今回は粉砕 Size Reduction について取り上げます。まあ、例えば 石のような固体の塊を細かくする操作という事でしょうか。で、例によって粉体工学用語辞典には以下のように記載されています。
「物質を砕いて粉にする操作。粉砕する原料を砕料,製品を砕製物という。粉砕で取り扱う砕料または砕製物の大きさは、数十 cm から数 µm 以下までであり、砕製物の大きさが数 cm 以上の場合には粗砕、数 mm 程度の場合は中砕、数十 µm の場合は微粉砕、数 µm 以下の場合は超微粉砕と呼ぶ。粉砕を表わす英語にはいろいろあるが、細分化の概念のときは comminution、size reduction、破砕・粗砕の概念のときは crushing、微粉砕、摩砕のときは grinding 、微粉砕・微粒化、微粉化のときは pulverizing が用いられる」
で、粉砕の目的としては以下の項目が挙げられています。塊が粉になれば当然 表面積は増加します。単体分離度と言うのは、例えば鉱石を粉砕して単体粒子とした時、特定の鉱石の総量に対してどれくらいの割合が単体粒子として存在するかの尺度、と有ります。欲しい鉱石が他の鉱石と混ざらずに、単体の粒子として存在する方が何かと便利ですよね。んで、単体粒子とする為には粉砕する必要が有ります。また、多成分固体の均一混合ですが、デカい塊にいくつかの成分が偏在して含まれているのであれば、塊を粉砕して細かい粉にすればより均一に混ざります、多分。そして、メカノケミカル効果ですが、固体に加えられた剪断応力によって、その化学的活性を増大させる効果、とあります。メカニカルな作用によってケミカルな反応を促進させるんですね。
- 比表面積の増大 Increased Specific Surface Area
- 単体分離度の向上 Improved Degree of Separation
- 多成分固体の均一混合 Uniform Mixing of Multi-Component Solids
- メカノケミカル効果の発現 Mechanochemical Effect
粉砕とは? What is Size Reduction ?
✓ 単一粒子の破砕モデル Single Particle Crushing Model
粉砕ですが、単一粒子について考えると要は粒子に外力を加える事によって、切ったり折ったり、こすったり、ぶつけたりする行為となります。また、粒子には圧縮強度とか引張強度などの値があるので、加えた外力がその値よりも大きければ粒子は破砕されます。参考書籍には単一粒子の破砕モデルとして下図のように説明されています。a) 圧力 Press 粒子に面圧を加える
b) 打撃 Hit 粒子を叩く
c) 圧力 Press 粒子に線状・点で圧力を加える
d) 剪断応力 Shear Stress 粒子をすりつぶす、こする
e) 反発 Impact 粒子を壁にぶつける、粒子同士をぶつける
もちろん、単一粒子としてだけでは無く、粒子群というか粒子層に面圧を加えたり 剪断応力を加えたりしても破砕は起こりますね。また、使用する粉砕機によって どの 破砕モデルが主に影響するのかが異なるようです。例えば、ジョークラッシャーでは a) 面圧による破砕が支配的で、ボールミルでは b) 打撃による破砕が支配的となるようです。
✓ 粉砕機の種類と概要 Types and Overview of Crushers
で、粉砕機と一口に言っても様々種類が有るんですが、ザックリとどんな種類が有るのかを見てみます。
- 粗砕機
ジョークラッシャ、コーンクラッシャ、インパクトクラッシャなどが該当します。岩石など 数百 [mm] 程度の砕料 (粉砕する前の原料) を強い圧縮力によって 数十 ~ 数 [mm] 程度まで粉砕します。構造などはメーカーさんのホームページとか書籍を参考して貰うとして、例えば ジョークラッシャ だとは歯板 Jaw Plate の間に砕料を供給しますが、可動側の歯板が動いて砕料を挟んで圧縮します。 - 中砕機
数十 [mm] の砕料を数百 [μm] まで粉砕します。ロールクラッシャなどが該当しますが、2つのロール間に砕料を供給して圧縮や剪断によって粉砕します。また、スタンプミルと言うものも有って、これは杵が落下して臼の中の砕料を粉砕すると言うものです。食品とか陶器原料調製などに使われているそうです。水車小屋で小麦粉を挽くって感じでしょうか。メーカーさんのホームページを見るといろいろと種類が有るようです。 - 微粉砕機
