今回は様々な物体の抗力係数 Drag Coefficients of Various Objects について取り上げてみます。以前 このブログでも「No.80 球の抗力係数」で取り上げたんですけども、球と言う形状は液滴や気泡の終末速度 Terminal Velocity を求める上で非常に重要です。なんですが、抗力が作用する物体には円柱状とか平板とか 球形以外の形状も多々有りますね。また、建物とか自動車とかにも気流による抗力が作用するので、抗力係数値が存在しますね。まあ、そんな辺りを比較してみたり、実際の抗力値を計算してみようかなと。
実務では終末速度をそれこそ何回となく計算しましたね。例えば、スクラバーにおける噴霧水滴の落下速度はどれくらいなのか?とか、重力集塵における分離粒子径がどれくらいになるのか? とか。一方、球形以外の形状については 正直あまり検討してみた事は無いですね・・・。ケミカルプラントにおける機器・装置では例えば 円柱形状とかも有りますね、多管式熱交換器 Tubular Heat Exchanger における管群 Tube Bundle とか。シェル側流速が大きくなり過ぎると振動するんで、流速値には注意しましょうってのは有りますけど。一方、熱伝達に関しては、球形状よりは円柱形状(=円管形状) が良く出てきますね。
物体の抗力とは? What is the drag force on an object?
✓ 圧力抗力と摩擦抗力 Pressure Drag and Friction Drag
球の抗力係数でも少し触れたんですけど、物体の抗力についてざっとおさらいしておきます。参考書籍は西山 哲男 先生の「流体力学 II」には以下のように書いてあります。粘性流体中にある物体表面には 圧力と剪断応力が働いているので、下図に示すように主流方向の力を求めると式①と②を得ます。あまり見慣れないのが ◯の付いた積分記号ですが、閉路積分を意味します。この場合は物体表面に沿ってぜーんぶ積分するって事になります。で、式①は 圧力抗力 Pressure Drag であり、一方 式②は 摩擦抗力 Friction Drag となります。そして両者を加算したものが全抗力であり、これを粘性抗力 Viscous Drag となります。摩擦抗力とか粘性抗力とか 同じ事なのでは? と思いそうですけども実は違いますね。摩擦抗力も圧力抗力のどちらも 流体が粘性を有しているからこそ発生するんですね。なので、全抗力を粘性抗力と呼ぶんだろうなと。
※ 西山哲男先生は 福島県ご出身で、東北大学で教鞭をとられていた流体力学界の大家ですね。水中翼や翼形キャビテーションに関する研究を精力的にされていたんですね。2021年にご逝去されているとの事です。
✓ 圧力抗力 Pressure Drag
圧力抗力が何故発生するか? ですが、物体表面上に発達した境界層が剥離する事がその理由となります。剥離点より下流において物体表面圧力が低下するんですね。なので、境界層が剥離する為には物体形状によって圧力勾配が生じる必要が有って 特に圧力上昇域で発生するものなので、形状抗力 Form Drag とも呼ばれるとの事です。
✓ 摩擦抗力 Friction Drag
一方の摩擦抗力はやはり物体形状に影響されますが、物体の厚みが重要なようです。
・ 厚みが大きい時
物体表面における圧力勾配の変化は急激になり、境界層の剥離は物体のだいぶ前の方で発生します。このような場合、圧力抗力の占める割合は摩擦抗力に比較してかなり大きくなります。
・ 厚みが小さい時
圧力勾配は緩やかになり、境界層の剥離は物体のだいぶ後ろの方で発生するので、結果として圧力抗力の占める割合は摩擦抗力に比較してだいぶ小さくなります。厚みが全く無い場合は、単なる平板となるので境界層は剥離しないので圧力抗力はゼロとなります。
と、その辺を図にしてみると以下のようになります。まあ、図にしてみるまでも無く日常生活においても感覚的に分かってますよね。平べったい板とかを手で持って振り回す際、面に沿って動かすとほとんど力は要りませんね。一方、面に垂直方向に動かすとだいぶ力が必要ですよね。これは物体形状の違いに起因する抗力の大小ですね~。
✓ 抗力係数 Drag Coefficient
で、抗力係数 CD ですが以下の式④によって与えられます。下図のように、流れのなかに置かれた物体が受ける抗力 D を投影面積 A と流体密度 ρ 及び 主流速度 V との関係によって表わしますが両者を結びつけるのが抗力係数となります。式④を見て分かるように、ρ V2/2 は流れの動圧であり 単位は [N/m2] となります。この動圧に投影面積 [m2] を掛け算すると 抗力 [N] となりますが、物体の形状や姿勢によって抗力の大小が影響を受けるので 抗力係数を導入して表現しようという事なのかなと。
