今回は水の蒸発速度 Water Evaporation Rate について取り上げてみます。例えば、雨が降ると地面に水溜りが出来ますけど、いつの間にか無くなってますよね。これは、水溜りの表面の水が空気中に蒸発して、どっかに行ってしまった結果です。また、ケミカルプラントでも水の蒸発が関係する場合が有ります。例えば、粉粒体の定率乾燥期間では 表層にある水が蒸発するので、水面からの蒸発と同じですね。
まあ、現象としては物質移動になりますが 物質移動速度は 駆動力である水蒸気圧差と物質移動係数との積となります。このブログでも 「身のまわりの化学工学」シリーズの衣類の保温性において物質移動係数の推算式をいくつか紹介しました。で、多分に被る部分もあるんですが 対流蒸発の実験式について いくつか紹介した上で、蒸発速度を計算してみようかなと。それと、普通は静止蒸発面で空気が流動しているんですが、運動蒸発面と言って ベルトコンベアのように走行している面からの蒸発速度とか、軸回りに回転する円筒や円板からの蒸発速度などについても推算式が有ったりしますね。
実務においても 乾燥機における蒸発量とかを推算する機会は何回か有ったように記憶しています。乾燥が関係する案件であれば、蒸発速度を推算する事は必須となりますね。また、ウォーターバスの水面から盛大に湯気が立ち上っている状態ってのも有りましたけど、こんな状況での水の蒸発速度ってのも 場合によっては重要になりますね。
今回 主に参考にしたのは 「湿度と蒸発」 コロナ社 2000年刊で、著者は 上田 政文 先生です。群馬大学 名誉教授との事です。教育学部で教鞭をとられていたようですが、林産学がご専門との事で、水の蒸発速度とか湿度測定などいろいろと研究されていたようです。と、その上田 政文先生ですが 2010年にご逝去されたとの事です。
水の蒸発 Water Evaporation
✓ 水蒸気の移動 Water Vapor Transfer
物体表面と周囲の空気の間に水蒸気圧差が有ると水蒸気の移動が起こります。表面と水蒸気圧 eS と空気の水蒸気圧 e とすると、 e < eS であれば水蒸気は空気中へと移動 即ち 蒸発します。逆に e > eS であれば空気から表面へと移動 即ち 凝縮します。この時、表面のごく近傍には拡散層が出来ます。で、この拡散層の厚さは 表面の広さ (物体の大きさ)、形状、風速、流れの状態によって影響を受け、1[cm] よりも大きくなったりする一方 2~3 [mm] となる事もあります。
で、参考書籍には 水面上の水蒸気圧分布の実測例が有ったので それを図に描いてみると下図のようになります。拡散層の厚みは 1.5 [cm] くらいでしょうか。水面では相対湿度は 100 [%] となってますんで、飽和しているんですね。そして、水面温度はバルク温度よりも少し低くなっています。
✓ 拡散係数 Diffusion Coefficient
✓ 水の蒸発速度 計算式 Water Evaporation Rate Equations
▶ 静止蒸発面 Static Surface
- 自然対流 上向き面 円形・正方形
- 自然対流 下向き面 円形・正方形
- 自然対流 垂直面 正方形
- 強制対流 平板 正方形
- 強制対流 平板 正方形 前縁部に障壁有り
- 走行蒸発面
- 円筒蒸発面
- 円板蒸発面
計算例 Examples
✓ 自然対流 蒸発速度 Natural Convection Evaporation Rate
まずは 自然対流における蒸発速度を計算して、蒸発面の向きや大きさの影響を見てみます。とその前に、拡散係数 K がどの程度の値になるのかを計算した結果が下図となります。まあ、大きさ的にはこれくらいなんですね。で、温度が変わると結構 K の値は変わりますが、温度が上がると K は増加します。一方、圧力の影響も有りますけど 圧力が高くなると K は小さくなるんですね。
✓ 強制対流 蒸発速度 Forced Convection Evaporation Rate
✓ 運動蒸発面 回転円板 蒸発速度 Moving Surface Rotating Disc
最後に運動蒸発面である回転円板における蒸発速度を計算した結果です。グラフ中の計算式は 1気圧 15℃ の乱流域に限定して使えるものとなります。結構 ガンガン回転させても この程度の蒸発速度なのかな~と思います。
まとめ Wrap-Up
で、参考書籍ですが 蒸発速度 計算式だけでは無くて 湿度の測定法とか蒸発速度の実測方法について詳細に記載してあるので そちらも参考になりますね。一般的な化学工学関連の書籍だと計算式は有りますけど、実験手法とか方法にはあまり触れていないのが普通なので。今回は触れてませんけど、物体表面の拡散流束を求める為に 微小な湿度計を使って 拡散層の湿度を実測しています。例えば、土壌とか果物の「ミカン」とか。ちゃんとキレイに湿度分布が得られているんですね。まあ、何回も試行錯誤して実施したんだと思いますけど。大学の時は似たような事をしていたので、大変だろうな~と思いますね。
※今回も Google Gemini で作成して貰いました。雨上がりの都会の道路ですね。
参考書籍・文献 References
- 「湿度と蒸発 基礎から計測技術まで」 コロナ社 2000年刊










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