今回も「身のまわりの化学工学」シリーズとして 洗濯に関する内容を取り上げます。前回は洗濯における「洗い」についてでした。まあ、洗濯しないと見た目が良くないですし、何より着心地が悪くなりますね。で、洗ったら 次にすすいで脱水しますね。そして、乾かしてお終いとなりますね。なので、今回は「すすぎ」 Rinsing と 「脱水」 Dehydration について考えてみます。
元ネタは前回と同様、中西 茂子先生の「洗剤と洗浄の科学」ですね。そして、すすぎですが洗液中の汚れが衣類に再付着するのを防ぐ為に行ないますね。十分にすすぎが出来ていないと、再付着した汚れや界面活性剤が残留した衣類を着る事になるんですね。また、衣類に付着している界面活性剤が残留していると黄ばみの原因ともなります。で、すすぎについてはこのブログでも既に取り上げていますね。 No.35 リンス方式 回分, 連続操作
また、脱水ですが ビショビショのままで乾燥すると時間がかかるのは容易に考えられますね。出来るだけ水分を切った上で乾燥すると時間も短くて済みます。特に乾燥機で乾燥する場合には加熱して水分を蒸発させますが、水の蒸発潜熱は大きいのでそれなりの熱量が必要になります。熱量が必要と言う事は相応の投入エネルギーが必要ですし、電気代や燃料代がかさむので経済的では無いですね。それと、すすぎにも影響が有るんですね。と言うのも、例えば「溜めすすぎ」を行なう際には、1回のすすぎが終了した時点で汚れや界面活性剤を含んだ水を十分に脱水しておけばより効率的にすすぎが進行しますね。
すすぎ Rinsing
さて、参考書籍には、「すすぎは洗いの段階で落ちた汚れと洗剤成分を含む洗液を新しい水と取り替え、再び洗濯物に付着しないよう流し去る操作である」と書かれています。そして、すすぎ方式として以下の3つが挙げられており、実験結果も記載されています。
① 同じ液での溜めすすぎ
② 水を換えての溜めすすぎ
③ 水を張った後オーバーフローする連続すすぎ
参考書籍にもグラフが載ってますが、元文献にはより詳細に記載されているの そちらを使ってグラフを作成してみました。で、衣類に残留する洗剤成分の濃度ですが、すすぎ液中の濃度では無くて衣類に残留する濃度を測定しています。参考文献によれば、生地から洗剤成分をエタノール抽出し、メチレンブルー比色法 (Abbott 法) により定量していますね。洗剤成分は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム Sodium Linear Alkyl benzene Sulfonate, LAS-Na、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム Sodium Alpha-Olefin Sulfonate, AOS-Na です。
✔ 溜めすすぎ Batch Rinsing
まずは同じ水でずーっと溜めすすぎした場合の衣類に残留する洗剤濃度とすすぎ液中の洗剤濃度の時間変化です。単位が [ppm owf] とか [ppm ows] となっていますが、これは on the weight of fiber と on the weight of solution の事だそうです。繊維とか染色業界で使われるようです。
で、この結果をみると溜めすすぎをするにしても、あまり長くやっても意味が無いですね。まあ、3~5分程度でしょうか。
✔ 水を換えての溜めすすぎ Batch Rinsing with water change
さて次は水を換えてする溜めすすぎですが、下図のような濃度変化となります。衣類上濃度はすすぎ回数とともに減少します。これは前述の単純な溜めすすぎと同じですね。一方、すすぎ液中の濃度も同じ様に単調に減少します。まあ、すすぎ液を換えるたびに洗剤濃度はゼロとなり洗剤成分がすすぎ液中に蓄積する事は無いので、こうなりますね。で、まあ3回くらいすすぎを実施すればOKって感じでしょうか。
✔ 連続すすぎ Continuous Rinsing
最後に連続すすぎですが、これは槽にまず所定量の水を張り、その後はずーっと水を流しっぱなしにします。注水すすぎとも言いますね。参考文献には溜めすすぎと比較した結果があるので、その結果からグラフを作成してみました。条件は以下のとおりです。
- 溜めすすぎ 1回のすすぎで水 30 リットルを使用し 繰り返す
