今回は COX線図について取り上げてみますが、これは蒸気圧線図の一つとなります。普通の蒸気圧線図は蒸気圧データが片対数 Semi Log のグラフにプロットしてあるのが一般的でしょうか。で、プロットした結果を見ると、温度が高くなっていくと当然 蒸気圧も増加しますけども、曲線になってますよね。また、普通方眼のグラフにプロットすると ギュ~んと急激に増加する曲線となります。なんですが、チョチョイと工夫すると直線にする事も可能です。これを提案したのが E.R.Cox 氏であり、論文として発表されたのが 1923年との事です。今から103年も前の事なんですね。
"Pressure-Temperature Chart for Hydrocarbon Vapors"
Edwin R. СОX
Ind. Eng. Chem., vol. 15, June 1923, pp. 592-593.
このブログでも 蒸気圧式について以前取り上げています。ケミカルプラントにおいて蒸気圧ってのは非常に重要な物性ですし。蒸気圧式としてはアントワン式とかリーデル式とか いくつか有りますが、アントワン式は3定数式にもかかわらず 更に定数値が多い他の蒸気圧式と比較しても 十分な精度で蒸気圧を計算出来るって話でした。
化工計算ツール No.68 物性 蒸気圧式
とまあ、様々な蒸気圧式が有るのでプロセスの設計とか技術検討とかを実施する上で特に問題は無いですよね。なんですが、理論的に見て面白いですし いろんな物質の蒸気圧がピシッと直線になるってのは興味深いですね~。と、そんな辺りを少しばかり計算してみようかなと。
COX線図 COX Chart
✓ COX線図の描き方 How to Draw COX Chart
割りかし古い参考書籍には COX線図も載ってたりしますけど、比較的新しい書籍とかだとそもそも記載されていませんね。さすがに アントワン式と定数値とかは記載されていますけども。で、COX 線図の描き方ですが 以下のとおりです。そこまで難しくは無いですね。
- 下図の左側グラフは 水とエタノールの温度 vs 蒸気圧を普通目盛りのグラフにプロットした結果ですが、高温になると急激に蒸気圧は上昇します。高温度域であれば このグラフから蒸気圧を読み取るのもサクッと出来ますけど低温度域は少しばかり難しいですね。
- 下図 右側上段グラフは 同じく 水とエタノールの蒸気圧を片対数グラフにプロットしてみた結果です。急激に蒸気圧が上昇すると言う事は無いですけども、蒸気圧は曲線となっています。そして、このグラフにおいて エイッと右上がりの直線を引きます (緑色直線)。そして、例えば 温度 100 [℃] における 水の蒸気圧は 763 [Torr] と読み取れます (線分 a) 。次に ここから水平に線分b を伸ばして 緑色直線にぶち当てます。そして、その交点から今度は垂直に線分 c を下ろしますが、この線分と横軸との交点を 100 [℃] とします。本来の目盛りだと 115 [℃] くらいですが、それが 100 [℃] となるんですね。
- そして、この 新たな温度である COX 温度に対して 蒸気圧をプロットしてみると蒸気圧は真っ直ぐな直線で描かれるんですね~。水は勿論ですが エタノールについてもま~っすぐにプロットされています。実に 面白いですし、すごくスッキリしてますね。
因みに 温度に対して COX 温度をプロットしてみると下図のようになります。まあ、こうなるんだろうな~とは思います。と言うのも、前述のグラフにおける緑色直線と水の蒸気圧曲線との差異なので。んで、緑色直線をどう引くかによっても変わってくるのかなと。んでも、普通グラフの温度とCOX温度との差異が線形に変化するのであれば簡単だと思いますが、下図に有るように そうはうまくは行かないんですよね。
計算例 Examples
上記の様に割と簡単に描けるので、様々な物質について COX線図を描いてみます。
✓ COX線図 無機物 COX Chart Inorganic Matter
✓ COX線図 有機物 COX Chart Organic Matter
✓ COX線図 直鎖飽和一価アルコール COX Chart Linear Saturated Monohydric Alcohol
✓ その他の方法 Other Method
ここまで COX線図を描いてみましたが それなりに便利ですよね。で、蒸気圧曲線を直線にする方法ってのは COX線図以外でも有りますね。なので、そちらを少し紹介しておきます。
まずは、下図のように 絶対温度の逆数 1/T [1/K] に対して 蒸気圧をプロットするものです。見る限り 炭素数の低い アルコールについては結構直線になってますね。なんですが、目盛りの値が全然 ピンと来ないですね。分かりやすくする為に 普通の温度も描いてますけど。
まとめ Wrap-Up
で、意外なところで COX線図が使われているらしいんですよね。ネットで見掛けたんですけども。例えば、有機化学のラボでは ロータリーエバポレーターで溶媒を飛ばすとか言う操作は日常的に行なわれていると思います。有機溶媒が例えばアセトンだったとして、フラスコ内部圧力を 300 [Torr] にしたとします。で、ウォーターバスで加熱しますが 温度をどれくらいにするべきか? と言うのがサクッと得られますね。COX線図から読み取ると 30 [℃] ちょい上くらいと言うのが分かります。まあ、この温度にするとボコボコっと盛大に沸騰するので これよりも少し低めにするのかなと。因みに アントワン式から計算してみると 31.2 [℃] です。そこまで複雑な式でも無いので覚えておいても良いですけど、アントワン定数値をいちいち覚えるのは正直面倒くさいですよね。なので、ラボで良く使う溶媒について COX線図を作っておけば便利ですって事らしいです。んでも、線図も良いですけど早見表(もう死語なのかも) にすれば読み取りの誤差とか読み間違いは少なくなるのかな~と思ったりしますけど。と言うか、AI に聞けば即座に教えてくれるんだろうな~と思います、最近は。
また、前述の山本先生のサイトでは COX線図についても詳細に説明されています。例えば、アルコール類の COX線図ですが どれも右上がりの直線となってます。で、この直線をず~っと伸ばしていくとある一点に収斂するんだそうですが、その点を COX点 と呼ぶとの事です。と言う事は、この COX点の値が分かっていれば それ以外の ただ1点 (例えば沸点温度) における蒸気圧が分かれば、エイッと 温度 vs 蒸気圧の関係が分かります。COX線図が直線であると言う事実の最大の利点だよな~と思いますね。と、この辺りは山本先生のサイトで触れられています。また、原著論文にも書いてあるんだと思いますけど有料だったので諦めました。1ページ目だけは見られるんですけども。グラフが有りますけど、直線をず~っと伸ばしていって収斂する点が描いてありますよね。103年前は EXCEL は無いので、描くのは結構大変だったんじゃないかな~と思います。
参考書籍・文献 References
- 「化学工学 概論 新版」 共立出版 1966年刊
- 「改訂4版 化学工学便覧」 丸善 1978年刊
- 「物性推算法」 データブック出版社 2002年刊
web site
- Pirika.com "Cox の蒸気圧線図"
https://www.pirika.com/wp/chemistry-at-pirika-com/chemistry/chemeng/cox-vp - "Antoine Coefficents for Vapor Pressure"
collected by Iranian Chemical Engineers Website








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