さて、今回はグラスライニングインペラの撹拌動力について取り上げます。撹拌動力と言えば、このブログでも非常にお世話になっている名工大グループの一連の研究がありますが、その一環として 2024年 化学工学論文集 第4号で発表された論文です。グラスライニングインペラと言えば一般的なのはファウドラーインペラ Pfaudler Impeller ですね。ファドラーは企業名なので、より一般的には 3枚羽根 後退翼 3-Blade Retreat Curved Impeller と呼びますね。
で、グラスライニング処理されているインペラとかバッフルは、大抵 角が落としてありますね。角ばっている状態ではうまくガラスが載らないんだと思いますけど。そんな状態のインペラやバッフルの組み合わせにおける撹拌動力計算式は、実はこれまで有りませんでした(以外ですね)。典型的なのはグラスライニング処理したファウドラーインペラとビーバーテールバッフルの組み合わせですね。特にこのビーバーテール Beaver Tail ってのが難物で、角が無い分 フラットよりは効きが弱い 即ち 撹拌動力が小さくなるんだろうな~と思いますけども、実際どうなのかは不明でした。
また、グラスライニングしてなくても、ビーバーテール形状になっているバッフルを使った場合の撹拌動力を計算する事もしましたね。結局は、バッフル幅を少し小さめにして対応したかなと思いますけど。ビーバーテールのビーバーは動物のビーバーで、その尻尾のように平べったくて厚みが有る感じですね (下図参照)。まあ、そこいらの撹拌動力を計算してみようかなと。
※ 何と 今回は久しぶりに自分で図を描きました。さすがにグラスライニングしたファウドラーインペラの画像と指定しても、まあ出てこないですね。そして、やはり自分で描くのは多分に面倒くさいです・・・。
撹拌動力計算式 Agitation Power Calculation Equations
✔ ファウドラーインペラ Pfaudler Impeller
参考文献に記載されている撹拌槽とインペラの形状・寸法は下図のとおりです。ラボ用なんでこの程度の大きさですね。で、バッフルですが フラットタイプよりはずんぐりしていますね。寸法を見るとバッフル厚さと同じ径の円を2つ並べた断面になっていますね。
✔ 撹拌動力 計算式 Agitation Power Calculation Equations
そして、計算式ですが 名工大グループが発表している動力式のうち、プロペラ インペラ用の式が適用出来るとあります。まあ、確かに形状は似ていますね。ただし、ファウドラーインペラはリブ部分に対して直角に設置されているので角度は 90度として計算します。で、いつもの計算式群は下図のとおりです。
計算例 Examples
✔ 動力曲線 Re - Np Curve
まずは動力曲線を計算してみます。バッフルはビーバーテールタイプですが、設置数は 0,1,2 の 3種類とします。こんな程度の弱めのバッフルでも、それなりに効きは有りますね。ですが、1個設置しても2個設置しても 動力数は同じくらいなんで、3個以上設置するのはあまり意味が無いですね。
ただ、ラボで実験しているのは 1種類のビーバーテールバッフルなんで、断面の縦横比とかが変わったらどう影響するのかは少し気になりますね。んでも、バッフル効果を左右するのは 設置数と幅なので、あまり細かくみても意味が無いのかなとも思います。実は、前記の一連の計算式ですが バッフルに関しては幅と個数しか無いですね。なので、厚みが薄いとか角が丸いとかの因子は無いんですね。計算式中の係数値を比べてみると、プロペラインペラのそれと全く同じです。それでも、実験データがそれなりに相関出来ていると言う事は、そこまで影響は無いと言う事なのかなと。まあ、はっきりとは分かりませんけど。これが、邪魔棒のようになったら影響は有るのかも知れませんけど。
余談ですが、久しぶりに動力計算をやりましたが、式が複雑なんでやはり大変でした。最初は、作成済みのEXCELシートから 傾斜パドルとかの計算式をエイッとコピーして持ってきましたが、何か怪しい結果になりましたね。もちろん、係数値はきちんと修正したつもりでしたけど・・・。なので、結局 全部最初から入力し直しましたね。まあ、きちんと入力すればきちんとした結果になりますね。
