化学・化学業界の話題 Global Top 50 2025

 今回は化学・化学業界の話題として 毎年 このブログにアップしている  Global Top 50 の 2025年版について取り上げます。毎年この時期に C&EN, Chemical & Engineering News から発表される 化学系企業の売上高ランキングとなります。去年も同じ頃に取り上げましたけども、記事の冒頭で "The long chemical downturn continues to imperil the world’s top companies" との一文が有りまして、Google でエイッと翻訳してもらうと 「化学業界の長期にわたる低迷が、世界のトップ企業を依然として危うくしている」 との事です。まあ、芳しくは無いんですね・・・。

この辺りを数字で見ると、上位 50社の売上高合計は 9658億ドル で2024年から 5.8% 減少しています。また、化学事業における利益ですが 472億ドル で 19.5% の減少で 下げ幅も大きいです。2025年の円ドルの為替レートは 148.71円〜155.56円 との事なので、売上高は 143~150 兆円となり 利益は 7.0 ~ 7.3 兆円 となります。因みに あの世界的企業である Apple の 2025年度の純利益は 約 17兆円 なんだとか。まあ、エチレンのような単価の安い製品をドカドカ作って売るよりは、iphone のような利幅の大きい商品を作って売ったほうが 段違いに儲かるんですよね。とは言え、例えば コンビニに行けば ポリエチレンを使った製品と言うか容器や包装資材だらけですよね レジ袋もそうですし。それらが全然無い日常生活ってのは考えられないですよね。なので 化学製品は重要なんだな~とは思います。

と、それはさておき 何故 化学業界がパッとしないかと言うと、石油化学製品の過剰な生産能力に起因しているんだとか。そこで 各企業は コスト削減やら事業の再編などの対策を実施してるようです。そんな対策のおかげで 化学業界の景気低迷は 2026年か2027年には底を打ち、2030年には回復するとの見方が有るようです。なんですが、御存知のとおり 2026年2月28日に 米国とイスラエルがイランを先制攻撃しました。その結果 ホルムズ海峡が事実上 封鎖され、影響として 原油の輸送が滞る事態となりました。そして、現在に至る訳なんですが 石油関連製品が品薄状態となったり、製品価格が高騰したりしてますよね。となると、当然 それを生産している化学企業にも少なからず影響がある訳です。そんなこんなで 記事でも 「2026年が化学メーカーにとってどのような展開になるか、予測するのは困難です」と書かれています。まあ、そうですよね  戦争が終われば良いですけど そうじゃないとどうなるのか誰も分かりません・・・。そんな感じで パッとしない内容ですが 2025年の Global Top 50 について見ていきます。
  




Chemical Sales 2025


✓ 化学品売上高  Chemical Sales 2025


やはりと言うかやっぱりと言うか、2025年度の売上 第1位は BASF です。2位以下を大きく引き離しているのも いつもどおりです。そして Top 10 を見ると ほぼほぼ同じメンバーなんですね。そしてそして 2位 Sinopec 、3位 PetroChina 、4位 ExxonMobil ですが 化学品売上高が 全売上高に占める割合は 10 ~ 14% 程度です。なので、原油を石油精製して得られた中間品でついでに石油化学製品を作っているのかなと、多分ですけど。実際、4位 エクソンモービルは 化学企業と言うよりは 石油関連製品のメーカーと言うイメージの方が強いですよね。で、それ以外の企業は 化学品売上高 = 全売上高 となっています。また、セクターと言うか分野ですが 多角化、産業用ガス、石油化学などです。韓国の LG Chem は化学専業企業となります。



で、ふと思い出しました。このブログでも以前 触れたかと思いますけど、韓国在住時 勤務していた企業のプラントは 全羅南道 麗水市の 巨大 Complex 内に有りました。で、すぐ近くに LG Chem のすご~くデカいプラント群が有りましたね。私の担当では有りませんでしたけど通訳をしてくれていた女性が 確か LG Chem の方と結婚したんですね。後に、「旦那さんって何してるの?」 と聞いたところ 「エル・ディー・ピー・イー だったかな?」と答えてくれました。LDPE なので低密度ポリエチレンですね。業界ではローデンとか言うんでしょうか。  

また、日本企業ですが 16位に 三菱ケミカル 、19位に信越化学工業、22位に東レ、30位に住友化学工業、34位に三井化学、43位に レゾナック (旧 昭和電工と旧日立化成)、45位に旭化成がランクインしています。 で、これらの企業は ず~っとランクインしていますし、良いのか悪いのかは分かりませんけど 順位はほとんど変動していないです。堅実な経営って事になるんでしょうか。

