今回は身のまわりの化学工学シリーズとして、「浴室の乾燥」について取り上げてみます。過去3回は入浴に関する内容を取り上げています。以下のとおりです。
No.27 入浴中の深部体温 Body Core Temperature during Bathing
No.28 浴槽からの放熱 Heat Loss from The Bathtub
No.29 頭髪の乾燥 Drying Hair
まあ当然ですが、入浴してそれでお終いでは無いですね。ちゃんとお風呂掃除をしないと衛生的では無いですし、見てくれも良くありません。やはり浴室はキレイな方がお湯に浸かっていても気持ちが良いですし。因みに、韓国に住んでいた頃は週末にまとめて掃除洗濯をしてましたが、日曜日はお風呂掃除してました。結構ちゃんと掃除してたつもりでしたが、夏場だと金曜日とかになるとピンク汚れが出てきたりしてましたね~。
で、浴室の乾燥ですが入浴した直後には床面も壁も天井もビショビショになってますよね。まあ、お湯とか水を使うので床は濡れますし、壁は水滴が飛び散ってやはり濡れてます。そして、特に冬場では天井も濡れていますが、これは結露によるものですね。夏場の天井は乾いてますし。んで、このままにしておくのはアレですよね~。湿気がこもると黒カビが生えたり、ピンク汚れが発生してしまいます。とまあ、その辺りについて絵を描いたりしてみようかなと。
※ 今回も Google Gemini で画像を作成して貰いました。パッと見で有り得ない訳では無いですけど、だいぶレアな状況かなと。お風呂掃除は大変そうですよね、だいぶ。
浴室の乾燥 Bathroom Drying
今回 主に参考にさせて貰ったのは、2004年の松下電工技報に掲載された 「浴室の残水評価法と残水乾燥シミュレーション法」となります。残水ってのは浴室の壁とかに付着している水滴の事です。入浴時にシャワーを使うと、シャワーヘッドからの水滴が壁に付着しますし、冬場だと浴槽水からの水蒸気が天井に凝縮します。で、それを実際にやってみて壁や天井に付着している水の量を「残水量」として測定してるんですね。んでもって、その残水を実際に乾燥させて残水量の変化を実測しています。そして、乾燥過程のシミュレーションもやってるんですね。
✓ 浴室の残水量 Residual Bathroom Water
参考文献では残水量を実測していますが、いくつか測定方法が有るようです。例えば、付着水滴による電気抵抗の変化を利用する方法、浴室全体( ! )の重量を連続に測定する方法などが有るようです。で、参考文献では 各部の残水を綿布で直接に拭き取る方法を採用しています。使った綿布は 旭化成のベンコットS-2 との事です。調べてみると 材質は セルロース 100% (キュプラ) との事で、「柔かい素材を使用した薄手の汎用タイプ」と有りますね。で、詳細については記載が有りませんけど、残水拭き取り前と後の綿布重量を測定すれば その差が残水量となりますね。万全を期すのであれば、綿布はチャック袋とかに保存しておくようにすれば蒸発を防げますね。んでもって、例えば 10センチメートルの正方形について拭き取りを実施すれば、単位面積当たりの残水量が得られますね。と、言うのは簡単ですが実際にやるのは大変だな~と思います。
で、記載されている実測結果は下図のとおりです。と、その前に浴室の大きさと言うか仕様を図にしておきます。参考文献にはそこまで詳細には記載されていなかったので拙宅の浴室仕様を参考にしています。参考文献の画像を見ると開口部としてはドアと窓が有るようです。で、両方を閉め切った状態で天井換気扇を稼働させると、浴室ドア下部のガラリから脱衣所の外気を吸気して天井から排気されます。
そして、残水量ですが下図のとおりですが、2つの場合を想定しています。まずは、壁とか天井や床にシャワーで各5秒間 温水を浴びせています。んで、付着している残水量を測定します。そして、もうひとつは浴槽に30分かけて温水を張り込んだ後、シャワーで温水をジャーっと計1時間ほど散水します。なので、1時間30分の間 水蒸気が発生し壁や天井に凝縮します。どちらの場合も温水温度は 42 [℃] で、シャワーからの温水流量は 10 [Liter/min] との事です。また、このシステムバスは 温度 5 [℃] 、湿度 60 [%] の大きな恒温恒湿槽の内部に設置されています。結構 大掛かりですよね。
前述の浴室の図を見て分かるように、広さとしては 1坪くらいですよね。なので、部屋だと二畳となります。で、そこの床とか壁とか天井に 1100 [g] くらいの残水量が付着しているんですね。容積としては 1リットルくらいとなりますね。浴室が単純な 直方体形状として6つの面の合計面積は 22.26 [m2] となります。そして、残水量を 1100 [g] として 単位面積当たりの残水量を計算すると 49.4 [g/m2] となります。この結果を見て少し不思議なのが、どちらの方法でも残水量の合計は同じくらいですが、内訳は違いますね。温水ぶっかけ法だと天井とその他が多くなってますが、結露法だと壁面の残水量が多くなってます。壁面とか天井の材質とか厚みとかに影響するのかなと思いますが、詳細は不明です。