様々な物体の抗力係数 Drag Coefficients of Various Objects
抗力係数の値については参考書籍等に記載されているものも有りますし、ネットにも沢山の情報が有りますんで、その辺りを整理してみました。大きく分けると、二次元物体と三次元物体となりますね。
✓ 二次元物体 Two Dimensional Object
まずは二次元物体ですが断面形状が円とか矩形とかであれば、下図のような抗力係数となります。ただし、レイノルズ数が 10,000 以上が適用範囲となります。この場合の面積 A ですが、 断面形状における代表寸法 D と、この断面に対して垂直方向の距離 b を 掛け算した値とします。つまり、A = b × D となります。
✓ 三次元物体 Three Dimensional Objects
次は三次元物体ですが、球形とか円筒形とかになります。少し変わったところではパラシュート Parachute とか樹木 Tree でしょうか。こんな物体にもやはり抗力係数が有るんですね、当たり前ですけど。
✓ その他の物体 Other Objects
最後にその他の物体については以下のようになります。人物・自転車・自動車とか建物になります。自転車の場合、前後に並んで走行すると後ろ側の自転車の抗力係数は明らかに小さくなります。これって、自転車競技とかでは良く見かけますね。
計算例 Examples
✓ パラシュート降下における落下速度 Parachute Descent Speed
参考書籍にはパラシュート降下における落下速度の計算例が有りますね。スカイダイバーの重量は 64 [kg] でパラシュート重量は 1 [kg] とします。空気の密度は 1.205 [kg/m3] でパラシュートの抗力係数は 1.3 とします。んで、式④を使って 落下速度 V を求めるんですね。パラシュート直径を 6 [m]とすると、落下速度は 5.4 [m/s] となります。この落下速度ですが自由落下の場合、高さ 1.5 [m] から飛び降りた時の速度となります。まあ、これくらいであればエイッと着地出来そうですね。正直 したくは無いですけども。
まあ、こんな感じでパラシュートの効果は絶大なんですが、スカイダイバーが単に自由落下している時の落下速度も計算出来ますね。頭を下にした姿勢と腹ばいになっている姿勢の投影面積と抗力係数の値を代入すれば良いですね。前者では 327 [km/hr] で後者では 139 [km/hr] にもなるんですね~。
✓ 自動車の必要動力 Required Power for Automotive
んじゃ、時速 300 [km/hr] とかにもなる F1 レーシングカーの抗力係数値はどうなのか? を思って調べてみると、0.7~ 1.1 と逆にすご~く大きんですね。これは前述のセミトレーラーとかよりも大きいです。で、AI が言うには強力なダウンフォースを得る為のリアウィングを使っているとかタイヤが剥き出しになっているせいなんだそうです。だいぶ車高が低いので投影面積自体は小さいんだとは思いますけど。そんなこんなで抗力がものすごく大きいんですが、それに負けずに速く走るために 1000馬力にもなる高出力のエンジンを搭載しているんですね。
まとめ Wrap-Up
で、雪の結晶の抗力係数ってどうなのかな~と思って調べてみましたが有るんですね、勿論。終末速度自体は 毎秒 5センチメートルとかそんなもんなんですね、風とかが無ければ。一応は雪国出身なんで雪が降ってくる様子ってのはそれこそ何回も見ていますけど、まあそんなものなのかなと。小さい雪だとすぐにスーッと落ちてくる感じですが、牡丹雪とか綿雪みたいなデッカい塊になって落ちてくる雪は遅いですね。そんな雪の抗力係数は相当程度に大きんだろうな~と思いますね。
参考書籍・文献 References
- 「演習 水力学」 森北出版 1981年刊
- 「流体力学 II」 日刊工業新聞社 1971年刊
web site
- ペンシルベニア州立大学 機械工学部 公開資料
https://www.me.psu.edu/cimbala/me320/Lesson_Notes/Fluid_Mechanics_Lesson_14B.pdf









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