身のまわりの化学工学 No.12 窓の断熱性能 Insulation Performance of Windows

 毎日暑いですね~。まあ土日は家に居るんですけど、去年は扇風機のみで何とか凌げたんですが今年は無理ですね・・・。とは言え、電気代もアレなんで エアコン 28度設定に扇風機併用で何とか凌いでいます。 もちろん、就寝時はずっとつけっぱなしですね 25度設定で。そして、夏に部屋が暑いのは温度の高い室外から温度の低い室内への熱移動に起因しますね。もちろん、室内温度が外気温と同じになれば熱移動は起こりません、考えたく無いですけど・・・。更に、窓を透過してくる日射によっても室内は加熱されますね、やはり考えたくも無いですけど。で、これらはどちらも熱移動現象となりますね。ネットとかでも、「窓から入り込む熱が多いんです!」とか言われてますね。テレビとかでも 「高断熱住宅は Ua値が小さいんです!」とか言われてますね。まあ、今回はそんなところを少し計算してみようかなと。

このブログを書いてる部屋の窓は 一応 複層ガラスにはなってるんですが、もうそんなんじゃ効かないくらいに暑いんでしょうね~。 まあ、そんなのもあって 内窓を設置して二重窓するくらいじゃないと駄目なのかな~と。




窓の構造, 断熱性能   Structure and Insulation Performance of Windows

窓だけでは無くて屋根とか壁とか床とかでも 温度差が有れば熱が移動します。とは言っても、壁とか屋根であれば ガッツリと断熱材を施工すれば 良いですね。一方、窓では外が見えてナンボなんで 断熱材を施工する訳にも行かず、対処法も限られますね。


✔ サッシ窓 断面図  Sash Window Cross Section


で、窓の断面構造ですが ネットにいろいろと有りますね。ですが、専門家では無いのでイマイチ良く分かりません。要は「ガラス」があって 「框 かまち」にはまっています。この「框」ですが 「ガラスフレーム」とも言われるようです。で、この「框」が「枠」にはまっています。で、「框」と「枠」の両方を「サッシ」と言うんだそうです。ヨイショっと横滑りさせて開けたり閉めたりしてるのは「框」部分なんですね。すご~く簡略化して描くとこんな感じです。「框」には ローラー (昔風に言うと戸車) が設置されていて、レールの上を左右に動けますね。で、ガラス板が1枚であれば単層で 2枚以上であれば複層となります。下図のようなセットが2つあれば2重窓となりますね。

で、熱は温度の高い室外側から温度の低い室内側に移動しますけど、熱流の経路がいくつか有りますね。もちろん、面積的に言えばガラス部分が大きいのでこの部分を通過する熱量はそれなりにありますね。また、「框」部分は拙宅の場合もそうですがアルミだったりしますね。軽量ですし加工しやすいので。となると、熱伝導率が大きいので この部分を通過する熱量も無視できませんね。まあ、それはそうなんですが 今回は面積の大きなガラス部分に絞って考えてみます。





✔ ガラス部分の熱移動  Heat Transfer through Glass Part

単層ガラスと複層ガラス(ペアガラス) の場合について考えてみます。で、面倒なので日射の影響は除外します。まあ、日射熱取得率なるものが有って それを使えば日射の影響も考慮出来るようですけど。で、当然と言えば当然ですが 日本工業規格 JIS に計算法が載ってるんですね。なので、その計算式を使えば良いですね。

単層ガラスと複層ガラスにおける熱移動は下図のとおりです。単層ガラスは ガラス1枚のみで、複層ガラスは 2枚以上のガラスから構成されます。そして、複数枚のガラス間隙は中空層で、真空であったり空気などの気体が封入されています。

で、熱移動形態ですが ガラス表面では対流伝熱と放射伝熱が進行し、ガラス内部は伝導伝熱が進行し、そして中空層では対流・伝導・放射伝熱が進行します。ただし、中空層が真空の場合は 放射伝熱のみが進行します。これは、伝熱の教科書には必ず出てくる 総括伝熱係数 Overall Heat Transfer Coefficient の定義ですね。なので、各部・層におけるコンダクタンスの逆数(レジスタンス) の総和を求め、その逆数をとれば 総括伝熱係数 U が得られますね。U値が得られれば 室外から室内への入熱量と各部温度が求められますね。




✔ 計算式   Calculation Equations

 そして、総括伝熱係数の計算式 及び 各部・層のコンダクタンス計算式は以下のとおりです。式①は総括伝熱係数を求める式ですね。式②と③で室内外 表面熱伝達係数が出ます。見ると 修正放射率が含まれているんで放射伝熱の影響も考慮されてますね。まあ、風速の影響とかを細かくは見ないんですね。で、ガラスと中空層の熱コンダクタンスは式④で求めます。ガラスのコンダクタンスは 単純で熱伝導率を厚みで割り算すれば良いですね。一方、中空層は少し面倒で 伝導・対流・放射伝熱の全てを考慮してますね。式⑥は放射伝熱の寄与分ですね。放射伝熱と言えば ステファン-ボルツマン定数ですね。また、式⑦は基本的には伝導伝熱のコンダクタンスですが、定数C が含まれています。そして、この定数 C は中空層における 自然対流伝熱の寄与分ですね。これまた 自然対流といえばグラスホフ数ですね。

