久しぶりに化学・化学業界の話題に関する投稿として「雪と氷のアレコレ」を取り上げてみます。季節は冬ですしね。 実家のある青森とかではものすご~く雪が降ってますね。例えば、豪雪で知られる「酸ヶ湯温泉」の本日の積雪量は 327センチメートルとの事です・・・。まあ、実家は太平洋側なので そこまでは雪は降りませんね。大学の時分はお隣の岩手県の盛岡市に住んでましたが、やはりそこまでは積もってなかったような。とは言っても、一晩に 30センチメートルくらいが積もっているってのも子供の頃は数年に1回は有ったように記憶しています。気象に関する情報も現在と比較すると格段に少なかったので、朝起きて窓を開けたらあたり一面 雪景色って感じでしたね。ただ、寝床の中にいても何とな~くそんな感じがするんですよね。何かシーンとしてて音が聞こえてこないんですね。まあ、こんだけ雪が降ると車とかバスなどの交通機関も完全にマヒしてますし、出歩く人も居ないですよね。それと、積もった雪は多孔質なので音を吸収するのかな~とか思いますけど。
※ このかまくらの画像も Google Gemini に作成して貰いました。まあ、実際に作ってみた事も有りますね。ただ、こんだけの量の雪を積み重ねるのは正直 大変ですよね。
雪の結晶 Snow Crystal
雪なんですが微視的に見ると、特徴的な形状を有する 結晶ですよね。で、それが集まって雪片として空から降ってきます。で、雪雲の中で水蒸気が凍って結晶となります。下図 上段は良く見る雪の結晶形状ですね。なんで、こんな形になるのかと言うと、水分子間に作用する水素結合によって六角形を構成するんですね。なんですが、この図に有るような樹枝状結晶 ばかりが出来る訳でも無いんですね。
その辺りを明らかにしたのが、あの 「雪は天から送られた手紙である」で有名な 中谷 宇吉郎 先生 (1900 - 1962) となります。1936年に世界で初めて人工的に雪の結晶を作るのに成功し、結晶形状が空気温度と水分量に影響を受ける事を明らかにしました。後に、中谷ダイアグラム Nakaya Diagram と呼ばれる事となります。その後、国際雪氷委員会の実用分類、Magono and Lee による気象学的分類などが提唱されたようですが、現在では ML 分類が使われる事が多いようですが、それによると 8大分類、39中分類、121小分類となるようです。 まあ、それは細かすぎるのでネットで良く見られる分類を参考にして描いてみたのが 下図 下段となります。
その辺りを明らかにしたのが、あの 「雪は天から送られた手紙である」で有名な 中谷 宇吉郎 先生 (1900 - 1962) となります。1936年に世界で初めて人工的に雪の結晶を作るのに成功し、結晶形状が空気温度と水分量に影響を受ける事を明らかにしました。後に、中谷ダイアグラム Nakaya Diagram と呼ばれる事となります。その後、国際雪氷委員会の実用分類、Magono and Lee による気象学的分類などが提唱されたようですが、現在では ML 分類が使われる事が多いようですが、それによると 8大分類、39中分類、121小分類となるようです。 まあ、それは細かすぎるのでネットで良く見られる分類を参考にして描いてみたのが 下図 下段となります。
この分類を見てみると、六角形の板状のものや、それが細長くなった柱状のもの、針状のものや樹枝状などが有る事が分かります。で、空気中の湿度が高くなると単純な形からより複雑な形状に変化しているのが分かります。にしても、何故こんなにも形状が異なるのか 全く分かりませんね。参考文献によれば、121の小分類にも当てはまらない結晶形状もまだ有るんだとか・・・。
雪の熱伝導率 Thermal Conductivity of Snow
冒頭に出てきた「かまくら」ですが、冷たい雪で作っているのに外よりも暖かい! などと言われますね。勿論、雪が積もるような気象条件なので外気は氷点下とかに冷えてますね。なんですが、かまくら内部に人が居たりすれば多少は気温が上がりますね。加えて、雪の熱伝導率が小さい事も影響していそうです。と言うのも、雪は氷と空気の混合物であり、御存知のとおり空気の熱伝導率は小さいですよね。0 [℃]における氷と空気の熱伝導率は以下の値となります。
- 氷の熱伝導率 2.22 [W/m K]
- 空気の熱伝導率 0.0242 [W/m K]
雪の熱伝導率を実験的に測定した例ってのは多数有りますね。参考文献に様々な研究者による実験結果が整理されています。この時、雪の熱伝導率に大きく影響するのは 「見かけの密度」となります。フワフワの雪とギューッと締まった雪では確かに熱の伝わり具合は違いそうです。で、何が違うかと言うと密度の値ですよね。参考文献に記載されている推算式を使って計算してみると下図のようになります。
調べてみると、フワフワの新雪だと密度は 100 [kg/m3] くらいで、少し締まった雪は 150 ~ 400 [kg/m3] 、一旦解けて凍った雪だと 400 [kg/m3] 以上になるとの事です。なんで、密度 100・200・400 [kg/m3] として計算して比較すると以下のようになります。う~ん、推算式で結構な差が有りますね。
氷は何故滑りやすいのか? Why is ice slippery?
