今回は必要加熱時間について取り上げてみます。派遣先の企業ではラボスケールの装置を使って試験をしてますが、装置内の液体を温めたり冷やしたりしていますね。ラボスケールなのでそんなに時間もかからずに所定の温度になるんですが、まあエンジニアの性でしょうか、加熱時間をもっと短く出来ないかな~とか、U値はどれくらいなのかな~とかを考えてしまいますね。で、実務でもどか~んとデカい反応器の内液を温めたり冷やしたりする場合のプロセス設計やら技術検討をしてましたが、こちらは格段に大変でしたね。この手の話はブログでも何回も取り上げていますね。
化工計算ツール No.4 物体の冷却 媒体温度一定
化工計算ツール No.5 物体の冷却 媒体出口温度が変わる場合
で、必要加熱(or 冷却)時間ですがバッチ方式の生産プラントでは特に問題となります。例えば、1つのバッチサイクルで、原料の装入→加熱昇温→反応→冷却降温→製品の排出の各工程を実施するものとします。原料と製品は大抵 常温なので、どうしても加熱と冷却が必要となりますね。そして、ラボスケールやベンチスケールの反応器を使っていろいろと実験を実施して、こんなバッチスケジュールで運転しよう! となったとします。んでも、「コマーシャルスケールの反応器でその時間で加熱するのは無理ですよ・・・」となったりします、しかも結構な頻度で。なので、苦肉の策として反応器内部に伝熱管を設置したりしますね。
こうして考えてみると、ケミカルプラントってのは温めたり冷やしたりばっかりしているな~と思いますね。前述のように原料は常温でプラントに入って、製品は常温でプラントから出ていきます。そして、反応は温度を上げて進行させるのが一般的かなと。であれば、どうしても加熱と冷却が必要になるって事ですね。と言う事で、必要加熱時間について少し計算してみようかなと。
2つの加熱様式 Two Heating Modes
反応器やベッセルなどの容器にプロセス流体などの液体が保持されており、初期温度から目標温度まで所定時間で加熱するという場合を想定します。で、加熱方法ですが 温水や熱媒体油などをジャケットに通液するものとします。この時の加熱様式ですが2種類有りますね。
- 加熱媒体温度一定 Constant Heating Medium Temp.
加熱時間中 ジャケットに供給する加熱媒体温度をずっと一定にします。勿論、加熱媒体温度は目標温度よりも高くします。熱移動の駆動力は 内液温度と熱媒体温度との温度差となります。で、この加熱様式の場合には 加熱開始直後の温度差は大きく、内液温度が上がっていくのに伴って温度差は小さくなります。結果、内液温度は加熱開始直後は急激に上昇しますが、その上がり具合は緩くなってきます。つまり、内液温度は曲線状に上昇します。 - 加熱速度一定 Constant Heating Rate
こちらの場合は内液の温度上昇速度を一定にします。つまり、内液温度は直線状に上昇します。で、この加熱様式では加熱媒体温度をずーっと上げ続ける事によって駆動力である温度差をずーっと一定に維持する事になります。
✓ 加熱媒体温度一定 Const. Heating Medium Temp.
んで、式②が加熱媒体温度が入口・出口で一定の場合の必要加熱時間の計算式となります。また、式⑥が入口・出口温度が異なる場合の 必要加熱時間の計算式となります。こちらの方がやはり少し複雑になってますね。
✓ 加熱速度一定 Const. Heating Rate
次は加熱速度一定の場合ですが熱収支から下図の式が得られます。要は 温度差によって移動した熱量の分だけ内液温度が上昇するって事ですね。で、加熱している間はず~っと同じ温度差を維持するので、内液温度は直線状に上昇していきます。で、こちらの加熱様式においても加熱媒体の入口・出口温度が同じ場合と異なる場合の両方が有るかと思いますけど、面倒くさいので入口・出口温度が同じ場合のみを想定しています。
計算例 Examples
✓ 加熱媒体温度一定の場合 Case of Const. Heating Medium Temp.
早速計算してみますが、条件は以下のとおりとします。竪型反応器に内液を張り込み、ジャケットに加熱媒体を通液する事で内液を加熱します。加熱媒体温度はず~っと一定とし、かつ入口温度と出口温度は異なる場合とします。
反応器の内径を変化させて必要加熱時間を計算してみると以下のとおりとなります。小さい方は 内径 100 [mm] で大きい方の内径は 5000 [mm] となります。内液温度 30 → 80 [℃] とするのに ラボスケールの 内径 100 [mm] の反応器であれば 6 [min] で OK となりますが、コマーシャルスケールの内径 3000 [mm] の反応器ともなると、必要加熱時間は 166 [min] となります・・・。加熱だけで 2時間以上もかかるのであれば、だいぶ厳しいですね。冷却にも同じくらいか もっと長い時間がかかりますし。で、なんでそうなるかですが 下図の3番目のグラフに単位液体積当たりの伝熱面積 A/V に対して必要加熱時間をプロットしていますが、両対数グラフで直線となります。つまり、スケールアップする事によって伝熱面積が不足するって事になります。この問題を解決するのであれば、追加の伝熱面積を液中に設置するぐらいしか手は無いですね。
✓ 加熱速度一定の場合 Case of Const. Heating Rate
前述の加熱媒体温度一定の場合は加熱媒体温度を 90 [℃]としていましたが、こちらの場合は 100 [℃] を超えてますね。まあ、温度差を一定値に維持する為には必要なんですけど、実際に運転するにあたっては少し問題が有るかも知れませんね、ポンプがキャビテーションを起こすとか。この計算例では加熱媒体として温水を想定しているので、沸点を超えるのはあまり好ましくは無いですね。
まとめ Wrap-Up
また、反応器内液を加熱する場合ですが、プロセス側スキン温度についても考慮する必要が有りますね。少し特殊な例なのかも知れませんけど。反応器に装入した原料を加熱する場合、加熱媒体温度一定方式を採用して 加熱媒体温度をエイッと一気に高温度に設定したとします。そうするとジャケット入口には高温の媒体が流入しますんで、ジャケット入口ノズル近傍のスキン温度ってのはどうしても高くなりますよね。加えて、原料装入直後ってのは反応物の濃度が最も高い状態ですし。そうすると壁面での反応速度が大きくなってファウリングの発生が懸念されますね。で、そんな場合には加熱速度一定方式を採用して 徐々に加熱媒体温度を上げていく方が良いんだろうな~とは思います。
いずれにしても、反応器の加熱とか冷却はサクッとやりたいもんですね~。なかなかそうは行きませんけども。これまた特殊ですがキレイなスチームを専用のボイラーで作って吹き込んでみるとかの検討をした事も有りますね。スチームの潜熱を使えるので効果てきめんでしたね。まあ、実現はしませんでしたけども。また、冷却の際には反応器を減圧する事によって水を蒸発させて冷却してみるとか。これまた、効果は大きいんですが実際やるのはいろいろと問題が有って大変ですよね。
参考書籍・文献 References
- 「熱交換器設計ハンドブック 増訂版」 工学図書株式会社 1974年刊







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