それと、新しくランクインしたのが モロッコ Morocco の OCP と言う企業でした。う~ん、珍しいです。アフリカ大陸では 南アフリカ共和国の Sasol しか有りませんね。因みに Sasol は合成燃料とか化学品を手掛けている企業で、フィッシャー・トロプシュ法 Fischer-Tropsch process による石炭液化技術に特色があるようです。人種隔離政策で国際社会から経済制裁を受けていたので 自国の石炭から合成燃料を作っていたんだとか。で、OCPですが 自国のリン鉱山からリン鉱石を採掘・加工して リン酸や各種化学肥料を製造しているとの事です。初めて知りましたけど、モロッコはリン鉱石埋蔵量が世界最大級との事です。ホームページを見ると 全世界的に事業を展開していて、従業員は 17,000人との事です。肥料 Fertilizer を手掛けている企業は 他にもいくつかランクインしていますが、食料増産の為には必須ですし やっぱり需要があるんだな~と思います。


✓ 化学品売上高推移 Chemical Sales Change from 2024


で、前年 2024年からの売上高の推移についても見ておきます。ざっと見ると 減収となっている企業が多いです。Top10 では Linde 以外は全部 減収となっています。減収幅が一番大きいのが DSM - Firmenich ですが 前年は 20% の増収だったんですね。なかなかに激しい変動だと思いますが 記事によれば 事業再編中って感じなんでしょうか。動物飼料や健康関連事業を26億ドルで売却したりしています。欧米の企業はする事がなんでもドラスティックですよね。

そして、10 % 以上の増収を記録しているのが やはり肥料を手掛けている企業となります。前述の OCP もそうですし、Norway の Yara や Canada の Nutrien も増収しています。記事によれば Yara は尿素やブルーアンモニアに関するプロジェクトを複数進行中のようです。その1つが年間 280万トンのブルーアンモニアなんだとか。さすがに1社では無理なようで 他の企業との共同で実施するように計画されているとか。ですが、280万トンのアンモニアって どんだけなんだよ、と思って AI に聞いてみたところ 液体アンモニアとして 直径 198 [m] の球形となるんだそうです。ケミカルプラントでもたまに見られる 球形ガスタンクの直径が 大体 30 [m] とかなんで、はるかに大きいですね・・・。Nutrien は主力の カリ肥料と窒素肥料に注力しているようで、それ以外の事業についてはガンガン売却しているようです。やっぱりドラスティックです、と思います。



Chemical Operating Profit  2025


✓ 化学品利益  Chemical Operating Profit


んで、利益額ですが 1位の BASF は 勿論 黒字では有りますね。なんですが、更に大きな利益を叩き出している企業ってのもあって、産業ガスを取り扱っている Linde、Air Liquide そして Air Products and Chemicals が該当します。それと、これはもう定番となっていますが Shin-Etsu も利益額が大きいです。

で、何故 産業ガス企業がこんなに景気が良いかと言うと、記事によれば 好況と不況の影響を受けにくい分野だからとの事です。そして、宇宙関連事業にも進出しているんだとか。具体的には米国の フロリダ州、テキサス州にガス供給施設や空気分離プラントを建設するんだとか。確かにロケット打ち上げには水素や酸素を使いますし、そして宇宙関連産業はこれから伸びていく分野ですよね。何かものすご~く勢いが有りますよね。そして、Shin-Etsu ですが 米国での投資が活発です。米国子会社が エチレンクラッカー、塩ビモノマー、PVC を建設する 総額 34億ドルのプロジェクトを発表したそうです。生産開始は 2030年を予定しているそうです。 




✓ 化学品利益 推移  Chemical Operating Profit change from 2024


そして利益額が前年比で減ったか増えたかのグラフが下図となります。昨年は 利益額増加率が何と 5000 [%] を超える企業が有りました。その企業は オーストリアの石化企業である Borealis ですが、2025年は -85 [%] となりました。で、記事を見てみると この Borealis は消滅するようです・・・。何でかと言うと別の企業に吸収されるんですね。そして、来年はその企業が Top50 にランクインすると予想しています。う~ん、やはり欧米はドラスティック過ぎますね。  




✔ 化学品利益率   Chemical Operating Profit Margin


最後に利益率を見ておきます。やはり Linde などの産業ガス企業 そして Shin - Etsu Chemicals が高いです。ここら辺りは常連さんですね。前述のように、そもそも 不況に強い業種で、かつ選択と集中を積極的に実施して どんな状況でも儲けが出るような企業体質になってるのかなと、良く分かりませんけど。




