化工計算ツール No.142 充填塔の圧力損失  Pressure Drop in Packed Column

 今回は充填塔 Packed Column の圧力損失について取り上げます。充填塔は棚段塔と同じく蒸留塔の一種ですが、中身は全然違いますね。パッと思いつく充填物と言えばラシヒリングとかでしょうか。まあ、蒸留操作なので気液を接触させる訳なんですが充填塔の場合は充填物 Packing の表面によって気液の接触を進行させます。参考書籍を当たってみると、以下のようにそれぞれの利点が列挙されています。

  • 棚段塔 Tray Column
    塔径 1[m] 以上で設備費が安い
    固形物や汚れにつよく、除去しやすい
    濡れ問題が無く、少ない流量に適す
    高液流量に適す
    熱除去が容易

  • 充填塔 Packed Column
    塔径 1 [m] 未満で設備費が安い
    理論段当たりの圧力損失が小さい
    腐食に強い材質が使いやすい
    発泡性に強い
    液ホールドアップ小は回分蒸留に向いている

ザックリと言うと、デカ~い塔では棚段塔でそこまででも無いのは充填塔でも OK って感じでしょうか。後、棚段塔は汚れに強いとか充填塔は圧力損失が小さいとかでしょうか。実務でも充填塔を扱った事は有りますね。ポリマープラントに設置している回収モノマーを精製する蒸留塔でしたが、不規則充填物の充填塔でした。何故充填塔なのか? を上司に質問したところ、シーブトレイだと孔が閉塞するとの事でした。まあ、モノマーなのでジワジワと重合しますし、そんなものなのかな~と。因みに充填物は ラシヒリングとかだったかなと。とまあ、そんな感じで充填塔の圧力損失を計算してみようかと。



充填塔とは ?  What is packed column ?


✓ 充填塔の構造  Structure of Packed Column

充填塔の構造は一般的には下図のようになります。塔が有って内部に充填物を充填します。もちろん、そのままだと落っこちてしまうのでサポートが必要となります。んで、蒸気については充填物の間隙をス~ッと上昇して適宜 分散されるのかと思いますけど、液についてはそんなに簡単では無いですね。なので、図にあるように液分配器 Liquid Distributor が絶対に必要になります。そうじゃないと偏流してしまい、十分な気液接触が期待出来ません。下図の構造では充填層は上部と下部に分割されていますけど、途中に液再分配器が設置されています。ここで、一旦液を集めた上で再度分配しています。原料液もここにフィードすれば良いですね。面白いのは再分配器の上にはチムニー Chimney と呼ばれる構造物が有って、下部充填層からの蒸気はここをくぐって上昇します。チムニーには屋根のような部分があって、上から降ってくる液はこの屋根の上を流下する様になっています。そうじゃないと、液がショートパスしてしまい、再分配される事無く 下部充填層に到達してしまいますね。



✓ 充填物  Packing

先程の図にあるように塔内には充填物が詰め込まれていますが、不規則充填物と規則充填物とに分けられます。

  • 不規則充填物 Random Packing
    不規則充填物とは充填塔に充填する際に上部からどんどん投入しますが向きとかは一切関係無く バラバラになってるんですね。例えば、竹輪を輪切りにしたようなラシヒリングといった単純な形状とか、ポールリング Pall Ring 、テラレット Tellerette のような少し複雑な形状のものもあります。ラシヒリング Raschig Ring は直径と長さが等しい形状で、磁製のものが多く使われるとの事です。充填物表面では気液が接触する訳なので、出来るだけ表面積を大きくする工夫がされています。金属製のポールリングは金属板に切り込みを入れて内側に折り込み、更にその板を丸めて円筒状にしたものです。また、テラレットとかはプラスチック製のものも有りますね。

  • 規則充填物 Structured Packing
    金網を折り曲げたような形状や孔の空いた板を折り曲げた形状など、表面積を大きくする工夫がなされており、材質は金属やプラスチックとの事です。これを丸い塔内に収まるようにして、更に積み重ねています。圧力損失が小さいのが特徴で、減圧蒸留や真空蒸留などで使われる例が多いようです。いろんな種類が有るんですが、不規則充填物のように一般的な名称が有るわけでは無くてメーカーさんの商品名で呼称される場合がほとんどなのかな~と思います。例えば、スルザー社のメラパック®とか。まあ、詳細はメーカーさんのホームページとかで参照して下さい。実物も見た事が有りますけどこんなのうま~く作るんだな~って感じですね。




✓ 充填塔の圧力損失特性  Pressure Drop Characteristics of Packed Column


圧力損失計算式について説明する前に充填塔の圧力損失特性について触れておきます。まず、下図 a ですが横軸はガス流量の対数で縦軸は圧力損失の対数となっています。充填塔に流すガス流量を増やしていくと、まあ当然ですが圧力損失も増大します。なんですが、不規則充填物でも規則充填物でも点AとBで示すような屈曲点が観察されるんですね。これはローディング点 Loading Point と呼ばれるもので、充填物表面が完全に液に覆われて 液相部が連続した状態になっているものとされています。それ以前では、充填物表面には液が流れていますが 途切れ途切れになってるんですね、多分。んで、同じ圧力損失値となる時のガス流量は 不規則充填物 < 規則充填物となります。と言う事は規則充填物の方がキャパシティが大きいって事になりますね。

