今回は篩分け Sieving について取り上げます。毎回 粉モノではお世話になっている粉体工学用語辞典には以下のように記載されています。
"ふるい網を用いて粒子群を網の目開きより大きい粒子と小さい粒子に分離する操作。100 µm 以上の粉体の分級にはほとんどふるい分けが適用される。ふるい分けは分級効率が高く,操作も容易であることから微粉体への適用も広がり,現在では 3 µm までの微粉体のふるい分けが可能である。"
調理やお菓子づくりとかでも使いますね。ネットで調べると 「粉ふるい」でヒットします。大抵 ピカピカのステンレス製で、目開きは そこそこ細かい感じでしょうか。で、粉ふるいを使う理由としては、ダマを取り除く、空気を含ませてふっくらさせるとの事です。まあ、使っている場面を見てると粉は全部 ふるいを通過してますね。よっぽど大きなダマと言うか異物が混入していれば分離されますけど。
実務ではもっぱらポリマープラントに携わってましたけど、重合工程や脱モノマー工程を経て得られた溶融状態にあるポリマーを冷却固化させて製品にします。で、その製品ってのはペレット Pellet にするのが一般的ですね、例えば 直径 2mm × 長さ 2mm の円筒形とか。その為には造粒機 Pelletizer を使うんですが、全部が全部 このサイズになってくれる訳では無くて、微粉が発生したり、ペレットが複数くっついた状態のものが発生します。で、それを製品として出荷する事は出来ないので、オーバーサイズとアンダーサイズのペレットを分離しますが、処理量も結構 大きいので、振動篩 Vibrating Screen を使いますね。
とまあそんな感じで篩分けについて少し計算してみようかと。
篩分 Sieving
✔ ふるい Sieve
篩分操作に用いるのは ふるい網とかふるい板でしょうか。金属・樹脂製の線を編んで製作するのがふるい網で、一方 金属・樹脂製の板に円形や矩形の孔を開けたものがふるい板です。で、正方形のふるい網については 以下のような寸法が設定 出来て、それらを使ってふるいの特性が決まります。
寸法と言っても、線径 wire diameter ,d と目開き Open Area size, a しか無いですね。 で、得られるのは開孔率 (空間率) Percentage of Open Area となります。線径が同じで目開きが大きくなれば スカスカ のふるい網となります。この場合、粉粒体の通過量は増えますが強度が不足しますんで、網が変形して目開きが変わったり 最悪 破断しますね。また、ふるい網については例えば 50 メッシュ とか言ったりしますが、これは 1 インチ当たりの目開き数です。
上記の計算式を用いて 50 メッシュの網について線径を変えて開孔率を計算してみると以下のとおりです。線径によって開孔率は大きく影響を受けますね。これを絵にしてみるとハッキリと分かりますね。図中の Aperture は 目開きの事ですね。
✔ 分離粒子径 Separation Particle Size
下図のように、正方形の目開き a を有するふるいを 粒子径 x の粒子 1個が通過しようとする状況を想定します。確実に粒子が目開きを通過するには 図中の斜線部分を通過する必要が有ります。網線に粒子がちょっとでも触れたら、はじき飛ばされて通過出来ないものと考えます。この時の通過確率 P は斜線部分の面積比と同じなので式③が得られます。で、これは1回だけの通過確率なんで これが i 回 繰り返すものと考えると 式③を i 乗すれば良いですね。で、ここでふるい上に残留する確率を r として式④が得られます。
ここで 式④両辺の対数をとって式⑤とし、右辺をマクローリン展開して 1項目だけを採用すれば 式⑥となります。で、更にふるいに投入した粒子の 50% が残留する時の粒子径を x0.5 とすれば式⑧が得られます。目開き a はふるい網の仕様として決まっており、となると篩分の性能ってのは 粒子とふるいとの接触と言うか衝突回数 i に左右されるって事になりますね。で、回分式の篩分であれば 衝突回数 i は 処理時間 t に比例し、連続式の篩分であれば 篩長さ L に比例するものと考えれば 式⑨と⑩が得られます。例えば、連続式に適用される式⑩を見ると、篩長さ L をいろいろと変えて x0.5 のデータを採取しグラフにプロットすれば、切片として a が得られ、勾配から 比例定数 ξc が得られるとの事ですね。
下図 上段グラフは 相対粒子径に対して残留粒子確率をプロットしたもので 衝突回数を変えています。まあ当たり前ですけど 目開きと粒子径が近くなると篩上に残留するようになります。隙間が小さくなるんで通過しにくくなりますよね。で、下段グラフは衝突回数に対して残留粒子確率をプロットしたもので相対粒子径を変えています。目開きに対して粒子径が小さいと、少ない衝突回数で粒子は全部通過します。一方、粒子が大きくて目開きとの隙間がほとんど無いような場合、何百回も衝突させないと通過しないとなりますね。で、考えてみると衝突回数ってのは 篩を揺すったりトントンと叩くような動作に起因するって事ですよね。実際、篩を使うときって何気なくやってますよね。
振動ふるいの処理能力 Capacity of Vibrating Screen
✔ 振動ふるい Vibrating Screen
✔ 基準処理能力法 Gluck の方法 Gluck's Method
この基準処理能力ですが、以下の条件における基準処理量なんですね。ここで、ハーフサイズ粒子は 目開きの 1/2 の粒子径を持つ粒子で、オーバーサイズは目開きよりも大きな粒子径を持つ粒子です。
- 目開き形状 正方形
- 開孔率 50[%]
- ハーフサイズ 粒子比率 40[%]
- オーバーサイズ粒子比率 25[%]
- かさ密度 1.6 [ton/m3]
- 分離効率 85 [%]
なんですが、いつもいつも基本条件の粉粒体を処理する訳では無いですよね。そんな時はどうするかと言うと補正するんですね。以下のような補正値が記載されています。
✔ 計算例 Examples
まとめ Wrap-Up
さすがに実務では仕様を決定するような事は有りませんでしたけど、現場に行くと普通に稼働してましたね。振動モーターの稼働音とか、ペレットがザーッと移動してる音がしていたように記憶しています。まあ、決して静かでは無いですよね・・・。
参考書籍・文献 References
- 「粉体技術ポケットブック」 工業調査会 1996年刊
- 「図解 粉体機器・装置の基礎」 工業調査会 2005年刊
- 「粉体工学叢書 第3巻 気相中の粒子分散・分級・分離操作」 日本工業新聞社 2006年刊
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