前に何回かやった記憶が有りますけど、売上高に対して利益額をプロットすると 上記の棒グラフとは違った見方が出来ますね。下図上段グラフは Top 1~20 までの企業をプロットしたものですが、同じ売上高であれば 利益額が大きいほど グラフの上の方にプロットされます。つまり、利益率が高い事になります。そして、グラフ中の破線は利益率を表わしています。データ点が 例えば 10 [%] の破線上に有れば、その企業の利益率は 10 [%] となります。

例えば Linde を見ると 売上高は Sabic や LG Chem と同程度ですが 利益額は 10倍近く 大きい事が分かります。ただ、こんなに高い利益率を実現している企業は少数で 多くの企業は 利益率 5 ~ 10 [%] くらいと言うのが分かります。グラフ中で 売上高は有るのに 利益額がゼロの企業もいくつか有りますけど、これは赤字になっているのでは無くて そもそもデータが公表されていない場合も含まれています (元記事では n/a と表記)。

で、下図下段グラフは Top 21 ~ 50 までの企業のデータをプロットした結果です。それと上段グラフの左下の隅を薄い青色の四角形で塗りつぶしていますが、ここに Top 21 ~ 50 までの 30社 が全部含まれます。まあ、そんなスケール感なんですよね。確かに 1位の BASF と 50位の Ecolab では 売上高は 8.8倍も違いますし。で、見てみると Nutrien の利益率が飛び抜けてますし、Air Products and Chemicals も高いです。そして、それ以外の企業は 利益率 5 ~ 10[%] くらいに 散らばっている感じでしょうか。




まとめ  Wrap-Up


う~ん、なかなかに厳しい結果では無いでしょうか。所謂、景気の調整局面の途中で さあこれから回復していきましょうって時に、米国とイスラエルによる イラン攻撃が始まり 全くの先行き不透明な感じです・・・。記事でも予測は難しいとハッキリ書いてありますし。

なんですが、ここ数年ずっとやっている BASF、LG Chem そして Mitsubishi Chemical の売上高・利益額の推移ですが 以下のとおりです。売上高の増減率を見ると 3社ともここ数年は下がり基調ですし、2025年はマイナスです。利益についても 赤字では有りませんけど、伸びは無いですよね。



いろいろと不明な点が多々ありますが、AI に聞いてみました。曰く以下のとおりです。ザックリと言うと、「高付加価値化へのシフト」、「業界再編・脱炭素構造への変化」って事らしいです。それって当たり前なのでは? とも思いますけど。いくつか注目のテーマってのが有ってそれは以下のとおりです。

  • エレクトロニクス・AI 半導体向け素材
    データセンターが ガンガン作られているので、その為の資材や材料が必要となります。勿論、半導体を生産する上で必要な化学製品や資材類も必要になります。その一方で 電気自動車向けについては調整局面の様です。
  • 石油化学事業の再編
    日本でもエチレンセンターの再編などがニュースで取り上げられてますけど、世界的に見れば同じ様なトレンドが進行中のようです。まあ古いプラントはスクラップにしてより効率的な生産性の良いプラントにリニューアルした方が良いですよね。で、その際に自社単独でやるんじゃなくて ジョイントベンチャーでやるって事らしいです。
  • GX (脱炭素・持続可能性)と次世代エネルギー
    ペロブスカイト太陽電池の量産・商用化が加速するって事らしいですが 良く分かりませんね。バイオマス原料や廃プラ由来の化学品など資源循環についても立ち上がってくるようですけど。
  • DX とマテリアルズ・インフォマティクス
    もっと良く分かりません。AIを活用して云々って事らしいですけど。

イラン戦争の影響についても聞いてみましたけど、早期正常化シナリオであれば影響は小さいですけど、戦争が長引くと 生産設備や輸送インフラへのダメージが長期化し、その結果として 「物価高」と「不況」が同時に進行するスタグフレーション発生のリスクが高まるんだとか・・・。悪夢でしか無いですね。





そして、Google Gemini にお願いして画像を作成して貰いました。東京スカイツリーの上空に 直径 198 [m] の球体を出現させてみました。これが液体アンモニア 280 万トンに相当します。デカいです・・・。

参考文献・書籍  References


  1. "global-top50-table-2026-update.pdf"
  2. "C&EN's Global Top 50 chemical firms for 2026.pdf"

website

  1.  https://www.acs.org/
    アメリカ化学会 American Chemical Society
  2. https://cen.acs.org/
    ケミカル&エンジニアリング ニュース Chemical & Engineering News













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