今回は強制対流下における熱伝達と物質移動について取り上げてみます。このブログでも例えば円管内の強制対流熱伝達とか物体周りの熱伝達について取り上げています。ケミカルプラントに限らず、加熱操作や冷却操作は頻繁に出くわしますし、様々な物体の表面においてどれくらいの熱伝達係数値となるのか? 若しくは 物質移動係数値はどれくらいなのか? を知る事は極めて重要です。
化工計算ツール No.17 強制対流熱伝達
化工計算ツール No.113 物体まわりの熱伝達
まあ、様々な物体といってもケミカルプラントで出くわす形状としては 配管であれば円管ですし、後は平板とか円柱、それに球とかでしょうか。で、強制対流下における移動現象なので 無次元数である レイノルズ数 Reynolds Number が出てきますし、熱伝達であれば ヌッセルト数 Nusselt Number 、物質移動であれば シャーウッド数 Sherwood Number が出てきます。んで、上記の形状における ヌッセルト数やシャーウッド数の大小を レイノルズ数に対してプロットする事が出来て、そうすると物体形状の影響がどの程度なのかを俯瞰的に捉える事が出来るのかな~と。とまあ、その辺りを計算してみようかなと。
熱伝達と物質移動 Heat Transfer and Mass Transfer
✓ 熱伝達係数と物質移動係数 HTC and MTC
強制対流下における熱伝達係数と物質移動係数の定義はそれぞれ 式①と式③になります。熱伝達の方は単位が明確ですが、物質移動については単位がいろいろと有って分かりにくいです。参考書籍では 濃度に mol/m3 を用い、拡散係数には m2/s を用いています。そうすると物質移動係数の単位は m/s となります。まあ、あまりピンと来ないですけども・・・。そして、ヌッセルト数については式②で、シャーウッド数については式④ で表わされますが、ここに 式①と式③を代入して整理すると 最終的に 熱伝達については Nu = L/δ となり、物質移動については Sh = L/δc となります。つまり、ヌッセルト数は 代表長さと温度境界層厚みとの比率を表わしており、シャーウッド数は代表長さと濃度境界層厚みとの比率を表わしている事になります。✓ 熱伝達係数 相関式 Heat transfer Coefficient Correlation
まずは 熱伝達係数の相関式について見てみます。熱伝達係数と言っても実際にはヌッセルト数なんですが。また、レイノルズ数の算出において代表長さ L をどれにするかで、値が違ってきますね。平板であれば 流れ方向の長さ L ですし、円柱や球であればその直径 D となります。これらの相関式を見てみると レイノルズ数とプラントル数とを用いた計算式となっています。強制対流下なんでレイノルズ数は必須ですし、物性の影響を考慮する為にはプラントル数が重要となります。また、円管内層流流れにおいて流れ場が完全に発達していれば ヌッセルト数は 3.66 で一定となります。
✓ 物質移動係数 相関式 Mass transfer Coefficient Correlation
さて、次は物質移動係数の相関式についてですが 以下のとおりとなります。定数値が同じ相関式も有りますし、違う式も有ったりしますね。それと、物質移動なので プラントル数では無くて シュミット数となります。
計算例 Examples
✓ 熱伝達 Heat Transfer
まずは、熱伝達の方から計算してみます。前述の式にはレイノルズ数が含まれているので、この値を変えて計算すれば良いですね。因みに、プラントル数は 0.72 としています。これは空気のプラントル数となります。
下図 上段グラフは 横軸をレイノルズ数とし、縦軸をヌッセルト数として各形状の値をプロットしたものとなります。レイノルズ数が大きくなると言う事は 例えば 流速が増加すると言う事であり、結果としてヌッセルト数も増加します。平板・円管内・円柱・球と形状が変わっても、ヌッセルト数がバラバラにプロットされるって訳では無く、同じ様な値になると言うのが分かります。