ただ、ラボで実験しているのは 1種類のビーバーテールバッフルなんで、断面の縦横比とかが変わったらどう影響するのかは少し気になりますね。んでも、バッフル効果を左右するのは 設置数と幅なので、あまり細かくみても意味が無いのかなとも思います。実は、前記の一連の計算式ですが バッフルに関しては幅と個数しか無いですね。なので、厚みが薄いとか角が丸いとかの因子は無いんですね。計算式中の係数値を比べてみると、プロペラインペラのそれと全く同じです。それでも、実験データがそれなりに相関出来ていると言う事は、そこまで影響は無いと言う事なのかなと。まあ、はっきりとは分かりませんけど。これが、邪魔棒のようになったら影響は有るのかも知れませんけど。
余談ですが、久しぶりに動力計算をやりましたが、式が複雑なんでやはり大変でした。最初は、作成済みのEXCELシートから 傾斜パドルとかの計算式をエイッとコピーして持ってきましたが、何か怪しい結果になりましたね。もちろん、係数値はきちんと修正したつもりでしたけど・・・。なので、結局 全部最初から入力し直しましたね。まあ、きちんと入力すればきちんとした結果になりますね。
✔ 量産スケールでの撹拌動力 Commercial Scale Agitation Power
せっかくなんで、量産スケール撹拌槽で撹拌動力を計算してみました。参考文献のラボスケール撹拌槽を 寸法比で 20倍、体積比だと 8000倍 スケールアップしています。で、液は常温の水ですね。回転数を変えて撹拌動力と単位体積当たりの動力を計算してみると下図の結果となります。
液量が 44 [m3] あるんで それなりに動力は必要ですね。また、単位体積当たりの動力 Pv は 0.3 [kW/m3] くらいでしょうか。こちらもそれなりにありますんで、一般的な均一化とかであれば十分かと思いますね。
液量が 44 [m3] あるんで それなりに動力は必要ですね。また、単位体積当たりの動力 Pv は 0.3 [kW/m3] くらいでしょうか。こちらもそれなりにありますんで、一般的な均一化とかであれば十分かと思いますね。
で、ラボスケールと量産スケールの撹拌槽の大きさを比較すると下図のような感じですね。まあ、そこそこのスケールアップにはなりますね。また、このビーバーテールバッフルですが 槽壁に設置する事はしないですね。まあ、やってやれないことも無いとは思いますけど グラスライニング施工をする際に大変そうですよね。なので、上部鏡板のノズルからぶら下げる感じになるのかなと。なので、幅の大きなバッフルを4個設置するとかは難しいんだと思います。出来上がったグラスライニング撹拌槽にノズルから挿入して設置するんで。問題無い範囲で小さめにして、かつ個数も少なめの方が良いですよね 手間的にもコスト的にも。
まとめ Wrap-Up
今回はグラスライニングインペラの撹拌動力について計算してみましたが、まあ特にグラスライニングだからこの計算式!って訳でも無いですね。ビーバーテールバッフルってのがグラスライニングならではでしょうか。また、下部撹拌 Bottom Entering のファウドラーインペラについては 韓国に居た際に検討しましたが、SUS304製でも角は丸めてありましたね。そこまで丸っこいって感じでは有りませんでしたけど。まあ、いろいろとハンドリングも大変なんで角は落としておきますよね普通は。
参考文献には、ファウドラーインペラ以外にも 2枚羽根のインペラについての実験結果も有りましたが、同じ計算式で計算出来ますね。まあ、実用的には、名工大グループの計算式を用いて、とりあえずフラットプレートタイプのバッフルとして計算しておけば特に問題は無いのかな~と思います。多少は大きめの動力になるのかなとは思いますが、いずれにしても 幾分の余裕は含めて仕様を決定しますしね。グラスライニング反応器とかだと、ビーバーテールタイプや邪魔棒タイプ、そしてフィンガータイプが多いんでしょうか。フィンガータイプとかだと 文献とか書籍とかをあたってみても、まず載ってないですね。また、デルタタイプってのも有って 参考文献にはその実験結果も載ってますね。ファウドラーインペラでは無いタイプのインペラだったんで取り上げませんでしたけど。デルタタイプってのは三角形(デルタ、Δ) を壁面にピタッとくっつけて設置するものですね。なので、バッフルと壁面との間には隙間が有りません。閉塞を嫌うような場合にはこのようなタイプを採用しますね。実際に見たことが有りますね、少し特殊な撹拌槽でしたけど。撹拌動力も計算したと記憶していますが、とりあえずフラットタイプとして計算したかな~と思います。