数 [mm] 以下の砕料を 数十 [μm] 以下まで粉砕する粉砕機で、数 [μm] まで粉砕するのであれば微粉砕機でサブミクロンまで粉砕するのであれば 超微粉砕機となるそうです。微粉砕機にはボールミルを使うものが多く、一般にはボールミルと呼ばれるとの事です。特に、円筒状容器を比較的 低速で回転させ、容器内のボールを持ち上げて落下させる事で打撃や摩擦を与えて粉砕するものは 転動ボールミルとして広く使われていますね。それ以外にも振動ミル、遊星ミル、媒体撹拌ミルなどがあるそうです。
また、ジェットミルというものも有って、ノズルから噴出する高圧気流に砕料を同伴させ、粒子相互あるいは衝突板との衝突による衝撃や摩擦により微粉砕するタイプとなります。熱感受性が強い物質をサブミクロンオーダーまで粉砕されるとの事ですが、処理量については限界が有るようです。
✓ 粉砕理論 Crushing Theory
粉砕操作ですが、勿論 いろいろと理論的な考察がされています。まあ、実績の無い新規な物質であれば ベンチスケールで実験をやってみてデータを取るんだと思います。そうすれば、こんな粉砕機をこんな条件で粉砕すれば、これくらいの粒子径がこんなに小さくなりましたってのは分かります。なんですが、それをどのように実機までスケールアップするのか?とかはやはり理論的な根拠と言うか裏付けが必要になりますよね。
で、粉砕操作ですが 大きな粒子が小さい粒子になる訳なんですが、この過程をどのように考えるのか? が重要となるようです。で、結論から言うと Rittinger の法則、Kick の法則、Bond の法則 が有ります。で、これらを総括した Lewis の一般式なるものが有ります。 式①が Lewis の一般式と呼ばれるものですが、左辺を見ると 粉砕による粒子径の変化は外部から加えられるエネルギーに起因と言う事を表わしています。即ち、dW だけエネルギーを投入すると、粒子径が dDp だけ変化します。そして、右辺を見ると粒子径の変化割合 dDp/dW は、粒子径の大きさ Dp に影響を受けると言う事を表わしています。まあ、定数値 kL も有りますけど。そして、この式①を良く見ると これって反応速度式と同じですね~。なかなか興味深いです。
そして、n = 2 として式①を積分して投入エネルギー W について解くと式②が得られますが、これが Rittinger の法則となります。また、 n = 1 とすると Kick の法則となり n = 1.5 とすると Bond の法則となります。これらの物理的な意味合いですが、参考書籍には以下のように記載されています。要は、Rittinger は 粉砕エネルギーは 表面積に比例すると考え、Kick は体積に比例すると考えたとあります。で、 Bond は折衷案として 両者の中間としたって事のようです。
- Rittinger の法則
「粉砕によるエネルギーは砕料の表面積の増加に比例する」 - Kick の法則
「幾何学的に相似な2つの物体が全く相似的な変形を受ける時、これに要する仕事量は両物体の体積または重量に比例する」 - Bond の法則
「一定量の均質な砕粉をある粒径にするのに必要な仕事量は砕成物粒子直径の平方根に逆比例する」
✓ ボンドの粉砕仕事指数 Bond's Work Index
前述の粉砕理論の各式ですが、粉砕エネルギー W を求めるにしても 不明な項目が有ります。それは 定数値 k ですが、例えば 特定の砕料について この値を把握しておけば 粉砕機に投入すべきエネルギーを推定出来ますね。で、式④において kB を 仕事指数 Wi としたのが式⑤となります。そして、いろいろな砕料について実験を実施して 仕事関数値を求めたと言う事かなと。
で、式⑤ですが基本的には式④と同じですが、いくつか補正係数があります。何故かと言うと、様々な物質の仕事指数を採取する為に用いる粉砕機仕様は 内径 8 [ft] の湿式閉回路ボールミルであり、内径が違ったり乾式粉砕であれば それを補正する必要が有ります。参考書籍では C6 まで載ってましたけど言及はされてませんでした。まあ、標準仕様の粉砕機で試験した際に追加の補正が必要なのであれば使うって感じでしょうか。