北国育ちですが 道路に氷が有るのを知らずにスタスタ歩くと普通に転びますね・・・。ドスんと尻もちをついたり、おっとっとって感じでバッタりと手をついたりします。まあ、危険ですけど子供の頃であればそこまで体重が有る訳でも無いので怪我をするって事は有りませんでしたね。逆に地面に氷が有るのが見えたら、エイッと走って行って スイ~っと滑って遊んだりしてました。
で、氷が滑りやすい理由ですが文献を調べてみたりしましたが、百家争鳴で良く分からない部分もあるので AI に聞いてみました・・・。曰く、氷の表面には「疑似液体層」なるものが存在し、それは絶対零度に近い極低温においても形成されるんだとか。また、物体が氷の上を動く際にはその摩擦熱によって表面の氷をわずかに溶かして水膜が形成されます。この水膜の存在によって滑りやすくなりますが、スケートが良く滑る理由なんだとか。また、古典的な圧力融解説では「高い圧力が加わると氷の融点が低下して水になる」事によって滑りやすくなると説明されるんだとか。因みに氷が最も滑りやすくなるのはマイナス7℃なんだとか。
また、この疑似液体層 Quasi-Liquid Layers の存在については、2024年 慶応大学の研究グループが論文を発表しています。まあ、薄~い疑似液体層ってのは明らかに存在するって事らしいですが、その厚さは数分子層 0.9ナノメートルから最大 10 ナノメートルとの事です。
"In-layer inhomogeneity of molecular dynamics in quasi-liquid layers of ice"
Ikki Yasuda , Katsuhiro Endo, Noriyoshi Arai & Kenji Yasuoka
で、氷が滑りやすい理由ですが文献を調べてみたりしましたが、百家争鳴で良く分からない部分もあるので AI に聞いてみました・・・。曰く、氷の表面には「疑似液体層」なるものが存在し、それは絶対零度に近い極低温においても形成されるんだとか。また、物体が氷の上を動く際にはその摩擦熱によって表面の氷をわずかに溶かして水膜が形成されます。この水膜の存在によって滑りやすくなりますが、スケートが良く滑る理由なんだとか。また、古典的な圧力融解説では「高い圧力が加わると氷の融点が低下して水になる」事によって滑りやすくなると説明されるんだとか。因みに氷が最も滑りやすくなるのはマイナス7℃なんだとか。
また、この疑似液体層 Quasi-Liquid Layers の存在については、2024年 慶応大学の研究グループが論文を発表しています。まあ、薄~い疑似液体層ってのは明らかに存在するって事らしいですが、その厚さは数分子層 0.9ナノメートルから最大 10 ナノメートルとの事です。
"In-layer inhomogeneity of molecular dynamics in quasi-liquid layers of ice"
Ikki Yasuda , Katsuhiro Endo, Noriyoshi Arai & Kenji Yasuoka
で、この滑りやすさってのは「摩擦係数」 friction coefficient の値によって評価する事が出来ますね。そして、参考文献を見ると物体の滑り速度によって下図のように変化するようです (温度 マイナス 10℃)。滑り速度 1 [m/s] 程度であれば摩擦係数は 0.01 [ - ] くらいですが、すごく遅い滑り速度であれば 摩擦係数は 1 [ - ] となります。と言う事は、100倍くらい差異が有るって事になりますね。
んで、この氷の摩擦係数の実験結果ですが、「カーリングと氷物性」Curling and Physical Properties of Ice と言う文献に記載されていました。著者は北海道大学 名誉教授である 前野 紀一先生です。私が子供の頃はカーリングとかは有りませんでしたが、最近は冬季オリンピックなどでも活躍しているのでだいぶメジャーになったのかなと。大抵の人はテレビ中継等でカーリング競技を見たことが有るかと思いますが、ざっくりと言うと、4人一組のチーム戦で 28.3 メートル先のハウスと呼ばれる円に向けて各チームが交互に8回づつストーンを滑らせます。ストーンをハウスのより中心に近づけた方が得点を得ます。これを10回繰り返して総得点で勝敗が決まります。因みに、カーリング発祥は英国スコットランドで 16世紀初期には記録が有るそうです。