参考文献には、ファウドラーインペラ以外にも 2枚羽根のインペラについての実験結果も有りましたが、同じ計算式で計算出来ますね。まあ、実用的には、名工大グループの計算式を用いて、とりあえずフラットプレートタイプのバッフルとして計算しておけば特に問題は無いのかな~と思います。多少は大きめの動力になるのかなとは思いますが、いずれにしても 幾分の余裕は含めて仕様を決定しますしね。グラスライニング反応器とかだと、ビーバーテールタイプや邪魔棒タイプ、そしてフィンガータイプが多いんでしょうか。フィンガータイプとかだと 文献とか書籍とかをあたってみても、まず載ってないですね。また、デルタタイプってのも有って 参考文献にはその実験結果も載ってますね。ファウドラーインペラでは無いタイプのインペラだったんで取り上げませんでしたけど。デルタタイプってのは三角形(デルタ、Δ) を壁面にピタッとくっつけて設置するものですね。なので、バッフルと壁面との間には隙間が有りません。閉塞を嫌うような場合にはこのようなタイプを採用しますね。実際に見たことが有りますね、少し特殊な撹拌槽でしたけど。撹拌動力も計算したと記憶していますが、とりあえずフラットタイプとして計算したかな~と思います。
で、このグラスライニングですが 韓国に居た際には 一度だけですが、いろいろと検討しましたね。それはポリマーでは無くて化成品でしたけど。なかなかにエグい原料でして、反応させると塩化水素ガスが出てくるんですね。なので、当然 グラスライニング反応器でしたし、その反応器に連結されているコンデンサーはグラファイト製でした。う~ん、こんな熱交換器もあるんだな~と思いましたね。それ以外にもいろいろと気を使って設計して、仕様を決めました。で、その案件はオジャンでした・・・。んでも、いろいろと検討したりして面白かったですね。物質・熱収支から始まって、機器仕様とか プラントレイアウトとかもしましたね。プラントレイアウトとかを考えてる時が一番気楽で面白いですね。「え~っと、こっちからフォークリフトが入って来て製品を持ち出して」とか。
その際に、グラスライニング反応器についても検討したり図面を描いたりしましたね。グラスライニングと言えば色が濃い青なんですね。ガラスの種類にもよるんでしょうけど。日本のメーカーだと 神鋼環境ソリューションさんとか NGKケミテックさんなんでしょうか。NGKケミテックさんは 以前の池袋琺瑯工業さんですね。神鋼環境ソリューションさんは以前は神鋼パンテックで、更にその前は神鋼ファウドラーですね。今回取り上げたファウドラーインペラーのファウドラーです。日本企業に居た際にはいろいろとお世話になりましたね。神戸の西神にある研究所とか、播磨の製作所にも行った事が有りますね。泊りがけの出張の際には、神戸牛のステーキを食べましたけど(もちろん接待で) 旨かったですね!
その際に、グラスライニング反応器についても検討したり図面を描いたりしましたね。グラスライニングと言えば色が濃い青なんですね。ガラスの種類にもよるんでしょうけど。日本のメーカーだと 神鋼環境ソリューションさんとか NGKケミテックさんなんでしょうか。NGKケミテックさんは 以前の池袋琺瑯工業さんですね。神鋼環境ソリューションさんは以前は神鋼パンテックで、更にその前は神鋼ファウドラーですね。今回取り上げたファウドラーインペラーのファウドラーです。日本企業に居た際にはいろいろとお世話になりましたね。神戸の西神にある研究所とか、播磨の製作所にも行った事が有りますね。泊りがけの出張の際には、神戸牛のステーキを食べましたけど(もちろん接待で) 旨かったですね!
参考文献・書籍 References
- 「種々のグラスライニング撹拌翼の動力相関」
化学工学論文集 第50巻 第4号 2024年 - "Correlation of Power Consumption for Propeller and Pfaudler Type Impeller"
Journal of Chemical Engineering of Japan Vol.42 No.1 2009
web site
- 神鋼環境ソリューション グラスライニング技術
https://www.kobelco-eco.co.jp/product/process/glasslining/
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