そして、下図 下段グラフは 凝縮による残水量の経時変化です。2時間も経過すると残水量はほぼ一定となりますが、その値は 55 [g/m2] ですね。んで、面白いのは はじめの30分くらいで残水量は一気に増加しますが、その後はあまり増加しませんね。んで、この30分ってのは浴槽にお湯張りしている時間なんですね。お湯張り中にブワ~っと水蒸気が立ち上って冷たい壁面に結露するって感じでしょうか。と言う事は、冬場と夏場では結露量=残水量が異なる事が予想されますが、実際 そうなってますね。恒温恒湿槽の温度条件を変えた実験では、5 [℃] では 残水量 1100 ~ 1200 [g] ですが 、20 [℃] では 900 [g] まで低下し、30 [℃] では 800 [g] くらいですね。拙宅の場合も夏場は天井への結露はほぼ皆無ですが、冬場はガッツリと結露していますね。
✓ 残水の乾燥 Drying of Residual Bathroom Water
浴室の残水量が分かったところで、次は乾燥させてみるんですね。いろいろと条件を変えて残水量がどのように乾いていくかを測定しています。乾燥時間は 4hr との事です。
下図上段グラフは換気の違いによる残水量比率となります。初期残水量比率は 1.0 ですが、ドアも窓も閉め切って、かつ換気扇も稼働しないと全然 乾燥しませんね。で、換気扇を排気量 60 [m3/hr] で稼働させると残水量比率は大幅に低下して 0.35 くらいにはなります。また、換気扇は稼働させずに窓とドアを開け放っただけでも同程度には乾燥しています。
中段グラフは浴槽にため湯をしているとどうなるか、です。ため湯していないと4hr後には 0.35 となってますが、これは上段グラフの3番めの結果と同じですね。で、ため湯してフタをしていないと残水量比率は 0.8 くらいなので、全然乾燥出来てませんね。でも、フタをするとため湯していない場合と同じくらいとなります。と言う事は、ため湯をして翌日の洗濯で使いたいのであれば、ちゃんとフタをした方が良いという事になりますね。
下段グラフは換気扇の流量の影響となります。排気量は 60 [m3/hr] の結果は、上段・中段グラフにも記載されている結果で 残水量比率は 0.35 ですね。で、循環流量 60 [m3/hr] を加えて 吸気流量 120 [m3/hr] とします。そうすると、浴室内空間における気流速度は増加しますね。実験結果を見ると残水量比率は 0.2 を切ってますので、気流速度を増やすのは効果が大きいんですね。
✓ 残水乾燥予測 Residual Bathroom Water Drying Prediction
参考文献では浴室内の残水乾燥予測もやっているので、その概要をご紹介しておきます。浴室内の熱収支と水分物質収支、そして残水の蒸発速度を考慮しています。
式①は単位面積当たりの水分蒸発速度 [kg/m2 hr] となります。見て分かるように、気流速度 v [m/s] と水蒸気圧力差 ΔP [mmHg] によって影響を受けるんですね。残水表面における水蒸気圧と浴室内 空気における水蒸気圧との差が ΔP となります。式②は熱収支式であり、流入空気の持ち込み顕熱量、ヒーターによる加熱量、そして 残水の蒸発による潜熱量のバランスを取っています。例えば、冷たい外気をどんどん流入させれば浴室内温度はどんどん低下しますね。式③は流入空気による持ち込み水分量及び残水の蒸発による水分量のバランスを取っています。ここで、水分蒸発速度ですが式①は 単位体積当たり [kg/m2 hr] となってますが、式②・③では 単純な水分蒸発速度 [kg/hr] となってますね。蒸発面積 [m2] を用いて変換する必要が有りますね。
計算法ですが、浴室内の初期温度・湿度及び初期残水量、流入空気量や温度・湿度条件、桐生速度、物性値を設定します。んで、微小時間 Δt における熱収支と物質収支 及び 残水蒸発量から Δt 後の浴室温度・湿度 及び 残水量が得られます。同じ操作をどんどん繰り返して行けば残水量の経時変化が得られます。
と、計算してみようかなと思いましたが面倒なので参考文献に記載されている結果をご紹介しておきます。この結果を見ると、残水が全く無くなるまでは結構な時間がかかる事が分かります。まあ、拙宅の場合でも 7時半とかには入浴が終わり、その後 乾燥させますけど 朝方 5時くらいには乾いている感じですね。何故、早朝 5時の乾燥状況が分かるかと言うと、大抵 その時刻には起きてるんですね、トイレに行きたいので・・・。ただ、雨が降っているとかで湿度が高いと床面が濡れてたりする事も有りますね。
拙宅の浴室内 温度・湿度 Temp. and Humidity in the Bathroom of My House
