いつもいつも化工計算ばかりだとネタ切れになりますし面白く無いので、化学に関する話題として雨の季節に関していくつか取り上げてみます。と言っても元ネタがあるんですけどね。しかしまあ最近 雨の降り方も尋常じゃないですね。台風でも無いのに大雨で公共交通機関に影響が出たりします。通勤に電車を使ってますが 最近も雨の影響で運転見合わせとなりました。まあ、ネットを見ると止まっているのが分かるんで、急遽バスに切り替えましたけど。また、梅雨の季節なんで ジメジメ 蒸し蒸しするんで、何とも気が滅入りますね。ちょっと歩くだけで汗だくになりますしね。そもそも生まれが青森なんで、暑いのもジメジメしたのもどっちも苦手ですね。夏場は寝てる時もずーっとエアコンはつけっぱなしですね。
で、取り上げる項目は以下のとおりです。雨の降り始めには何とも言えない独特のニオイがしますね。個人的にはキライでは無いんですけども。何かのニオイがするって事は化学物質がある筈です。また、梅雨を代表する花といえば紫陽花 Hydrangea ですが、その色味には土壌の pH が影響するんですね。それと、ジメジメした時もミントを薄めた液を肌にスプレーすると スーッとしますね。涼感を感じる訳なんですが、実際に温度が下がっている訳では無いんですね。
- 雨のニオイ The Aroma of Rain
- 紫陽花の色変わり The Chemistry of Hydrangea Color Changes
- ミントはなぜスッキリするのか? Why does mint feel refreshing?
そして、元ネタですが 以前もお世話になった web site "Compound Interest" ですね。それと、書籍 「カリカリベーコンはどうして美味しいにおいなの?」です。
※ 今回も Microsoft Edge の copilot に作成して貰った「雨の日の紫陽花とアイスミントティー」の画像です。雰囲気は良いですね。
雨のニオイ The Aroma of Rain
雨がポツポツ降り始めると その時だけ独特のニオイがしますね。ザーッと雨脚が強くなるともうニオイがしないですね。他には嗅いだことのない独特のニオイですが元ネタによると ジオスミン Geosmin なんだそうです。地球とか大地とかを表わす Geo - ですね。地質学とかは ジオロジー Geology ですね。
✔ ジオスミン Geosmin
で、そのジオスミン ですが 土壌に含まれる放線菌 Actinomycetes が胞子を作る際に分泌する物質なんだとか。なので そもそも土に含まれているんですね。そこに雨が降ってきて水滴が衝突する衝撃で土埃と共に巻き上げられるんでしょうね。それが風などによって運ばれてニオイとして感じるのかなと。構造は下図のとおりです。基本骨格はデカヒドロナフタレン Decahydronaphthalene であり、デカリン Decalin とも呼ばれます。で、-OH基が有るんでまあ一種のアルコールですね。
✔ ジオスミン濃度 Geosmin concentration
調べてみると 上水道の分野では注目されてるんですね。と言うのも、水道水にかび臭さのような異臭味を感じさせる物質という位置づけらしいです。まあ、確かにあのニオイが強いとちょっとアレかなとは思いますね。また、ネットで調べると水源や浄水場出口で 基準値 10 ng/L を超過している事例が確認される場合もあるとか。一応、基準値ってのは有るんですね。そして、元ネタによるとヒトの嗅覚では 何と 5 ppt でも検知出来るんだとか。ppt (part per trillion, 1×10^-12) は1兆分率なので、溶質と溶媒の密度がほぼ同じだと仮定すれば、1ppt = 1 ng/L となります。
5 ppt は ティースプーン 1杯のジオスミンを オリンピックプール 200杯分の水に溶かした場合に相当するんだとか。オリンピックプール1杯は 2500[m3] なので 200杯だと 500,000 [m3] となります。また、ティースプーン 1杯は 約 2.5 [mL] = 2.5×10^-6 [m3] なので 2.5×10^-6 ÷ 500,000 = 5×10^-12 となるので 5 [ppt] ですね。
んで、こんな低濃度でも分析は出来るんですね。調べてみると Head Space - GC/MS とか Purge Trap - GC/MS とかで精度良く分析出来るようですね。
ふと思いましたけど、ヒトでもこんな低濃度のジオスミンのニオイを感じられるんであれば 、例えば イヌとかだとすごーく強く感じるのかな~と。雨が降ってくると 「臭っせーな~」とか思ってるんでしょうか。
紫陽花の色変わり The Chemistry of Hydrangea Color Changes
梅雨時となると紫陽花が目につくようになりますね。子供の頃は花の色が変わるってのも「まあ、そんなもんなんかな~」とあまり気にしてはいませんでしたけど。で、元ネタである "Compound Interest" によると 錯体の生成が影響するなど なかなかに興味深い仕組みですね。
✔ 紫陽花の色 Hydrangea Hues
これは紫陽花あるあるですが、色が変わるのは花びら petal では無くて 萼片 (がくへん) sepal の部分なんですね。で、その萼片に色がつくのは色素であるアントシアニン Anthocyanin に因るものなんですね。アントシアニンにもいろいろと種類があって紫陽花が多く含むのは、ピンクがかった赤色を生じさせる デルフィニジン 3-グルコシド Delphinidin 3-glucoside となります。構造は下図のとおりです。それなりに複雑で分子量も大きいですね。そして、土壌の pH が大きくなるのに伴って 萼片の色は 青色 → 紫色 → ピンク色と変化します。