そして、下図のb ですが ガス流量と圧力損失との関係をもう少し詳しく説明したものです。青色の線は L = 0 で液が全く流れていない場合の圧力損失となりますが、直線状になるんですね。で、そこから液流量を増やしていくと圧力損失は増大します。そして、やはり屈曲点が出現します。屈曲点 1 と 1' はローディング点と呼ばれます。で、更にガス流量を増やしていくと屈曲点 2 と 2' が出現してグイッと圧力損失が増大します。これは フラッディング点で液が降りてこなくなりますので、もはや運転は出来なくなります。それは棚段塔の場合と同じですね。なので、充填塔は 点 1 と 点 2 の間で運転する必要が有りますが、この領域をローディング域と呼びます。 とまあそんな感じで、充填塔においても圧力損失がどれくらいになるのか? を知るのはすごく重要って事になりますね。




✓ 圧力損失 計算式  Pressure Drop Calculation Equations


充填塔の圧力損失ですがレバ Leva の式やロビンス Robbins の式によって計算可能と参考書籍には書いてありますね。レバの式は工学単位系なのでまだアレですけど、ロビンスの式はフィート・ポンド単位系なのでいちいち変換する必要が有り正直面倒くさいです・・・。蒸留関係ではあるあるですね。で、このロビンスの式ですが 乾き充填物因子 Fpd なる数値が必要となりますが、これは別途 充填物ごとに与えられています。まあ、一般的な充填物については有りますね。逆に言うとこの値が無いと計算出来ません。



計算例  Examples


✓ ナッターリング Nutter Ring

早速計算してみますが、参考書籍には 空気 - 水系で 不規則充填物 ナッターリング No.1.5 を使用した場合の圧力損失計算例が有ったのでこれをトレースしてみます。ナッターリングですが、形状を説明するのはなかなか難しいです。なので、Google で検索してみてください・・・。条件は以下のとおりです。

  • 空気流量  1500 [lb/hr ft2]
  • 水流量   9000 [lb/hr ft2]
  • 空気密度  0.074 [lb/ft3]
  • 水密度   62.4 [lb/ft3]
  • 水粘度   1 [cp]
  • 塔操作圧  1 [atm]

計算結果は下図のようになりました。さすがにポンド-フィート系ではアレなのでSI単位系に変換しています。前述のとおり、どんどんガス流量を上げていくと圧力損失は単調に増加します (両対数グラフにおいて)。で、更に増やしていくと途中で傾きが変わってますね。この屈曲点が前述のローディング点になるのかなと。




✓ その他の充填物 Other Packings


せっかくなので他の充填物でも圧力損失を計算してみます。一般的な不規則充填物である ラシヒリング 1[inch] と規則充填物であるフレキシパック FLEXIPAC® について圧力損失を計算してみます。液流量、液物性・ガス物性はナッターリングの場合と同じ値として、ガス流量は変化させてみます。

計算結果は下図のとおりですが、規則充填物である FLEXIPAC の圧力損失が最も小さいですね。ナッターリングの半分くらいでしょうか。一方、ラシヒリングはものすご~く大きいです。構造は簡単で製作も楽なんだと思いますけど、圧力損失が大きいので処理能力の限界が有るよと言う事になるのかなと。それでも無理やりラシヒリングを使おうとすると、太い塔を使う必要があるので設備費などの初期投資が多くなりますね。因みにフレキシパック FLEXIPAC® は コークグリッチ Koch-Glitsch の商品名ですね。





まとめ  Wrap-Up

今回は充填塔の圧力損失について取り上げて、いくつかの充填物における圧力損失を計算してみました。Robbins の式を使うと 一応は圧力損失を計算出来ますね。なんですが、まあ実際に量産スケールの充填塔であれば 専門メーカーに設計・製作を依頼するのが普通だと思いますね。例えば、スルザー社とか前述のコークグリッチ社とか。日本だと住友重機械工業さんとかトウトクエンジさんが検索で出てきますね。

冒頭でも少し触れたように実務でも少しは検討した事が有りますね。回収モノマー精製用蒸留塔は充填塔だったんですけど、既に技術的な検討は終了していたのでデータシートの作成をしたりしました。で、これは別件となりますけどプロセス内を洗浄する際に使用する有機溶媒の精製用回分蒸留塔については詳細に検討しましたね。こちらも汚れが付着しやすいのでシーブトレイとかだと閉塞します。なので、充填塔を採用してましたけど充填物はラシヒリングですね。と言うか、ステンレスの 1 [inch] 配管を 長さ 1[inch] に切断して塔内に詰め込むんですね。まあ、溶媒中のオリゴマー分を分離するだけなんでお手軽で低コストなのが最優先だったかなと。その技術検討の際に、充填塔の構造とかについて調べたりしたんですね。もう 30年も前の話なんですけど、当時はまだネットとかも無いので 職場の資料室とか図書室とかに行って文献や書籍類をアチコチ探してましたね~。平成も遠くなりにけりです。



参考書籍・文献  References


  1. 「絵とき 蒸留技術 基礎のきそ」 日刊工業新聞社 2008年刊
  2. 「分離技術シリーズ10 実用蒸留技術」 分離技術会 2008年刊
  3. 「蒸留工学」 講談社 1990年刊
  4. 「分離技術シリーズ2 改訂新版 トレイ・パッキング」 分離技術会 2005年刊


Web Site


  1. 「コークグリッチ FLEXIPAC®」
      https://www.koch-glitsch.com/ja/product-lines/packing-internals/flexipac


















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