そして、下図下段グラフですが 縦軸を ヌッセルト数の逆数としています。そうすると その値は 代表長さL or D に対する境界層厚みδ の比率 δ / L or δ / D となります。レイノルズ数の小さい層流域では 代表長さに対して 0.3倍くらいの境界層厚みとなっています。また、レイノルズ数の大きな乱流域では 0.01倍とか 0.001倍とかになっており、境界層厚みはすご~く薄くなる事が分かります。
せっかくなので、流体を液体にして 1/Nu を計算してみると下図のようになります。少しだけですけど境界層厚みは薄くなる事が分かります。
✓ 物質移動 Mass Transfer
次に物質移動についても同じ様に計算してみます。下図上段グラフは レイノルズ数に対してシャーウッド数をプロットした結果で、下段グラフは 1/Sh をプロットした結果です。グラフを見て分かるように、熱伝達の場合とほぼほぼ同じ様な結果となっています。で、この結果ですがシュミット数 Sc = 1 なので気体を想定した計算結果となります。
そして、やはりせっかくなので シュミット数を変えた場合の 1/Sh を計算してみると以下のとおりです。気体だと Sc = 1 くらいですが 液体になると Sc = 1000 くらいになります。まあ、濃度境界層厚みは薄くなりますね。
まとめ Wrap-Up
今回は強制対流下における熱伝達と物質移動について取り上げて、レイノルズ数に対するヌッセルト数とシャーウッド数を計算してみました。外部流れである平板・円柱・球と内部流れである円管内について、適切な代表長さを採用した上で 主流流速や円管内平均流速を設定し、かつ流体密度・粘度と言った物性値が分かれば ヌッセルト数若しくはシャーウッド数が求められます。前述の相関式を使っても良いですし、グラフからこれくらになるな~ってのを読み取っても良いですね。そして、得られた値を用いれば ヌッセルト数とシャーウッド数の定義から熱伝達係数なり物質移動係数が求められます。
例えば、熱伝達において レイノルズ数が 10万だったとします。グラフから ヌッセルト数は 200 くらいである事が分かります。そして、流体が空気と水だったとすると以下のように熱伝達係数値が得られます。水だと 6000 W/m2 K にもなりますが、空気だと 256 W/m2 K にしかなりません。同じ温度差であれば 水は空気の 23倍くらい大きな熱移動速度が可能となります。
- 水 20℃
密度 997.7 kg/m3
粘度 0.00114 Pa s
熱伝導率 0.603 W/m K
ヌッセルト数 200
代表長さ 20 mm
熱伝達係数 6,030 W/m2 K - 空気 20℃
密度 1.207 kg/m3
粘度 0.0001728 Pa s
熱伝導率 0.0256 W/m K
ヌッセルト数 200
代表長さ 20 mm
熱伝達係数 256 W/m2 K
せっかくなので、物質移動係数の値もどれくらいなのか計算してみます。ただし、拡散係数値については なかなかビシッとした値を得るのも難しいので、ザックリと気相と液相で計算してみます。レイノルズ数は やはり 10万とします。また、代表長さも同じく 20mm とします。グラフからシャーウッド数を読み取ると 300 くらいでしょうか。で、物質移動係数値はものすご~く差異が有りますね。まあ、拡散係数値が 1万倍くらい違いますんで。こんなところが物質移動を取り扱う上で難しいと言うか面倒くさいところなのかなとは思いますけども。
- 気相
拡散係数 10 ^-5 m2/s
シャーウッド数 300
代表長さ 20 mm
物質移動係数 0.15 m/s - 液相
拡散係数 10^-9 m2/s
シャーウッド数 300
代表長さ 20 mm
物質移動係数 0.000015 m/s
まあ、幸か不幸か物質移動について取り扱う事は無かったんですけども。んでも、液相における物質移動ってのも有りますよね。AI に聞いてみると、例えば 不均一系触媒を用いる固液反応とか抽出操作とかが該当するようです。「拡散係数が1万倍小さいので物質移動がボトルネックになる」と言ってますけど、まさにそのとおりですよね。
参考書籍・文献 References
- 「基礎式から学ぶ化学工学」 伊東 章著 化学同人 2017年刊
- 「大学講義 伝熱工学」 丸善 1983年刊







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