で、そのカーリング競技ですが 重さ 20[kg] のストーンをエイッとデリバーしますが、その速度は 1~5 [m/s] との事です。前述の滑り速度と摩擦係数との関係を見ると、デリバーした直後は滑り速度がそれなりにあるので摩擦係数は小さくなります。となるとスーッとストーンは滑って行きますね。なんですが、ストーンには初速度以外の外力は一切加わってませんので 徐々に速度は低下します。そして速度が低下するのに伴って摩擦係数は増加します。何かこう ググッとブレーキがかかる感じでしょうか。確かにカーリング競技の様子を見てると、スーッと滑ってきたストーンがハウス中心に近づくとスッと止まる感じですよね。
また、カーリング競技を見ているとデリバーされたストーンの前をブラシで激しく擦っていますね。これはスウィーピング Sweeping と呼ばれる動作で、そもそもはストーン前方のゴミや異物を取り除く為にしていたそうです。なんですが、ブラシを高速で往復させる事によって摩擦熱が発生して温度が上昇し、結果として氷の摩擦係数が低下します。となるとストーンは滑りやすくなりますんで、ストーンの動きをコントロール出来るって事になりますね。う~ん、漫然と見てましたけどあの動作にはそんな意味合いが有ったんですね。
また、デリバーされたストーンがハウスに近づくとククッと曲がる動きを見せるんですが、それはカール Curl と呼ばれるんだそうです。この動作についてはいろいろな研究者によって言及されているそうです。何かこう野球とかサッカーとかのボールが曲がるのと同じ様な感じに思えますが、実は全然違うんだそうですね。野球のボールが曲がるのはマグヌス効果 Magnus Effect によって説明は出来ますし、CFD 手法でゴリゴリと計算すればどっち側にどれくらい曲がりそうってのは計算出来ますよね。で、いろいろと調べてみると カールする理由については、ストーンと氷の接触面における摩擦係数の大小が影響しているようです。これまたいろいろな説が有って正直チンプンカンプンなんですが、2022年 立教大学の 村田 次郎先生が発表した論文が分かりやすいと言うか、しっくりと来ますね。下図のとおりです。
下図 a) はデリバーされたストーンの動きですが、エイッと押し出すと同時に反時計方向に回転させるんですね。そうするとストーンは左側にカールします。一方、テーブルの上で同じ様にガラスコップを反時計方向に回転させて滑らせると、回転方向とは逆向きに摩擦力が作用するのでコップは右側にカールするんですね。と言う事はガラスコップとストーンではカールする理由が異なるって事になりますね。で、ストーンが逆方向にカールする理由ですが b) に示すようにストーンの右側の速度は大きく、左側の速度は小さくなります。そうすると、右側の摩擦力は弱く、左側の摩擦力は強くなります。左右で摩擦力の掛かり方が異なるんですね。そして c) ですが 、ストーンの左右で摩擦力の差異が有ると左側の方が引っ掛かりが大きくなるので、その引っ掛かりを支点にしてストーンが左側に振り回される動きをします。結果としてストーンは左側にカールするって事になります。英文の原著論文も読みましたが、さっぱり分かりませんでした。なんですが、立教大学ホームページの研究紹介ページに分かりやすく説明してあったので何とか理解出来ました。下図もそのページに記載されている図を参考にして描いてみました。う~ん、複雑ですが面白いですね。
で、そのカーリング競技ですが 重さ 20[kg] のストーンをエイッとデリバーしますが、その速度は 1~5 [m/s] との事です。前述の滑り速度と摩擦係数との関係を見ると、デリバーした直後は滑り速度がそれなりにあるので摩擦係数は小さくなります。となるとスーッとストーンは滑って行きますね。なんですが、ストーンには初速度以外の外力は一切加わってませんので 徐々に速度は低下します。そして速度が低下するのに伴って摩擦係数は増加します。何かこう ググッとブレーキがかかる感じでしょうか。確かにカーリング競技の様子を見てると、スーッと滑ってきたストーンがハウス中心に近づくとスッと止まる感じですよね。
また、カーリング競技を見ているとデリバーされたストーンの前をブラシで激しく擦っていますね。これはスウィーピング Sweeping と呼ばれる動作で、そもそもはストーン前方のゴミや異物を取り除く為にしていたそうです。なんですが、ブラシを高速で往復させる事によって摩擦熱が発生して温度が上昇し、結果として氷の摩擦係数が低下します。となるとストーンは滑りやすくなりますんで、ストーンの動きをコントロール出来るって事になりますね。う~ん、漫然と見てましたけどあの動作にはそんな意味合いが有ったんですね。
