今回は衝突噴流による熱伝達について取り上げます。このブログでも噴流については何回か取り上げています。槽内に液を噴流状に噴射して撹拌するとか、空気中に液を噴射してどこらへんまで到達するのか、とかでした。実務ではそんなに頻繁に出くわす訳では無いですが、たま~に検討する事が有ったりしましたね。
No.58 噴流撹拌 Jet Agitation
No.93 噴流の経路 Liquid Jet Trajectory
で、噴流 Jet といっても衝突噴流 Impinging Jet なんですね。ノズルから噴射された噴流が 流体中をず~っと進んでいって減衰して終わりって事では無く、比較的近くにある物体に衝突します。そして、例えば高温の平板と低温の空気噴流の組み合わせであれば、高温平板は冷却される事になります。そして、その場合の熱伝達ですが、流速の大きな噴流であれば 平板に沿った流れよりは境界層厚みが薄くなりそうです。であれば、それなりに大きな熱伝達係数が実現されそうです。物体をより早く冷却する上では好都合ですね。まあ、そんな辺りを計算してみようかなと。
噴流の構造 Structure of Jet
まあ、図を見てもらった方が手っ取り早いですね。一応、自由噴流 Free Jet についても併せて記載しています。
✓ 自由噴流 Free Jet
流体がある径のオリフィスやノズルから周囲流体中に噴出する流れを噴流 Jet と言いますが、下図 上段は 圧縮性を考慮しない軸対称自由噴流となります。流出直後の流れの中心部には速度分布が一様な円錐形のポテンシャルコアが存在するとの事です。そして、その周りには大きな速度勾配を有する層流拡散層が形成され、粘性の作用で運動量が拡散します。この層流拡散層は次第に不安定になり、短い遷移域を経て発達した乱流へと変化します。発達した乱流領域では、時間平均速度の分布はガウス分布曲線で近似できるとの事です。✓ 衝突噴流 Impinging Jet
下図下段にあるように、ノズルから流体を噴出させ物体に衝突させた場合 基本的には自由噴流領域、衝突噴流領域、壁噴流領域が形成されます。自由噴流領域 Free Jet region は衝突物体の影響を受けない自由噴流となります。衝突噴流領域 Impinging Jet region は噴流が自由噴流から壁噴流に移行する領域で、流れの方向が急激に変化するので大きな圧力勾配が発生します。また、物体上には境界層が発達します。そして、壁噴流領域 Wall Jet region へと移行します。自由噴流との大きな違いは、噴流が衝突する物体表面に岐点とよばれる領域が発生する事でしょうか。この岐点ですが淀み点の事だと思います。英語のサイトで衝突噴流の図をみると Stagnation Point と有りますんで。 噴流が分かれるんで岐点なのかなと。
衝突噴流による熱伝達 Heat Transfer by Impinging Jets
前述の図では同じに見えるんですね、二次元ノズルと円形ノズルは。なんですが、二次元ノズルは所謂 スリット形状の開口部から流体が噴出します。一方、円形ノズルはそのとおり円形の孔から流体が噴出します。まあ、スリット状のノズルってのも見たことがありますけど、大抵は円形の孔だろうなと思います。なので、熱伝達係数推算式についても 円形ノズルの場合について取り上げる事とします。
✓ 円形ノズルによる軸対称平板衝突噴流の淀み点 Circular nozzle, Axially symmetric, Flat plate, Stagnation point
参考書籍には円形ノズルからの噴流が、対向する平板に衝突した場合の岐点(淀み点) における熱伝達係数についての計算式が記載されています。式①は ノズル - 平板間距離が ノズル径の4倍以下の場合に適用されます。式②はノズルと平板との距離が離れているような場合に適用可能との事ですね。式③はヌッセルト数、式④はプラントル数、式⑤はレイノルズ数となります。
✓ 円形ノズルによる衝突噴流の平均ヌッセルト数 Circular Nozzle, Av. Nusselt number
前述のヌッセルト数は淀み点における値でした。ピンポイント的なものでしょうか。なんですが、設計においては平均ヌッセルト数を知りたいですよね。これくらいの内径のノズルから空気を噴出した場合、対向する平板における熱伝達係数はどれくらいになるのか? という感じでしょうか。物体表面の熱伝達係数が分かれば、その値を使って非定常熱伝導問題を解けば物体がどれくらいの速度で冷えていくのかが分かりますね。式⑦には r が含まれますが、これは平均ヌッセルト数を求めている領域の半径となります。
✓ 円形ノズル群による衝突噴流の平均ヌッセルト数 Circular Nozzle Group, Av. Nusselt number
で、大きな平板を衝突噴流で冷却したい場合、単一ノズルでは無くて複数のノズルを配置しますよね。そのような場合の計算式は以下のとおりです。下図には円形ノズルの配置について記載されていますけども、それによって パラメータ g の値が変わります。
