、まあ 十分には出来ませんでしたね。何せ、参考にする技術的な資料が少ないので。例えば、通過ガス流量が増える場合を想定します。まあ、粉塵粒子径分布が同じであれば捕集自体は出来ますね、多分。ですが、圧力損失が増加するので、例えば 既設のブロワはそのまま使えるのか?と言った懸念があります。ですが、圧力損失がどの程度になるのかをきちんと予測するのは なかなか難しいですね。更に、こんなろ布にこんな粒子径の粉塵を含むガスを通過させた時の集塵率はどれくらいなのか?、を正確に見積もるのはこれまた難しいですね。なんですが、比較的簡便に集塵率を計算する式も有るには有るので それを使って計算してみようかと。
捕集性能 計算式 Collection Performance Calculation Equations
参考文献は、「バグフィルターの捕集効率に及ぼす圧力損失とろ材の影響」 粉体工学会誌 第46巻 第8号 2009年です。著者は、池野 栄宣、多田 豊、石野 智元、渡辺 雄彦 さんですね。池野さんの所属は新東工業ですが、集塵機メーカーですね。残りの三名は名工大 生命・物質工学科の所属です。まあ、あくまでも今回計算してみるのは 圧力損失と捕集効率との関係ですね。
✔ バグフィルターの捕集性能 Collection Performance of Bag Filter
参考文献によれば、バグフィルターの捕集性能は繊維層である ろ布による捕集と堆積粉塵層による捕集の和であるとされています。これまでの研究では、堆積粉塵量が多いほど、またろ過速度が遅いほど捕集効率が高くなるとされています。つまり、ろ布表面に粉塵が堆積してくると、その堆積層によって捕集効率が改善されるんですね。言い換えると、堆積層が厚くなるほどより粉塵は捕集されるんですね。で、堆積層が厚くなるほど圧力損失も増加しますね。と言う事は、圧力損失が大きくなるほど捕集効率は良くなる、とも言えますね。で、文献ではこの辺りを実験的に検討しているんですが性状の分かっている試験粉体を用い、異なるろ布によって捕集実験をしています。で、その際のろ布前後の差圧(圧力損失) を測定しています。もちろん、ろ布前後の粉塵濃度もパーティクルカウンターで測定しています。手順としては、試験粉体を一定量捕集させて、その後のろ布入出の粉体濃度と圧力損失を求めます。この操作を圧力損失が 600 [Pa] になるまで繰り返しています。そうすると、ろ過速度(ガス通過流速) 、ろ布、粉体の組み合わせにおいて、ろ布単位面積当たりの集塵負荷 [kg/m2] に対して 捕集効率(集塵率) をプロットする事が出来ますね。結果を見ると、集塵負荷が増加するのに伴って捕集効率も増加します。ただし、粉体(粒子径) によって差が有るんですね。ですが、集塵負荷の代わりに ΔP'/u [Pa s/m] を用いると 粉体種の違いが無くなって、データ点にまとまりが出ますね。このパラメーター値が大きくなるほど 集塵率は増加し、最終的に 100 [%] に近づきます。ΔP' は圧力損失で u はろ過速度なので、圧力損失が大きいほど そして ろ過速度が小さいほど 集塵率が良くなりますね。ただ、ろ布種の影響は残りますね。
✔ 捕集性能 計算式 Collection Performance Calculation Equations
んで、捕集性能 (集塵率) ですが 式②によって整理されています。実験に用いたろ布は全部で4種類で、式中に含まれるパラメータ値は下図に示すように決定されています。フェルトとスパンボンドですが、どちらも不織布です。一般的にはフェルトと言うと羊毛などの動物繊維を圧縮してシート状にしたものですが、化繊でも同じ製法であればフェルトなのかなと。また、スパンボンドですが ネットで調べると 溶融樹脂をダイから押し出して紡糸し、その糸を布状にしたもののようです。
計算例 Examples
✔ 粉塵粒子径と捕集効率との関係 Dust Diameter vs Collection Efficiency
✔ ろ布種類の影響 Influence of Filter Medium
まとめ Wrap-Up
で、この払い落としですが 実施直後にはろ布が露出しますね。厳密にはろ布表面には落とし切れない粉塵が残留していますけど。そして、その状態では 粉塵が十分に堆積していないので圧力損失も大きくは無いです。と言う事は、この状態では捕集効率は小さいです。つまりは粉塵はろ布を通過してバグフィルター出口からガスと共に排出されます。う~ん、パルスジェット方式では避けて通れないのかなと。どうしても、この影響を避けたいのであれば バグフィルターを多室構造とし、払い落としを実施する集塵室は予めガス本流から分離しておくと言った対策が考えられますけど。まあ、この辺りは集塵機専門メーカーに相談すれば、うまい具合にやってくれると思いますけど。
話を元に戻して、今回取り上げた 計算式ですが 圧力損失さえ分かれば捕集効率を推定出来るので 明確ですね。運転条件を変更した場合の対策を考える上で参考になるかと思います。運転条件としては、基本は ガス流量と粉塵濃度でしょうか。例えば、一定時間間隔で払い落としを実施しているバグフィルターにおいて、粉塵濃度が通常よりも低下したとします。となると、粉塵層が十分に堆積されていない状態で払い落としを行なってしまう事になりますね。そうすると、粉塵層の圧力損失が十分では無いので 捕集効率も低いです。即ち、粉塵が十分に捕集されずに排出されるって事にもなりますんで、避けたいですね。対策としては、払い落とし時間間隔をもっと長くするとか、バグフィルター入口と出口の差圧を監視するなどが考えられますね。要は、所望の捕集効率を達成できるだけの圧力損失を維持するように運転する、って事でしょうか。
参考文献・書籍 References
- 「バグフィルターの捕集効率に及ぼす圧力損失とろ材の影響」
粉体工学会誌 第46巻 第8号 2009年 - 「はじめての集じん技術」 日刊工業新聞社 2013年刊
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