✔ pH、アルミニウム、および紫陽花の色 pH, Aluminum, and Hydrangea color
酸性条件においては アルミニウムイオン は デルフィニジン 3-グルコシド 及び フェノール性色素と錯体を形成します。この錯体の色が 青色を呈色します。また、pH がアルカリ条件となるとこの錯体は形成されず ピンク色となります。そして、pH が両方の中間であれば 青色とピンク色の中間である紫色になりますね。フェノール性色素としては 例えば 3-O-カフェオイルキナ酸 3-O-caffeoylquinic acid です。で、これってクロロゲン酸なんですね、コーヒー豆とかに含まれている。う~ん、そうなんですね~。紫陽花の発色にコーヒー豆の成分が関係しているとは。
✔ 紫陽花の色を変える Changing Hydrangea Color
- 青色に変えたい場合
土壌を酸性にすれば良いので、例えば硫酸アルミニウムを撒けば良いとありますね。硫酸塩なんで酸性になりますし、アルミニウムイオンも含まれていますし。 - ピンク色にしたい場合
土壌をアルカリ性に近づければ良いので、例えば石灰 (酸化カルシウムとか水酸化カルシウム)を撒けば良いですね。
まあ、どっちもホームセンターとかで売ってますんで 入手も容易かなと。硫酸アルミニウムカリウムとかでも良いかなと思いますが、これは所謂 ミョウバンですね。
ミントはなぜスッキリするのか? Why does mint feel refreshing?
✔ メントール menthol
- 右旋性 ( + ) dextro - rotatory
- 左旋性 ( - ) levo - rotatory
✔ 製造方法 Production
製造方法としてはハッカの葉っぱを乾燥させた後 水蒸気蒸留してメントールを含む液体が得られます。純粋なメントールは白色針状結晶ですが 晶析処理を経て得られる固体製品が 「薄荷脳」であり、結晶を含まない液状製品は 「薄荷油」なんだそうです。ハッカの葉っぱの乾燥と水蒸気蒸留は別に国内でやる必要は無くて、得られた粗製品を輸入するってのもやられているようですね。この「薄荷」ですが、最初は嵩張っていますが 処理をするとぺったんこになって荷が薄くなる様子から 「薄荷」と言われるようになったんだとか。
また、工業規模での合成も出来るんですね。出発原料は バイオマスである ミルセン myrcene です。参考文献によれば、触媒的不正異性化合成なんだそうです・・・。2ステップ目で使用する BINAP触媒ってのが肝の様ですが 良く分かりませんね。まあ、試薬として市販されているようです。
✔ メントールの作用 The action of menthol
結論から言うと、皮膚にある「冷感受容体」にメントールが結合し、それによって「冷たいっ」と言う信号が脳に伝わるんですね。つまりは 神経細胞を騙してるんですね。まあネット情報のつまみ食いですが、皮膚の表皮付近には TRPM8 Transient Receptor Potential Melastatin 8 と言う 「冷感受容体」が有るんですね。この受容体は 温度 23~26度で活性化するとの事なんで 「冷感」ですね。冷たいと言うのは温度刺激な訳ですが、特定の物質によっても活性化するらしく TRPM8 については メントールが該当するって事なんですね。メントール以外ではイシリン でも活性化すると有りますね。
面白いのが、これとは別にもっと高い温度で活性化する受容体もあって こちらは 「温感受容体」になるんですね。「温感受容体」の一つである TRPV1 ですが 活性化するのは 43度 くらいだそうです。そして、温度刺激以外にも 何と 「カプサイシン」によっても活性化するんですね。カプサイシンはトウガラシの辛味成分です。と言うことは、トウガラシを食べて口の中がカーっと熱く感じるのは まさにカプサイシンが この温感受容体を刺激してるんですね~。因みにワサビ受容体もあるそうです。
2021年のノーベル生理学賞の受賞理由はこの「温度受容体」の発見ですね。なので、ずーっと昔から分かっていた訳でも無いんですね~。それと、「温度受容体」は哺乳類、鳥類や両生類、魚類にもありますし、ショウジョウバエとかカイコにも有るんだとか。拙宅には猫が居りますけど、暑いとダラ~っとそこいらに行倒れ状態になってますが まさに「温度受容体」が「暑いっ!」と感じてるんですね。と、ふと思いましたが所謂「猫舌」ってのは、この温度受容体が何か関係しているんでしょうか?ものすごく活性化しやすいとか。こちらはイグノーベル賞の対象ですかね・・・。
まとめ Wrap - Up
まあ、まとめるほどの事も無いんですけど。私ごとですが、夏に限らず冬でもミントスプレーを常備しています。今でも通勤時にはマスクを着用していますが、マスクにシュッとスプレーすると清涼感が有りますね。冬はそれなりに蒸れて不快ですし。
参考書籍 References
- 「カリカリベーコンはどうして美味しいにおいなの?」食べ物・飲み物にまつわるカガクのギモン
高橋 秀依、夏苅 英昭 株式会社 化学同人 2018年
website
- Compound Interest
https://www.compoundchem.com/
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