化工計算ツール No.148 物性 - 粘度 Physical Property - Viscosity

 今回は物性の一つである 粘度 Viscosity について取り上げてみます。このブログでも物性については何回か取り上げてますね、比熱とか熱伝導率とか。で、この3つの物性値が揃うと プラントル数 Prandtl Number が計算出来ます。ご存知のとおり、熱伝達係数の推算式には必ずプラントル数が含まれているので、この値が必要となります。また、これまたものすご~く重要なレイノルズ数にも粘度値は含まれますね。

 No.139 物性 熱伝導率  Physical Property Thermal Conductivity
 No.109 物性 比熱 Physical Property Specific Heat

んで、レイノルズ数の分子には密度が含まれますんで、動粘度 ν = μ / ρ を導入して簡便に表記する事も出来ます。この動粘度ですが、粘度値を密度値で除したものとなります。


実務においても粘度は重要でした。レイノルズ数やプラントル数を計算するのには必須ですし。まあ、ポリマープラントだとプロセス流体はネチョネチョのポリマー溶液なんで粘度はものすご~く高いですね。モノマーは 1 [m Pa s] も無いくらいですが 最終的に ポリマー濃度 70 [wt%] ともなると 100 [Pa s] とかになりますね。なので、粘度はプロセスの入口と出口で 10万倍も大きくなるんですね。で、この 100 [Pa s] ってのも温度 140 [℃] の場合なんで、温度が低いともっと高粘度になります。まあ、今回は ポリマー溶液粘度については触れず、いろいろな気体と液体の粘度についてザックリと見ていこうかなと。

因みにポリスチレンポリマー溶液の液物性については、このブログでも取り上げています。2022年5月なんで もう4年くらい前なんですね~。

 反応器 液物性について



粘度とは? What is viscosity?


✓ ニュートンの粘性法則  Newton's Law of Viscosity

剪断変形に逆らう性質こそが粘度 Viscosity であり、下図に示すように流れの中に薄い層を考えます。少しだけ距離が離れているので少しだけ速度が違います。で、ここに正方形 ABCD を考えます。単位時間が経過すると図のように平行四辺形 A'BCD' に変形します。で、この時の剪断歪みは式①で表わされますが、面ADと面BC に反対方向に剪断応力 τ が働いた事に起因します。そして、剪断歪みと剪断応力との間に式②の関係が成立することが あの アイザック・ニュートンによって提唱されたので、ニュートンの粘性法則と呼ばれますね。




※ 粘性法則を提唱したアイザック・ニュートンですが 生年 1642年で没年 1727年とあります。日本だと江戸時代で徳川家光・家綱・綱吉・吉宗が将軍でした。で、提唱されたのは ニュートンの著書 「自然哲学の数学的諸原理」 Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica においてとなります。Principia をとって プリンキピアとかプリンシピアなどと呼ばれますが、原理って事なんですかね。英語の "Principle" は日本語で 「原理」なので。この著書では 天体の運動とか万有引力の法則を扱ってるんですね。


✓ 水と空気の粘度  Viscosity of Water and Air


んで、最も身近な物質である水と空気の粘度について触れておきます。ご存知のとおり水は液体で空気は気体ですね。水は液体なんで粘度は高いですし、一方 空気の粘度はそれほどでは無いですよね。空気中で手をブンブン振り回してもそれほどには抵抗は感じませんが、お風呂の湯船の中で同じ事をすると結構な抵抗を感じます。それほどに違いが有りますが、まあ粘度がそれくらい違うんですね。なんで、その辺りを比較してみます。

下図上段グラフは粘度ですが、水のほうが圧倒的に粘度が高いです。20[℃] で比較すると水の粘度は 50倍も高粘度です。そして、もうひとつ違いが有りますね。水の場合、温度が高くなると粘度は低下します。一方、空気は粘度が増加します。この辺りについては参考書籍に、液体粘度は分子間引力に起因しており、一方 気体粘度は分子運動に伴う運動量変換に起因する為、と記載されています。

そして、下図下段グラフは動粘度ですが、粘度を密度で割り算した値となります。見て分かるように、動粘度で比較すると空気の方が値が15倍ほど大きくなってます。粘度では 水 > 空気ですが、動粘度では 水 < 空気 となるんですね。