- 連続すすぎ まず 水 30 リットルを張りこみ、その後 毎分 10 リットル注水する
で、すすぎ方法が違っても両者を比較するために、使用する水量を用いてみます。下図グラフの横軸が水量です。参考文献には溜めすすぎ (青色実線) と連続すすぎ (オレンジ色実線) が書いてありました。で、この結果を見ると 連続すすぎの方がより少ない水量で衣類上の洗剤濃度が低下しています。
前回 リンス方式について取り上げた際には、「溜めすすぎの方がより効率的」と書いていましたが、この結果は違いますね~。で、その理由を考えてみると 最初に張り込んだ水量を考慮するのか しないのか、に起因しているのかなと。溜めすすぎの水量 = 1回の張り込み水量 × すすぎ回数ですね。一方、連続すすぎであれば、水量 = 経過時間 × 時間当たりの水量となります。が、最初の張り込み水量も考慮する必要が有りますね。で、その初期水量を考慮して、水量と洗剤濃度を描き直してみると グラフのオレンジ色破線となりました。溜めすすぎより洗剤濃度は少しですが高いですね。となると、やはり溜めすすぎの方が少しですが効率的と言えるのかなと。下図 下段グラフは拡大したものですが、まあ溜めすすぎの方が洗剤濃度が低いですね。ですが、そこまで大きな差異では無いですね。
加えて、以前取り上げた際の計算はあくまでも理論的な計算による結果であり、今回取り上げたのは実験結果です。実際には、この程度の違いしか無いって事なんでしょうかね~。更に、以前の計算はあくまでも すすぎ液中の洗剤濃度ですが、今回は衣類上の洗剤濃度そのものズバリですね。そこいらの違いは有るのかな~と思いますね。まあ、そんな感じですが 溜めすすぎでも連続すすぎでも水量が多くなってくると ほぼほぼ同じ洗剤濃度になりますよね。
✔ 温度の影響 Effect of Water Temperature
✔ 節水方法 Water Amount Saving
参考書籍にはすすぎにおける節水方法についても触れられていますね。それによると、「同じ水量ですすぐ場合、1回で全水量を使うよりも 何回かに分けてすすぐ方が良い」と言うものです。簡単に計算してみると下図のとおりですね。ただし、ここでの無次元濃度は すすぎ液中の洗剤濃度です。前述の濃度は全部 衣類上の洗剤濃度なんで厳密には違いますね。ですが、すすぎ液中の洗剤濃度は衣類上の洗剤濃度と同じ傾向を示すので、間接的では有りますが分割による効果の程度を把握出来ますね。そして、何故 複数回に分けてすすぐ方が良いかと言えば、その都度 汚れた水を全部 捨ててしまうからですね。そして、新たにキレイな水を投入しますから効率良くすすぎが出来ると言う訳です。
脱水 Dehydration
③ 最後の脱水は乾燥の速さや仕上がりに影響する
✔ 脱水の方法 Dehydration Method
で、脱水方法ですが 簡単なのが手で絞るですね。それ以外であれば、ローラー絞りや遠心脱水があります。それらの脱水方法の効果については、参考書籍に記載されています。含水率の上下限をグラフにしてみました。
- 押し絞り Press Squeeze
- ねじり絞り Twisted Squeeze
- 包み絞り Wrapping & Squeeze
- ゴムローラー手動 Manual Rubber Roller
- 家庭用 遠心脱水機 1500 [rpm] Home Centrifugal Dehydrator
- 工業用 遠心脱水機 1450 [rpm] Industrial Centrifugal Dehydrator
まとめ Wrap-Up
それはそれで良いんですが、真冬に温水を使う訳なんですが、洗濯機スペース (半畳ほど)の壁とか窓に結構 結露するんですね。んで、壁にコンセントが有って洗濯機の電源プラグをさしてますが、「大丈夫かな~」とか思ってました。さすがに漏電するような事はありませんでしたけども、黒カビが発生するんですね 特に壁のカドの部分とかに。カビキラー的なもので対策してましたが結構面倒くさかったですね。などと言う事をふと思い出しました・・・。
参考書籍・文献 References
- 「洗剤と洗浄の科学」 中西 茂子 コロナ社 1995年刊
- 「実用洗たくにおけるすすぎに関する研究」 繊維製品消費科学 第12巻 第7号 1971年
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