計算例 Examples
さっそく計算してみますが、平板を温度 30 [℃] の空気で冷却する場合を想定してみます。
✓ 円形ノズル 淀み点 Circular Nozzle, Stagnation Point
ノズル流速を変えた場合の熱伝達係数の推定値は以下のとおりです。また、ノズルと平板との距離を変えています。当然なんですが、流速が上がると熱伝達係数も増加します。また、ノズルが離れると熱伝達係数は低下します。出来るだけ大きな熱伝達係数値を実現したいのであれば、流速を上げて かつ くっつけた方が好ましいとなりますね。まあ、あまりにも近づけ過ぎるのもアレだとは思いますけど。それと、気体で100 [W/m2 K] を超えるような熱伝達係数値となるのであれば、それなりに大きい値だとは思いますね。気体の強制対流だと 50 [W/m2 K] くらいなので。
✓ 円形ノズル 単一 Circular Nozzle, Single
次は単一の円形ノズルの場合ですが、淀み点では無くて特定の円形領域における平均熱伝達係数値を計算してみます。これまた当然ですが、下図 上段グラフを見ると 淀み点における熱伝達係数よりは小さくなっているのが分かります。そして、円形領域を固定してノズルと平板との距離を大きくしていくと平均熱伝達係数は低下します。
✓ 円形ノズル群 複数 Circular Nozzle Group
円形ノズル群による熱伝達係数の計算結果は以下のとおりとなります。下図上段グラフは流速を変えた場合ですが淀み点の熱伝達係数値と比較すると大幅に小さいです。そして、単一ノズルと比較すると少し低めくらいでしょうか。なので、ザックリと計算するのであれば単一ノズルとしても良いのかなと。下図下段グラフはノズルと平板間距離の影響ですが、離れると熱伝達係数は低下します。単一ノズルの場合と比較していますが、距離が近いと単一よりも高い値ですが離れると低くなってますね。ノズル群の場合、隣接するノズル間で流れが干渉したりするので その辺りが影響しているのかな~と思いますが、詳細は不明です。
で、例えば 1[m]の正方形 平板に 100[mm] の三角配列で 内径 5[mm] の円形ノズルを配置するとこんな感じとなりますね。当初 30 [mm] で描いてみましたが、ノズル数がすご~く多くなったので 100[mm]にしてみました。これでも結構有りますよね。このノズル仕様と配置で 流量を 30 [L/min Hole] とすると 平均熱伝達係数は 70 [W/m2 K] と計算されました。すごく高いって訳では無いですけど、悪くも無いかなと。
まとめ Wrap-Up
今回は衝突噴流による熱伝達について取り上げて、平板上における熱伝達係数を計算してみました。計算例では空気のみですが、液体の水をブシューっと噴きかけて冷やすってのも効率的では有りますね。で、調べてみると 水噴流に関する文献ってのもいくつかありますね。単一ノズルもノズル群による結果も有りますが、熱伝達係数値は 1000 ~ 2000 [W/m2 K] は達成しています。前述の計算式で物性値のみを水のそれに変えて熱伝達係数値を計算してみると、結構 大きな値になるんですね、数万とか。やはり、少し取り扱いが異なるのかな~と思います。
例えば、空気だと平板が上向きでも下向きでもそれほど影響は無いと思います。ですが、水のような液体だと 上向き面と下向き面では平板表面の状況は全然違うかなと。上向き面では噴きつけられた水は平板表面に滞留しますよね。まあ、いずれは端部から流れ去るんでしょうけど。一方、下向き面では噴きつけられた水は重力によって速やかに無くなりますよね。それと、確かに液体の水は効率的だと思いますが、濡れを嫌うような製品であれば空気を使うしか無いですね。更に、水蒸気が発生したりしますし、何よりあちこち ビショビショになりますよね。
このブログでも触れたかと思いますが、溶融ポリマーを製品にする際にウォーターバスで冷やしてからペレタイザーでペレットに細断します。このウォーターバスを空気噴流で代替出来ないか? ってのを検討した事が有るんですね。まあ、結論から言うと出来ないって事だったんですけど。気体と液体では冷却能力に厳然とした差が有りますね、やはり。プラントル数が10倍くらい違いますし。いろいろと計算してみましたが、「やっぱ物理法則は何とも出来ないんだよな~」と思いましたね。
参考書籍・文献 References
- 「伝熱工学資料 改訂第4版」 日本機械学会編 丸善 1986年刊
- 「伝熱概論」 養賢堂 1964年刊
- 「衝突水噴流による平面冷却に関する研究 第2報 マルチノズルの場合」
空気調和・衛生工学会論文集 第18号 1982年 2月








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