粘度の値  Viscosity Value


✓ 液体金属  Liquid Metal


まずは液体金属の粘度から見ていきます。金属を融点以上に加熱すると溶融して流動するようになります。また、水銀 Mercury についてはご存知のとおり常温でも液体ですね。粘度値を見てみると、0.5 ~ 4 [m Pa s] とかなので低粘度と言えば低粘度ですね。動粘度は 0.1 ~ 2 [mm2/s] です。グラフ中には 0 ~ 100 [℃] の水の値も併せてプロットしていますけど、同じくらいですね。さすがに実務で液体金属 云々ってのは有りませんでした。なんですが、水銀の粘度がどれくらいなのかな~と思いまして、グラフにしてみました。昔の体温計は水銀が普通だったんで、バキッと折ってしまうと水銀が出てきますね。なんですが、球形になってコロコロっと転がって行くんで、粘度はこれくらいって言われてもピンとは来ませんね~。




✓ 液体の粘度  Viscosity of Liquids under Atmospheric Pressure


で、次は大気圧下にある様々な液体の粘度ですが温度依存性が有るので、温度に対してプロットしています。まあ、それなりにバラけてるんですね。グリセリンとかの多価アルコールは粘度が非常に高いです。有機化合物だとエタノールはそれなりに高いですが、ヘキサン・ペンタン・ブタン・プロパン・エタン・メタンと炭素数が減っていくと粘度も低下しています。ベンゼンとかトルエンは直鎖炭化水素よりは高めです。ケロシン Kerosene は炭素数 12~15 の炭化水素の混合物なので結構粘度は有りますね。ガソリン Gasoline だと炭素数は 4~10 との事なので粘度は低くなりますね。ケロシンは要は灯油ですが、昔は灯油ストーブに給油する際にシュポシュポ(灯油ポンプ) を使ってました。なんですが、そんなに粘っこい感じは受けませんね。まあ、このグラフを見ると常温で 1500 [μ Pa s] なんで、1.5 [m Pa s] であれば水とそんなに変わりませんね。余談ですが、電動ポンプが出てきた時は画期的だな~と思いましたね。



次は動粘度の温度依存性のグラフです。グリセリンなどの多価アルコール類は相変わらず高い値ですが、それ以外については 0.2 ~ 2.0 辺りにかたまってる感じでしょうか。





✓ 気体の粘度  Viscosity of Gases at Atmospheric Pressure


液体の次は気体ですが、やはり温度依存性があるので温度に対してプロットしています。見てみると水素とか炭化水素蒸気の粘度は小さいんですね。で、温度が高くなると粘度はリニアに増加しています。




動粘度については下図のとおりとなります。ヘリウムと水素の動粘度値がものすご~く大きくなりますが、これは密度値が小さい為です。




✓ プラントル数  Prandtl Number


せっかくなので液体と気体のプラントル数 温度依存性についてもグラフにしてみました。常温の水だと Pr = 7 くらいですね。一方、空気だと 0.7 くらいですね。勿論、温度によってプラントル数の値は変化するので、その温度における比熱、熱伝導率 及び 粘度の各値を使ってプラントル数を求める必要が有ります。





まとめ  Wrap-Up


今回は輸送物性の一つである粘度について取り上げてみました。物性は何でもそうですけど、温度依存性が分かってないと使えないですね。比熱とか熱伝導率については、それほどには温度依存性が強くないので 大体これくらいかなと言う取り扱いも出来ないでも無いですけど、粘度については温度依存性が強いので そうは行きませんね・・・。

実務でも、ポリマー溶液の粘度なんかは自分で測定してたりしてましたね。いちいちモノマーから重合させて所定の固形分濃度にするってのは面倒くさいので、工場からペレットを貰って来て溶媒にザーッと入れて撹拌して溶かします。で、当然ですが開放型の粘度計では温度の高い条件での粘度は測定出来ませんね・・・。溶媒分がどんどん蒸発してしまうので。なので、確か密閉型で加圧出来る粘度計が有って、それを使っていたように記憶しています。

まあ、ポリマー溶液に限らず原料液の粘度や水・スチームの粘度、熱媒体油の粘度なんかも重要ですね。粘度値が不明だとポンプ動力の推定も出来ません。なので、温度依存性を考慮したグラフとか計算式とかを整備してましたね。何か新規な製品とか物質とかを扱う必要が有る場合にも、何よりもまず物性データの収集と整備をやってました。面倒くさいし地味な作業なんですがすごく重要ですね。ここが間違っていると計算結果が全部ウソになってしまうので。



参考書籍・文献  References


  1. 「伝熱工学資料 改訂第4版」 丸善 1986年刊
  2. 「物性推算法」 データブック出版社 2002年刊


































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