また、デリバーされたストーンがハウスに近づくとククッと曲がる動きを見せるんですが、それはカール Curl と呼ばれるんだそうです。この動作についてはいろいろな研究者によって言及されているそうです。何かこう野球とかサッカーとかのボールが曲がるのと同じ様な感じに思えますが、実は全然違うんだそうですね。野球のボールが曲がるのはマグヌス効果 Magnus Effect によって説明は出来ますし、CFD 手法でゴリゴリと計算すればどっち側にどれくらい曲がりそうってのは計算出来ますよね。で、いろいろと調べてみると カールする理由については、ストーンと氷の接触面における摩擦係数の大小が影響しているようです。これまたいろいろな説が有って正直チンプンカンプンなんですが、2022年 立教大学の 村田 次郎先生が発表した論文が分かりやすいと言うか、しっくりと来ますね。下図のとおりです。
下図 a) はデリバーされたストーンの動きですが、エイッと押し出すと同時に反時計方向に回転させるんですね。そうするとストーンは左側にカールします。一方、テーブルの上で同じ様にガラスコップを反時計方向に回転させて滑らせると、回転方向とは逆向きに摩擦力が作用するのでコップは右側にカールするんですね。と言う事はガラスコップとストーンではカールする理由が異なるって事になりますね。で、ストーンが逆方向にカールする理由ですが b) に示すようにストーンの右側の速度は大きく、左側の速度は小さくなります。そうすると、右側の摩擦力は弱く、左側の摩擦力は強くなります。左右で摩擦力の掛かり方が異なるんですね。そして c) ですが 、ストーンの左右で摩擦力の差異が有ると左側の方が引っ掛かりが大きくなるので、その引っ掛かりを支点にしてストーンが左側に振り回される動きをします。結果としてストーンは左側にカールするって事になります。英文の原著論文も読みましたが、さっぱり分かりませんでした。なんですが、立教大学ホームページの研究紹介ページに分かりやすく説明してあったので何とか理解出来ました。下図もそのページに記載されている図を参考にして描いてみました。う~ん、複雑ですが面白いですね。
まとめ Wrap-Up
今回は「雪と氷のアレコレ」と言う事で雪の結晶、雪の熱伝導率 そして氷の滑りやすさとかカーリングについて取り上げてみました。にしても、すごく身近で日常的な現象ですけど未だに良く分かって無い事が多いんですね。雪の結晶にしても 100種類以上にも分類されているとか正直知りませんでした・・・。雪の熱伝導率については少しだけ関係があって、大学時代の研究では 結霜 Frost Formation を扱っていたので、伝熱面上に生成する霜層の密度を実測したりしてました。まあ、雪と霜とは結構違いますけども。それと、氷の滑りやすさから始まってカーリング競技について少しだけ触れてみました。今まではこんな感じなんだな~と思って見てましたけど、実は複雑な現象だったんだな~と思いますね。折しも、今年は冬季オリンピックが有りますけど、ちょっと気にして見てみようかなと思いましたね。
参考文献・書籍 References
- 「カーリングと氷物性」
日本雪氷学会誌雪氷 第72巻 第3号 2010年 - ”In-layer inhomogeneity of molecular dynamics in quasi-liquid layers of ice"
Communications Chemistry 2024 7:117 - "Study of curling mechanism by precision kinematic measurements of curling stone’s motion"
Nature Portfolio Scientific Reports 2022 12:15047 - 「氷、雪、および海氷の熱物性」
熱物性 第2巻 第2号 1988年
web site
- 「カーリングを巡る「世紀の謎」はいかに解明されたか」
https://www.rikkyo.ac.jp/closeup/research-n-faculty/2023/mknpps0000028xow.html - 「中谷宇吉郎 雪の科学館」
http://xn--yukinokagakukan-9k3zu54gno4r.kagashi-ss.com/






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