で、せっかくなので拙宅における浴室内 温度・湿度の実測結果をご紹介しておきます。浴室の大きさは参考文献のそれとほぼ同じですね。ただ、出窓はそんなに大きくは無いですね。ホントは残水量を実測すれば浴室の乾燥具合が直接に把握出来て良いんでしょうけど、正直面倒くさいです。なので、浴室内の乾燥具合を湿度の値で間接的にでも把握しようという事ですね。で、下図のような感じですが、2026年 1月24日(土)と25日(日) の2日間の結果となります。拙宅の場合、入浴後 40分間 換気扇を稼働させて強制的に換気しますが、その後は出窓とドアを開放して自然に換気させています。
下図上段グラフは温度の時間変化となります。外気温度は日中でも そんなに上がりませんね。この温湿度計は拙宅のベランダに設置して有るんで、拙宅周辺の温湿度をまあまあ正確に示しているのかなと思います。浴室内温度も日中は12[℃] くらいでしょうか。まあ、日射しが有る訳でも無いのでこんなものかなと。そして、お湯張りを始めると急激に温度が上昇しているのが分かります。入浴後に換気扇を稼働させると今度は温度は下がり始めます。温度自体は2・3時間ほどで下がってますね。
下図中段グラフは相対湿度の時間変化となります。見ると 相対湿度は 100 [%] となっていて、浴室内空気は飽和状態になってますね。実際、浴室内は湯気で白っぽくなってますし。そして、入浴後でも相対湿度はなかなか下がりませんね。外気相対湿度は 50 [%] くらいなんですが、浴室内相対湿度は 真夜中 0時でも 70 [%] と高くなっています。下段グラフは絶対湿度の時間変化ですが、入浴中の絶対湿度は日中のそれと比較すると4から5倍も高いんですね。まあ、浴室内温度が上がってる上に相対湿度 100 [%] となっているんで当然と言えば当然ですけども。
で、2日間の浴室内 温湿度の時間変化を追跡してみたんですが、実は少し違いが有ります。何が違うと言うと、24日については水切りワイパーによる水分除去をやっていないんですね。拙宅の場合、基本 入浴後には水切りワイパーで天井・壁・床面の水分除去を実施しています。勿論、残水の全部が全部 取れる訳では無いですけど。少なくともビショビショに濡れている状態にはなってませんね。で、25日についてはいつもどおり水切りワイパーを使って水分除去をしています。なんですが、湿度の時間変化を見ると そこまで大きな差異は無いのかな~ってのが正直なところですね。実際、水切りワイパーを使わなくても朝になるとちゃんと乾いてますしね。なんですが、やっぱ やりますよね。
まとめ Wrap-Up
今回は身のまわりの化学工学シリーズとして「浴室の乾燥」について取り上げました。毎日の水切り作業が功を奏しているのかどうかは今ひとつ不明ですが、幸いな事にこれまでは黒カビが生えたり、ピンク汚れが発生するって事は有りませんね。ただ、夏場になると浴槽のエプロンをエイッと外して中をみると、バスタブ外面にうっすらカビが生えている事が有りました。それ以降、数ヶ月に1回は確認するようにしてますね~。
韓国の集合住宅ってのは、まあユニットバスなんですが浴室とトイレが一緒になってるんですね。ホテルのそれと同じです。それはそれで便利では有るんですが、所謂 洗い場的な部分が無いんですね。なので、体を洗うのは浴槽の中に立った状態でってなりますね。ちょっと落ち着かないと言うか、洗髪とかひげ剃りは座ってしたいですよね。あちらの住居について言えば 広くて余裕があって良いですし、冬場のオンドルは最高でした。なんですが、お風呂に関してはアレでしたね。前述のように洗い場が無いですし、浴槽も小さいです。そんな感じなのでチャチャッとシャワーで済ませるってのが普通でした。何箇所か住みましたけど、どこも似たようなものだったので 一般的なんだろうな~とは思いますけども。
んで、かれこれ 10年ほど住んでいた部屋の浴室には出窓的な開口部は無くて、天井に小さめの換気扇が有るだけでした。なので、残水がなかなか乾きませんでしたね~。勿論、水切り作業はやってましたけども。なので、浴室のドアをバーンと開けておいて、そこに扇風機を置いてブワ~っと風を送ってました。タイマーをセットして4時間くらいとかはやってましたね。そこまでやると翌日の朝には乾いている感じだったでしょうか。なんで そこまで気を使うかと言うと、3ヶ月に1回は日本に帰省していたんですが 10日間くらいは不在になるんですね。夏場とかはカビ発生が懸念されるんで、普段から気を付けていたと言う事なんですね。そんなにしていても、韓国に戻ってきて部屋に入るとモワ~っとした感じで空気が淀んでるんで、窓を全開にして換気してましたね。
参考書籍・文献 References
- 「浴室の残水評価法と残水乾燥シミュレーション法」
松下電工技報 May 2004







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