計算例 Examples
✓ 粉砕条件の変更 Crushing Condition Change
運転条件としては 砕料粒子径は 200 [mm] で砕成物は 50 [mm] で処理量が 10 [ton/hr] です。その時の投入エネルギーは 10 [kW] となったとの事なんですね。そして、同じ粉砕機を用いて処理量を 5 [ton/hr] まで下げて、もっと細かい粒子径まで粉砕してみた時の投入エネルギー推算値が下図 上段グラフとなります。処理量は減っても、粒子をより細かくするのであれば投入エネルギーは増加します。で、各計算式の違いですが Rittinger が最も大きく、Kick が最も小さいですね。そして、Bond は中間となります。まあ、そういう式なのでこんな結果になりますね。また、下段グラフは 砕成物 粒子径は 20[mm] に固定して、処理量を変えた場合の結果です。投入エネルギーは処理量増加にリニアに増加していますね。そして、3つの計算式の値は Kick < Bond < Rittinger となります。
✓ Bond の式による動力推定 Energy Input Estimation by Bond Equation
次に Bondの式⑤ を使って、仕事指数から粉砕機の投入エネルギーを計算してみます。砕料としては石灰石としますが、仕事指数は 12.72 [kWh/ton] とします。砕料 粒子径は 5000 [μm] とし、これを 0.5 [ton/hr] で供給します。砕成物の粒子径を変化させて計算した結果が、下図 上段グラフです。まあ、当然ですが細かく粉砕しようとすると 投入エネルギーも急激に増加しますね。また、砕成物 粒子径は同じで処理量を増やすと、投入エネルギーも比例して増加します。
まとめ Wrap-Up
今回は粉砕について取り上げて、粉砕機 動力についていくつか計算してみました。Bond の法則とか計算式を使えば、処理量と入口・出口粒子径からザックリとですが投入エネルギーが得られますね。一般的な物質とか塊状物を粉砕するのであれば、仕事指数の値を使ってエイッと投入エネルギー、即ち 電動機容量が計算出来る事になります。とは言いますけど、 実際の粉を使って粉砕試験とかをした上で、スケールアップするとかの過程が必要なのかなと思います。粉モノは何かと想定外の事が起こるというイメージが有りますんで。
ラボとかでも粉砕と言う操作はしばしば出くわしますね。例えば、固体試料を乳鉢と乳棒でゴリゴリとかグリグリっと粉砕する感じでしょうか。結構 硬い試料ですとメノウ乳鉢を使ってもなかなか粉砕されませんね~。乳棒を叩きつけると飛び散ったりして厄介です・・・。んでも、この投稿を書いていてふと思ったのが、ギューッと押し付けたり、叩きつけたり、グリグリとする操作ってのは、それぞれ 「面圧」、「打撃」、「剪断」に相当するんだな~と思いました。ずっとやってると指とか手のひらが痛くなったりしますから 、それなりに投入エネルギーも大きいのかな~と思いますけど。
以前 勤務していた韓国企業のプラントは主にポリマーを生産していましたけど、ペレットを粉砕する粉砕機ってのが有りましたね。コンパウンド工場とかでしたけど、粉体状ポリマーとペレット状ポリマーをエイッと押出機に投入してもなかなかうまく行きませんね。と言うのも、粉体状では まさに粉で 数百ミクロン程度の大きさかと思いますが、ペレットは粉とは程遠い 数ミリはある固体です。なので、溶融混練用の単軸押出機に投入しても溶融時間が大きく違うのでうまく融けなかったり混ざらなかったりします。なので、ペレットは粉砕してから押出機に投入しましょうって事になりますね。まあ、ポリマーなので全然硬くは無いので粉砕自体は楽ですね、多分。タイプとしてディスクミルとかだったかな~と。高速回転するディスクでグリグリすり潰す感じかなと。ポリマーなんで粉砕中に温度が上がると融着したりするんで、ごく短時間で処理するのが肝なんだと思いますね。
参考書籍・文献 References
- 「図解 粉体機器・装置の基礎」 工業調査会 2005年刊
- 「粉体技術ポケットブック」 工業調査会 1996年刊
- 「改訂6版 化学工学便覧」 丸善 1999年刊







コメント
コメントを投稿