式はそれなりに多いですが、EXCEL に数式を入力しておけば 後はいろいろと条件を変えれば サクッと U値が得られますね。それと、式⑨において熱流方向が下向きの場合はヌッセルト数は1としていますが、これは自然対流が起こらないからですね。高温面が上で低温面が下であれば 密度差に起因する浮力によって生じる自然対流は起こらず、熱伝導のみが進行しますね。




計算例  Examples

んじゃま、早速計算してみます。夏の盛りを想定して 外気温は 35 [℃] で室内温度 25 [℃] に維持するものとします。なので、温度差は 10 [℃] で固定ですね。そして、部屋には単層ガラスとか複層ガラスを使ったサッシ窓があるとします。

✔ ガラス・中空層 数の効果  Effect of Glass , Hollow layer Number

単層はガラス1枚のみで、ここからガラス枚数を増やして総括伝熱係数 U値を計算してみると下図のとおりとなります。ただし、ガラス 厚みは 5[mm] で 中空層 厚みは 6[mm] に固定します。

う~ん、やはり効果は結構ありますよね。単層ガラスを ガラス2枚の複層とすると U値は 約4割ほど低下します。と言うことは、入熱量 = U × 温度差 × 面積 なので 入熱量も 4割低下します。室内温度をエアコンを使って維持しているのであれば、エアコンの消費電力はその分削減されるってことですね。なんですが、だからと言って ガラスを 3枚とか4枚にしても 削減割合は頭打ちですよね。これは、下図下段グラフの熱抵抗値の変化を見ても分かります。ガラスと中空層を増やしていくとそれらの熱抵抗割合が大部分を占めるようになるんですね。なので、まあやってもガラス3枚くらいで 大体は 2枚で OK って感じなんでしょうか。




✔ 中空層 厚みの影響  Effect of Hollow layer Thickness


普通に考えると中空層の影響が大きいんだろうなと考えられますね。まあ、普通は空気だと思いますけど。んじゃ、この空気層を厚くすれば効果もあるのかなと思って計算したのが下図ですね。

ん~、それほどでは無いんですね。全く効果が無い訳では無いですけども。それと、中空層間隔を増やすと 自然対流が卓越してきて何か影響がでるのかなと思ったんですけど、そうはなってませんね。前述の式⑦にあるように、定数 C の値は 中空層における ヌッセルト数によって変化します。そして、そのヌッセルト数はグラスホフ数の影響を受けます。グラスホフ数は式⑩で計算されますが 分子に 中空層厚みの項を含んでおり、これが3乗で効いてくるんですね。ですが、中空層間隔が 20[mm] くらいだと影響は無いんですね、あくまでも計算上ですけども。やはり空気は密度の割には粘っこいのかなと思いますね。プラントル数も水とかと比較するとだいぶ小さいですしね。

で、窓も際限無く厚くするのもいろいろと問題が有るんでしょうし、適当な厚みにしてあるんでしょうね。因みに、 ガラス 5[mm] 中空層 6[mm] ってのは 拙宅のサッシ窓の仕様ですね。



まとめ  Wrap-Up

今回は窓の断熱性能について、いくつか仕様を変えて総括伝熱係数 U値を計算してみました。まあ、この程度のU値なんですね。ケミカルプラントにおける保温配管における総括伝熱係数と同等か低めって感じでしょうか。ネットで調べてみると、今回計算してみたような 2層ペアガラス以外にも low-e ガラスを使ったり、中空層にアルゴンを封入したりとか いろいろあるみたいです。また、「框」部分材質をアルミじゃなくて樹脂製にするってのも 有るみたいです。夏も問題ですが冬の場合は「結露」が起こりますけど、アルミ製だと顕著ですね~。

それと、今回計算したような事は 板ガラス協会のホームページにある 「窓ガラスの光熱性能計算ツール “TOP-G”」 で出来ますね。同じ条件でエイッと計算してもらうと 総括伝熱係数 は 3.33 [W/m2  K] だったんで まあ合ってるかなと。う~ん便利ですね。2層ペアガラスでもまあ効果は有りますが、Low-e ガラスで中空層はアルゴン封入タイプだと U値は 1.4 [W/m2 K] とかまで下がるみたいですね。金属とかをコーティングして 放射率を下げてるんですね。んで、アルゴンの熱伝導率は空気と比較すると3割ほど低いですね。なんですが、外壁とか屋根とかだと 0.4 [W/m2 K] くらいにはなるようです。まあ、断熱材を分厚く施工すれば可能なのかなと。

因みにですが、今 有る 窓の厚みはどれくらいなのか? 良く分からない場合もありますよね。そんな時は、ガラス板厚計を使えば実測出来ますね。超音波的なものとかキャリパー的なものとかも有りますが、光学的手法が手っ取り早いですね。Amazon でガラスシクネスゲージで検索するとヒットします。複層ガラスでもOKですね。

今回は取り上げませんでしたけど、日射の影響も実は大きいですね。下図は大きめの掃き出し窓が西向きに設置されていると想定し、8月13日 午後4時における日射を再現しています(場所は東京)。う~ん、右側の家だと日射が窓から思いっきり室内へとさしこんでいます。これは暑いですね。ですが、左側の家のように日除けを設置しますと、見て分かるように影になってますんで だいぶマシかなと思います。


参考書籍・文献  References

  1. 「JIS R3107 建築用板ガラスの熱貫流率の算定方法」


web site


  1. https://www.itakyo.or.jp/info/info_20200529.html
    窓ガラスの光熱性能計算ツール “TOP-G” の公開について





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