さて、今回は 2023年版 Global Top 50 について取り上げます。例年 夏に C&EN において発表される、企業別 化学品売上高ランキングですね。企業別に集計して 売上高の大きい順に並べてるんですね。あくまでも化学品分野での売上高だけでランキングしていますね。で、その概要ですが 売上高で言えば 2022年との比較で 10.4% 減少しているとの事です。2022年は COVID-19 からの需要回復で 17% の増加だったんですが、そこから失速するような感じでしょうか。
記事によれば在庫調整により販売量が減少し、生産能力が過剰になっているとされています。Top 50 のうち 38社の合計利益は 2022年から 44.1% と大幅に減少しており、うち 29社は減益です。このような結果となった理由として、特に欧州企業ではエネルギーコストの高騰と資産の老朽化による競争力の低下とのことです。石油化学業界では 中国と米国における生産能力増強によって売上高と利益の減少に直面しているとの事です。これは2022年 に絶好調だった肥料生産関連企業にも 肥料価格の下落として影響を与えているようです。
2023年 新たにランキング入りした企業は DSM-フィルメニッヒ 、セラニーズ、韓国のハンファソリューション、同じく SK イノベーションなどです。ハンファは太陽光発電材料の寄与が大きいようです。SK は数年ぶりの復帰です。一方、ランキング外となった企業もあり 例えば ソルベイ は新たに 2つの企業に分割された為 売上高が減少しました。また 台湾系の米国企業 である ウェストレイク もランキング外となりました。
※ アメリカ化学会 American Chemical Society
https://www.acs.org/
https://cen.acs.org/
Chemical Sales 2023
✔ 化学品売上高 Chemical Sales 2023
まあ 何だかんだ言っても BASF の牙城はゆるぎませんね。2023年の化学品売上高もダントツで1位です。Top3 の顔ぶれは昨年と同じですが、それ以外では順位の変化が有りますね。例えば、LG Chem は 昨年の7位から 順位を3つ上げて 4位に躍進しています。PetroChina も8位から5位となっています。一方、SABIC は 4位から順位を3つ下げて7位となっています。
✔ 化学品売上高 推移 Chemical Sales change from 2022
で、前年 2022年 と比較しての売上高変化は以下のとおりです。ざっと見ると減収している企業が多いですね・・・。と、順位を上げた LG Chem と PetroChina は増収しているんですね。で、記事は LG Chem はバイオベース化学品に注力しているとありますね。脱炭素とか言われてますんで、今のうちに地盤を固めておこうと言う事なのかなと。一方、PetroChina は石油精製・石油化学分野で積極的な投資を行なっていくようです。まあ、旺盛な内需がありますしね。で、特筆すべきは 50位圏外から22位にランクインした Jiangsu Eastern Shenghong 江蘇省東部盛鴻 でしょうか。中国企業ですが 記事によれば 2022年12月に連雲港市に 石油精製・石油化学プラントを設立したんだとか。総生産能力は 何と 1600万トンです。確かに Google Earth で連雲港市を見てみると この一帯には様々なプラントが有りますね~。因みに青島市は 200キロメートルくらい北ですね。
Chemical Operating Profit 2023
✔ 化学品利益 Chemical Operating Profit
で、各社の利益は以下のとおりです。一部 公表していない企業もありますが、その場合 ゼロになっています。まあ、BASF は利益も大きいんですが ダントツで高収益を上げているのは Linde です。言わずと知れた 工業用ガスメーカーですね。で、記事によれば 「脱炭素化」がLinde のコアビジネス になっているそうです。例えば、スウェーデンで計画されている 水素ガスによる直接還元製鉄プラントにも参画するようです。やはりこの分野は伸びてるんですね。いつもですけど信越化学工業も利益は大きいですね。
✔ 化学品利益 推移 Chemical Operating Profit change from 2022
次に化学品利益の推移ですが ほぼ全ての企業で減益しています。ゼロは未公開ですね。前述の Linde は +16.7% とはなっています。で、ただ1社 SK イノベーションのみが 利益増加率 558% と気を吐いています! 3年ぶりのランクインなんですが、記事によると最近の SKイノベーションは プラスチックリサイクルに注力しているようです。例えば、溶剤による ポリプロピレン精製とか、PET樹脂の解重合などにも取り組んでいるようです。こんなのも、やはり脱炭素化の流れなんですね。
✔ 化学品利益率 Chemical Operating Profit Margin
最後に利益率を見ておきます。20% を超える高利益率の企業は Linde、信越化学、Air Product and Chemicals そして Nutrien の4社です。信越化学はシリコーン事業をもっているのでやはり強いですね。Air Product and Chemicals も工業用ガスメーカーなんですが、やはりグリーン水素とかアンモニアなどに取り組んでいるようです。
まとめ Wrap-Up
昨年も BASF、LG Chem そして三菱ケミカルの売上高と利益の推移を比較してみましたけど、せっかくなんで今年もやってみます。3社とも 2021年から2022年にかけては COVID-19 の影響も消えて 成長路線って感じでしたが、2023年になってちょいと雲行きが怪しくなってきましたね。
冒頭でも触れたように現在は在庫調整局面なのであれば、いずれは 売上高・利益もまた上向いてくるんだと思いますけど。とは言っても不安要素は有る訳で、エネルギーコストの上昇とか中国・米国における過剰な生産能力とかでしょうか。伸びている企業もあるのでいち早く成長分野に注力すれば流れには乗れるのかな~と。まあ、当たり前ですけど。
最後に国別で売上高を整理してみるとこんな感じですね。見て分かるように双璧は中国と米国ですね。この両国の動向が化学業界に影響を与えるって事ですね、やはり。
参考書籍・文献 References
- "globaltop50-table-2024.pdf" C&EN, ACS
web site
- https://www.acs.org/
アメリカ化学会 American Chemical Society - https://cen.acs.org/
ケミカル&エンジニアリング ニュース Chemical & Engineering News
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